クライマックスシーンのオーケストレーション実践テクニック!
こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。
今日は、楽曲の一番の聴かせどころであるクライマックスのオーケストレーションを解説していきます。
- クライマックスから作る3つの理由
- リファレンスの分析〜自作曲への反映
- より理想的なサウンドに近づける調整方法
いよいよ本格的なオーケストレーションの実践!
リファレンスをもとに、オリジナルのオーケストラ作品を仕上げていくためのテクニックをご紹介します。
ここまで順当に積み上げてきた知識・技術が役立つ時。
壮大なオーケストラ作品を楽しく作り上げていきましょう!
クライマックスシーンのオーケストレーションに挑戦しよう!
クライマックスから作る3つの理由
オーケストレーションを行う際には、まずはじめに楽曲のクライマックス部分から着手することをオススメします。
その理由は以下の3つです。
- 楽曲全体の構成を組み立てやすくなる
- 楽曲全体の音量をコントロールしやすくなる
- 後の作業が楽になる
それぞれ詳しく解説していきます。
楽曲全体の構成を組み立てやすくなる
いわば最重要シーンともいえるクライマックスを最初に製作することで、前後の構成も俄然組み立てやすくなります。
よく歌モノでもサビから作ると良いといわれますが、それと同じ理屈ですね。
また、クライマックスで登場したモチーフやフレーズをその他のシーンに伏線的に散りばめるといったテクニックもよく用いられます。
そのためにも先にクライマックスを完成させておくことは有効です。
楽曲全体の音量をコントロールしやすくなる
最も盛り上がっている場所の音量が決まると、その他のシーンの音量もコントロールしやすくなります。
クライマックスで使用される楽器の種類や組み合わせ、音量を先に定めておくことで、楽曲全体をオーケストレーションする際の基準(=最大値)として役立てることができます。
後の作業が楽になる
曲中一番の聴かせどころとなるクライマックスでは必然的に扱う楽器数も多くなることから、数小節作るだけでもスタミナを消費します。
そんなクライマックスを先に完成させておくことで、後の作業もグッと楽になりますね。
リファレンスの分析〜自作曲への反映
ここからは実際に、リファレンスを自作曲に反映していきましょう。
リファレンスの分析
今回クライマックスのリファレンスとして使用するのは、グリーグ作曲『交響舞曲』の15:23〜28部分。
グリーグ『交響舞曲』
まずは、該当箇所を以下の3つの視点で分析していきましょう。
- 各パートの役割分析
- 役割ごとの音の重ね方分析
- 強弱のバランス分析
1. 各パートの役割分析
はじめに、各パートがどのような役割を担っているのか分析していきます。
パートごとの役割は以下の通りとなっています。
【ストリングス】
- 1stヴァイオリン:メロディ
- 2ndヴァイオリン:メロディ
- ヴィオラ:オブリガート
- チェロ:オブリガート
- コントラバス:ベースライン
【金管】
- 1stトランペット:メロディ
- 2ndトランペット:メロディ
- 1st&3rdホルン:ハーモニー
- 2nd&4thホルン:ハーモニー
- 1stトロンボーン:オブリガート
- 2ndトロンボーン:オブリガート
- バストロンボーン:ハーモニー
- チューバ:ベースライン
【木管】
- 1stフルート:メロディ
- 2ndフルート:メロディ
- 1stオーボエ:ハーモニー
- 2ndオーボエ:ハーモニー
- 1stクラリネット:ハーモニー
- 2ndクラリネット:ハーモニー
- 1stバスーン:ハーモニー
- 2ndバスーン:ベースライン
これまでの記事でもお伝えしてきた通り、やはり1つの役割に対して複数のパートが割り当てられていることがお分かりいただけると思います。
2. 役割ごとの音の重ね方分析
続いて、各役割ごとの音の重ね方を見てみましょう。
【メロディ】
- 1st,2ndフルート・1stヴァイオリン:トップライン
- 1st,2ndトランペット・2ndヴァイオリン:オクターブ下
【オブリガート】
- ヴィオラ・1stトロンボーン:トップライン
- チェロ・2ndトロンボーン:オクターブ下
【ハーモニー】
- 1stオーボエ・1stクラリネット
- 2ndオーボエ・2ndクラリネット
- 1st,3rdホルン
- 2nd,4thホルン
- 1stバスーン・バストロンボーン
【ベースライン】
- 2ndバスーン・チューバ・コントラバス:ユニゾン
【ハーモニーについての補足事項】重複法と交叉法を駆使してハーモニーを形成。上に書いてあるものほど高い音となっています。1st,3rdホルンの音を境目に上側が密集配置、下側が開離配置になっているのもポイント。音域を広くハーモニーで埋めつつも中音域が飽和しないようなボイシングになっています。
ここまで分析してみると、全体の構造がだいぶ整理されてきましたね。
3. 強弱のバランス分析
今度は、パートごとの強弱のバランスを分析してみましょう。
強弱記号を見てみると、全てのパートに「f(フォルテ)」が指定されていることがわかります。
つまり、音量バランスの調整は楽器の割当てや音域などを駆使して行なっているということになりますね。(強弱記号によるものではないということ。)
ここからは、以下の4つの役割に大してどのような処理が行われているのかを見ていきます。
- メロディ
- ベースライン
- ハーモニー
- オブリガート
メロディ
メロディは、クライマックスにおいて最も高い音域を使用しているため、それだけでも目立ちやすくなっています。
高音域のフルートとヴァイオリンのオクターブユニゾンがそれに該当します。
さらに、目立ちやすいトランペットの音色も加わり、主旋律にふさわしい音量バランスに仕上がっています。
ベースライン
ベースラインを担当するのは、バスーン、チューバ、コントラバスの3パート。
チューバとコントラバスでしっかり音量を確保しつつ、バスーンで両者の馴染みをよくしています。
ハーモニー
ハーモニーは、担当しているパート数こそ多いものの、「木管楽器+ホルン」という音量が控えめな楽器による組み合わせ。
その分、全ての音を2パートずつ重ねてバランスをとっています。
これにより、他のパートを邪魔することなく充実したハーモニー演奏することを実現しています。
オブリガート
オブリガートを担当するのは、トロンボーン2本とヴィオラ&チェロ。
バランス的にはトロンボーンが目立つ割り振りとなっています。
トロンボーンだけでも十分な音量があるため、他のパートとのバランスが崩れる懸念もある組み合わせ。
しかし、メインメロディに比べてだいぶ音域が低いこと、さらにはフレーズ自体もメロディを邪魔しないよう考慮されていることで程よいバランスに仕上がっています。
分析結果を自作曲に反映
リファレンスの分析が完了したら、今度はその結果を自作曲に反映させていきましょう。
ここでは難しいことは考えず、スケッチで用意したメロディやコードに対してリファレンスの各要素をそのまま割当てていくだけでOK。
以下のような形に仕上がりました。
より理想的なサウンドに近づける調整方法
ここからは、さらに理想的なオーケストラサウンドに近づけるべく細部を調整していきましょう。
以下の2つの観点で調整を入れていきます。
- 音域・音量バランスの調整
- リズム感・推進力の調整
1. 音域・音量バランスの調整
いくらリファレンス通りに楽器を割当てても、楽曲が違う以上必ずしも同じ鳴りになるとは限りません。
使用する音域などが変化して、聞こえ方や音量バランスが変化することだってあるわけです。
したがって、より理想的なサウンドを目指して調整ポイントを考えてみましょう。
今回の場合、トランペットの音域がリファレンスに比べて低いため、トランペットらしいハリが失われています。
さらに、ヴァイオリンとフルートも現状悪くはないもののクライマックスらしい盛り上がりのためにはもう少し高い音域も欲しいところです。
したがって、1stヴァイオリン、1stトランペットをオクターブ上げて調整してみました。
フルートはそのままオクターブ上げてしまうと音域的にかなりきつい音も登場するのでピッコロに持ち替えてオクターブ上を演奏してもらう形に。
加えて、クライマックスらしさを誇張すべく全体的なダイナミクスを「ff(フォルティッシモ)」に変更しています。
明るく、イキイキとした印象に変化しましたね!
2. リズム感・推進力の調整
ここまでのアレンジでもだいぶ良い感じの仕上がりになりましたが、さらにここからリズムの調整を入れていきます。
楽器の割り当てを大きく変えることなく楽曲の印象を変えたい場合には、リズムの調整をするのがオススメ。
とくに今回は、用意した自作曲がリファレンスと比べてテンポの速い楽曲であるため、いっそう効果的です。
クライマックスシーンは壮大な印象と躍動感を両立した雰囲気に仕上げたいので、今回はハーモニーのパートは伸ばし主体のスケールの大きいフレーズ感をキープすることにしました。
そこで、スネアドラムなどのリズムを刻むパーカッションを加えることで躍動感やスピード感を付与する作戦でいきます。
ハーモニーパートにもちょっとしたオブリガート的な動きを少し加えて以下のような形になりました。
いかがでしょうか?
リファレンスのオーケストレーションを踏まえつつ、オリジナリティも感じさせるオーケストレーションに仕上がりましたね!
まとめ
というわけで、クライマックスのオーケストレーションについて詳しく解説しました。
リファレンスを正しく分析することができれば、素直にスケッチに当てはめていくだけでも相応の仕上がりに。
さらにそこから微調整をすることで、手早く印象をコントロールすることも可能であることがお分かり頂けたと思います。
ぜひ様々なリファレンスを参考に、そのエッセンスをご自身の楽曲に取り入れてみてくださいね。
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