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エフェクターの基礎知識⑨:ローファイ・プロセッサーの基礎を理解しよう!

こんにちはOTOxNOMA認定講師の鎧都万雄大です。

今日は、ローファイ・プロセッサーの基礎知識について解説していきます。

  • ローファイ・プロセッサーとは?
  • デジタル環境下での音の扱いについて
  • A/Dによって起こるノイズ
  • ローファイ・プロセッサーの使用例
  • 各種パラメータの解説

デジタル環境特有の劣化を利用して独特のサウンドを作り出すエフェクター。

唯一無二の効果をもたらしますが、仕組みや特性を理解しておかないとただただ音を悪くするだけの場合もあります。

そのため、今回はその仕組みについて詳しく触れながら、ご自身の楽曲にローファイ・プロセッサーが必要なのかをしっかり判断できるよう解説していきますので、ぜひご活用ください!

※こちらの内容は動画でも学習することができます。

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エフェクターの基礎知識⑨:ローファイ・プロセッサーの基礎を理解しよう!

ローファイ・プロセッサーとは?

ローファイ・プロッセッサーは、デジタル環境下で意図的に音を劣化させることでノイジーなサウンドを得るエフェクターです。

「ローファイ(=Lo-Fi)」とは「Low-Fidelity」の略で、広義では低品質のことを指し、音楽分野など狭義では録音/再生環境が悪いことに起因する「音が劣化している状態」を指します。

昨今では「Lo-Fi HipHop」や「Lo-Fi Chill」といった、意図的に劣化させた音を用いた音楽ジャンルが確立されていますね。

ただし、これらのジャンル名の由来は「ローファイ・プロセッサーを使用しているから」ではない点にご注意ください。

この項目の最初に「デジタル環境下で」と付け加えているように、音の劣化はアナログ環境に起因するものと、デジタル環境に起因するものに分けられます。

例えばそれぞれ以下のようなものが該当します。

【アナログなノイズ】

  • ポップノイズ
  • ヒスノイズ
  • ハムノイズ、他…

【デジタルなノイズ】

  • 折り返しノイズ(エイリアスノイズ)
  • 量子化ノイズ、他…

ローファイ・プロセッサーは、上記のうちデジタルなノイズを付加できるエフェクターというわけです。

一方、「Lo-Fi 〇〇」といったジャンルで取り扱われている音はアナログ起因のローファイサウンドも多分に含みますので覚えておきましょう。

デジタル環境下での音の扱いについて

ここでもう少しだけ、デジタル環境下での音の扱いについて掘り下げてみます。

まず「デジタル」とは、情報を「1(ON)」と「0(OFF)」によって表し、それらを組み合わせて記録・処理を行う方法です。

「1か0」が最小単位のため、それ以下の微細な情報は取り扱うことができませんが、あらゆるデータを数値などで明確に区別して表すことができます。

反対に「アナログ」とは、1や0といった最小単位という区切りがなく非常に微細な情報を扱うことができますが、明確に区別して表すことが難しくなっています。

これは「階段」と「坂道」で例えてみると分かりやすいです。

階段では、自分が今どこまで登ったか(or 降りたか)を「今、○段目!」と明確に区別できますよね。 これがデジタルです。

坂道では「だいたい半分ぐらい」「今、2割くらい」といった、曖昧に区別になります。 これがアナログです。

私たちが普段耳を通して聴いている音はすべて「アナログ」です。

しかし、音をDAWやPCで取り扱う場合には「アナログ」なデータを「デジタル」に変換する必要があります。

この時の変換工程を「A/D(Analog to Digital)」と言い、主に以下のことが行われています。

  • 標本化
  • 量子化

それぞれ詳しく解説していきます。

標本化

別名「サンプリング(Sampling)」と言います。

標本化は、音を一定時間ごとに区切り、各地点ごとの情報(=信号)を抽出することを指します。

これによって、信号の時間的変化に関する情報をデジタル化できます。

また、区切る時間が細かいほどアナログの情報を詳細に再現できます。

そして、カンの鋭い方はもうお気づきですね!

DAWにある「サンプリングレート(Sampling Rate)」は、標本化の細かさ決めるものです。

例えばCDでは44.1kHz(=44100Hz)で記録されており、これは1秒間を44100回区切って標本化していることを表します。

量子化

別名「クォンタイゼーション(Quantization)」と言います。

量子化では、標本化した信号の大きさを測り、デジタルの区切りに当てはめることを指します。

これによって、各地点の信号強度(=音の大きさ)の情報をデジタル化できます。

また、こちらもデジタルの区切りが細かいほど、アナログの情報を詳細に再現できます。

こちらは、DAWにある「ビットデプス(Bit Depth)」で量子化の細かさを決めることができます。

例えばCDでは16bitで記録されており、これは(2の16乗=)65536段階で区切って量子化していることを表します。

A/Dによって起こるノイズ

前述のとおり、デジタルオーディオはアナログ情報を無理やり区切って記録・処理している状態。

言いかえれば、本来アナログに含まれる情報を一部端折って記録・処理していることになります。

このことから、アナログデータを一度デジタル化してしまうと、再度アナログに戻しても全く同じ情報は再現できず、少なからず誤差が生じてしまいます。

そして、その誤差は時としてノイズとなって音に現れます。

このようなノイズを積極的に活用するエフェクターこそが「ローファイ・プロセッサー」というわけです。

さて、長くなりましたがデジタル環境に起因する代表的なノイズは以下の2つです。

  • 折り返しノイズ(エイリアスノイズ)
  • 量子化ノイズ

それぞれ詳しく解説していきます。

折り返しノイズ(エイリアスノイズ)

折り返しノイズは、サンプリングレートで記録できる周波数以上の成分が含まれている場合に起こります。

詳細は割愛しますが、デジタルオーディオで記録できる周波数の最高値はサンプリングレートの半分の値までとなっており、これを「ナイキスト周波数」と言います。

例えばサンプリングレートが「48kHz」の場合は、その半分の「24kHz」まで記録できるということですね。

では、アナログの段階で25kHzの音が含まれていた場合、どんなことが起きるでしょうか?

この図のように、元の音とはかけ離れた周波数成分が捏造されてしまいました。

これが折り返しノイズ(エイリアスノイズ)です。

折り返しノイズが発生すると、本来の周波数よりも低い成分が加わってしまうことになります。

25kHzの音は人の可聴域外のため、変換前の原音では聴き取ることができません。

しかし、デジタルに変換した時点で折り返しノイズとして可聴域に現れるため、原音では存在しなかった音が聴こえるようになるというわけです。

量子化ノイズ

量子化ノイズは、あるビットデプスから低いビットデプスに変換した場合に起こります。

アナログは、言ってしまえばビットデプス「∞(無限)」の状態です。

それを16bitでA/Dするということはすなわち、低いビットデプスに変換されるということになります。

この図の場合、どこに量子化しても原音とかけ離れてしまい、原音にはない大きな差ができてしまいました。

これが量子化ノイズです。

A/Dする際には、ビットデプス無限から有限の状態に変換されるため、程度の差はあれ必ず量子化ノイズが発生してしまいます。

また、デジタル同士の変換でも同様に、高いビットレートから低いビットレートへ変換する際には量子化ノイズが発生します。

例えば、DAWでは24bitで作業していたデータを書き出す際に16bitに変換した場合などがそれに該当します。

ローファイ・プロセッサーの使用例

ローファイ・プロセッサーは、前項までに説明したデジタルに起因するノイズを意図的に作り出すエフェクターです。

そのため、積極的な音作りのために使われることがほとんどです。

あえて音を劣化させることで、ざらついたサウンドを作り出すことができます。

まるで錆びついた金属のような質感は、インダストリアルなどのジャンルにぴったりですね。

ローファイ・プロセッサーなし

ローファイ・プロセッサーあり

各種パラメータの解説

ローファイ・プロセッサーには以下のようなパラメータがあります。

  • サンプリングレート(Sampling Rate)
  • ビットデプス(Bit Depth)

それぞれのパラメータでどんな変化が起こるのか解説していきます。

以下の素材にエフェクトをかけてみますので、変化を聴き比べてみましょう。

エフェクトなし

サンプリングレート(Sampling Rate)

折り返しノイズの度合いを決めるパラメータです。

「サンプル(Sample)」や「レート(Rate)」とだけ表記されている場合もあります。

一般的に−(マイナス)方向に設定し、値が小さいほどインサートしたトラックのナイキスト周波数が下がります。

それによってどれだけノイジーになるかは素材によって差が出るため都度調節すると良いでしょう。

また、サンプリングレートを下げることで高域の再現性を失うため、下げすぎは音抜けが悪くなるので注意しましょう。

サンプリングレートが6000Hz

サンプリングレートが16000Hz

サンプリングレートが最大値(変化なし)

ビットデプス(Bit Depth)

量子化ノイズの度合いを決めるパラメータです。

「ビット(Bit)」や「デプス(Depth)」とだけ表記されている場合もあります。

一般的に−(マイナス)方向に設定し、値が小さいほどインサートしたトラックのビットデプスが下がります。

こちらもどれだけノイジーになるかは素材によって差が出るため都度調節しましょう。

また、ビットデプス下げることでダイナミクスの再現性を失うため、極端に下げるとブツブツというノイズだけになるので注意しましょう。

ビットデプスが5bit

ビットデプスが12bit

ビットデプスが最大値(変化なし)

まとめ

というわけで、ローファイ・プロセッサーについて詳しく解説しました。

デジタル環境特有の折り返しノイズ・量子化ノイズを得るエフェクター。

いうなればただのノイズではありますが、このエフェクターでしか出せない独特の雰囲気があります。

どんな時に、どれくらい使うとカッコいいのか、さまざまな素材で試しながら効果的な使い方をマスターしていきましょう!

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