高度なテクニック④:対位法風アレンジテクニックをマスターしよう!
こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。
今日は、対位法風アレンジテクニックについて解説していきます。
- 対位法”風”であれば意外に簡単
- 対位法を取り入れやすいオーケストラ
- 2つの対位法風アレンジテクニック
対位法と聞くと、高度な知識やテクニックが求められる印象をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
もちろん、フーガのような本格的な対位法を書こうと思えば一朝一夕にはいきませんが、対位法の雰囲気を取り入れたアレンジを行うだけならばそう難しくはありません。
そこで今回は、対位法に対する知識が乏しい方でもそれらしいオーケストレーションができるよう、簡単なテクニックをご紹介していきます。
ぜひご活用ください!
高度なテクニック④:対位法風アレンジテクニックをマスターしよう!
対位法”風”であれば意外に簡単
本格的に対位法を学ぶとなると、正直かなり大変です。
とはいえ、あくまで対位法”風”なアレンジであれば、ちょっとしたポイントを押さえるだけで簡単に作ることができます。
和声学と並び独学での習得が難しい対位法。
しっかり学びたいならばクラシックの作曲を指導してくれる先生につくことをオススメしたいところですが、むやみに敷居を上げて手が出なくなるのももったいないですよね。
ですから、ここではできる限り簡単に対位法らしいアレンジを行うためのテクニックをご紹介していきます。
とくに、オーケストラのような音域が広く音色も多彩なジャンルにおいては頼もしい切り札になってくれることでしょう。
対位法を取り入れやすいオーケストラ
オーケストラは、協奏曲(コンチェルト)などを除いては、常に様々なパートが主旋律を交代で演奏するものです。
それゆえに、対位法的アレンジを取り入れやすいジャンルともいえます。
※【協奏曲(コンチェルト)】
主役となるソロパート+オーケストラにより演奏される楽曲。ソロをとる楽器の圧倒的な技巧を示すために書かれた楽曲が多く、ソロが映えるようオーケストレーションが施される。
実際、オーケストラにおける対旋律はメインメロディと同格に近い感覚で扱うことも珍しくありません。
例えば、教材曲のイントロ部分では、「トランペット」→「トロンボーン&チューバ(+他低音楽器)」→「ホルン」の順番で短いファンファーレが掛け合うように登場します。
これは主旋律と対旋律といった明確な区分がされているわけではなく、金管セクション全体で一つのメロディを役割分担している形であることがお分かりいただけると思います。
このように、オーケストラでは様々なパートで役割分担しながら旋律を演奏するという点において、より対位法的アプローチが取り入れやすくなっているのです。
2つの対位法風アレンジテクニック
ここからは、実際に対位法風アレンジを行うための2つのテクニックをご紹介します。
- バトンタッチ
- なんちゃってカノン
バトンタッチ
先ほどご紹介した教材曲のファンファーレで使用しているテクニックです。
「トランペット」→「トロンボーン&チューバ」→「ホルン」といった具合に、パート(音域)を変えながらフレーズを畳み掛けるように演奏させることで、それぞれのフレーズをしっかり聴かせつつ、スリリングで勢いのあるアレンジに仕上げることができます。
このテクニックを実践する際のポイントは以下の通りです。
- 先行するフレーズの最後の音と同時に次のフレーズをスタートさせる
- フレーズ同士の音域を離す
- 2〜4拍程度の短いフレーズを組み合わせる
- 他のパートでハーモニーを鳴らしておくと自由度が上がる
■ 先行するフレーズの最後の音と同時に次のフレーズをスタートさせる
トランペットの最後の音と、トロンボーン&チューバの最初の音、さらにこれら2パートの最後の音とホルンの最初の音が繋がっていることがお分かりいただけると思います。
これにより、フレーズが滑らかにつながることに加え、めまぐるしく畳み掛けるような印象を演出することができます。
なお、特別な狙いがない限りは、先行するフレーズの最後の音と2つ目のフレーズの最初の音は協和音程(3度や6度、完全音程)にするのがいいでしょう。
(2度や7度などの不協和音程でも一瞬ならあまり気にしなくて大丈夫なことが多いですが)
■ フレーズ同士の音域を離す
各フレーズの音域を離すことでアレンジに立体感が生まれます。
また、フレーズ同士が互いを邪魔し合う可能性も少なくなるため、フレーズを考える際の自由度もアップします。
■ 2〜4拍程度の短いフレーズを組み合わせる
この手法を実践する場合は、できる限り短いフレーズを使った方が効果が高くなります。
あまり長いフレーズだと新しい展開が始まったように聞こえてしまうため、無難な印象になります。
■ 他のパートでハーモニーを鳴らしておくと自由度が上がる
フレーズを考える際の自由度をアップさせたい場合は、他のパートでハーモニーを鳴らしておくとよいでしょう。
別のパートにハーモニーを任せておけば、フレーズ作りとその組み合わせだけに集中できますのでオススメです。
なんちゃってカノン
「カノン」という技法を聞いたことがあるかと思います。
『かえるのうた』でおなじみの、同じメロディが遅れて登場するあのテクニックですね。
これを使いこなすにはある程度対位法の知識が必要となりますが、フレーズ冒頭だけを模倣したカノン風味のオブリガートを用意するだけなら簡単に実践できます。
試しに「一般的なオブリガート」と「なんちゃってカノン」を使った場合とで聴き比べてみましょう。
教材曲にこのテクニックを盛り込んだものが以下の通りです。
通常のオブリガート
なんちゃってカノン
一気に「カノン」のような風味が加わったのがお分かりいただけると思います。
この手法を実践する際のポイントは以下の2つです。
- フレーズの冒頭部分を使う
- リズム(モチーフ)さえ揃っていれば音程を変えてもOK
■ フレーズの冒頭部分を使う
このテクニックを用いる場合は、フレーズ冒頭を繰り返すイメージでアレンジしましょう。
じつは、厳密な意味でのカノン技法のように、徹頭徹尾同じフレーズを繰り返す楽曲はそこまで多くはありません。
カノンのように聞こえる曲の多くは、フレーズ冒頭部分だけをオブリガート的に扱ったものがほとんどなんですね。
メロディの出だしというのはとくに印象的なものなので、それを用いるだけでもしっかりとカノン風味を出すことができます。
■ リズム(モチーフ)さえ揃っていれば音程を変えてもOK
この手法の面白いところは、リズムやモチーフさえ揃っていれば音程を変えても成立する点です。
先ほどご紹介した例では、コードチェンジに合わせてフレーズの音程も変えていますが、それでも同じフレーズを繰り返している印象は損なわれていないことがお分かりいただけると思います。
リズムやモチーフによる統一感というのは思いのほか強いもので、そこさえ変わらなければ音程を変えても十分成立するというわけですね。
まとめ
というわけで、対位法チックなアレンジを取り入れるための各種テクニックをご紹介しました。
今日ご紹介したものは、本格的な対位法の知識がなくとも簡単に実践できるものばかりです。
ぜひあなたの楽曲にも取り入れてみてくださいね!
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