ポリコード基礎編:独特のサウンドと意外な利便性!ポリコードの特徴を理解しよう!
こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。
今日は、3種のコンパウンドコードのうち、「ポリコード」の基礎知識を解説していきます。
- ハイブリッドコードとポリコードの違い
- ポリコードの利便性
- ポリコードの条件
ポリコードは、いわゆる「アッパーストラクチャートライアド(UST)」と呼ばれる技法で、ハイブリッドコード同様、ジャズや20世期以降の近現代クラシック音楽で用いられる、比較的新しい和声技法です。
調声(キー)を逸脱した響きをもつためアバンギャルドなイメージを持つ方も多いかと思いますが、調声音楽においても、その構造や表記の特徴から便利な点が多々あります。
コード理論のしめくくりとして、しっかり学習していきましょう!
ポリコード(アッパーストラクチャートライアド)の基礎知識
ハイブリッドコードとポリコードの違い
ハイブリッドコードとポリコードの違いは、以下の2点です。
- ロウアーストラクチャーの有無
- 3rdや#9thの有無
それぞれ詳しく解説していきます。
ハイブリッドコード
ポリコード
ロウアーストラクチャーの有無
ハイブリッドコードとポリコードは、いずれも複数の和音の要素を一度に鳴らすという点においては共通する部分があります。
しかし、ハイブリッドコードはあくまでベース音のみ元のコードの要素を引き継いでいるのに対して、ポリコードはロウアーストラクチャーでコードをガッツリ演奏するという特徴があります。
例えばピアノで演奏する場合、右手と左手でそれぞれ以下のような割り当てになります。
ハイブリッドコード | ポリコード | |
右手 | コード | コード |
左手 | ベースのみ | コード |
このように、複数の「コード」を同時に演奏するという点において、ポリコードは非常に大きな特徴を持っています。
3rdや#9thの有無
ハイブリッドコードでは、コードがメジャーかマイナーかを決定づける「3rd」をあえて省略することで、独特のサウンド感を実現していました。
また、それに伴いって「マイナー3rd」と事実上同じ音である「#9th」も使用できませんでしたね。
一方で、ポリコードではその制約はありません。
ロウアーストラクチャーでコードを演奏する以上、3rdなしでは成立しにくいからですね。
つまり、ポリコードでは「3rd」や「#9th」も無制限で使用することができます。
ポリコードの利便性
複数のコードを同時に演奏するという特性上、ポリコードのサウンドは非常に複雑なものとなります。
人によっては、「ぶっちゃけ、こんなコードどこで使うの?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんね!
おっしゃる通り、ポリコードほどの複雑な響きをもったコードは、ジャズや近現代のクラシックならまだしも、一般的なポピュラー音楽では滅多に使いません。
ハイブリッドコードまでしっかり使いこなせれば十分です。
ただし!ポリコードは、そのサウンド面だけでなくコード表記の方法に大きな特徴があります。
これにより、以下のような利点を享受することができます。
- コードの表記を簡略化できる
- コードの種類だけでなく、音の積み方まである程度言及できる
それぞれ詳しく解説していきます。
コードの表記を簡略化できる
ポリコードを用いることで、コードの表記(コード記号)を簡略化することができます。
例として、以下の図をご覧ください。
上図では、「Cmaj7(9,#11,13)」と「D-Cmaj7」という2つのコードが並んでいますが、いずれもコードの構造やサウンドは全く同じです。
同じコードを記譜する場合、テンションをこまごま記載するよりもポリコード化してしまった方がシンプルに記載することができます。
とくに、セッションやレコーディングなど初見演奏が前提となるようなシーンにおいて、コード記号の見やすさ、読みやすさは演奏のパフォーマンスに大きく影響します。
演奏者に細かいテンションまで指示したい場合、テンションつきのコード記号ではなく、ポリコードを用いることで、どのテンションを使いたいのかを簡潔に伝えることができる。
これこそがポリコード1つ目の利点です。
コードの構成音だけでなく、音の積み方まである程度言及できる
ポリコード表記を用いることで、コードの構成音だけでなく、音の積み方まである程度言及することができます。
例えば、先ほどの「Cmaj7(9,#11,13)」という表記では、ルートが「C」であることと、Cmaj7のコードトーンに「9th」「#11th」「13th」の3つのテンションが追加されているという情報しか伝えることができません。
それに対して、「D-Cmaj7」というポリコード表記にしてしまえば、ロウアーストラクチャーは「Cmaj7」、アッパーストラクチャーは「D」であることが明記されているため、テンションは必ずコードトーンよりも上部にボイシングされることになります。
このように、ポリコード表記を用いることで、音の積み方まである程度言及することができる点が2つ目の利点です。
ポリコードの条件
ポリコードとして成立させるためには、いくつかの条件があります。
- ロウアーストラクチャーの最高音とアッパーストラクチャーの最低音は最低でも三度以上離すこと
- アッパーストラクチャーの最低音と最高音は、できる限り1オクターヴ以内に収めること
この2つの条件が定められている目的は、「ポリコードに含まれる2つのコードが明確に分離して聞こえる」という状態を実現するためです。
せっかくポリコードを用いるならば、サウンドからも明確にその特徴が現れてくれた方が効果が高いからですね。
例えば、以下の図をご覧ください。
左側の譜例
中央の譜例
右側の譜例
左側の譜例では、ロウアーストラクチャーの最高音「B」と、アッパーストラクチャーの最低音「C」が短二度しか離れていません。
この場合、「Cmaj7」と「D7」の境目が不明瞭になり、2つのコードが分離しなくなってしまいます。
また、右側の譜例では、アッパーストラクチャーが1オクターヴ以上にまたがって配置されています。
音楽的に間違いではありませんが、あまりに広い音域にまたがってコードを配置してしまうと、コードの響きが分散してしまい、「2つのコードを同時に鳴らしている」という、ポリコード特有のサウンド感が失われてしまいます。
以上の理由から、ポリコードの運用の際には前述の2つの条件を守って使用するのが効果的です。
まとめ
というわけで、ポリコードの基礎知識についてお届けしました。
記事中でもお伝えした通り、ポリコードはそのサウンド面はもとより、コード記号の表記の特徴から様々な利点があります。
普段から、テンションコードをポリコードに置き換えて考える(あるいはその逆も)クセをつけておくことで、いざという時にスムーズに入れ替えて使うことができるようになりますので、少しずつトレーニングしていきましょう!
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