オーケストラにおける楽器同士の音量バランスとそのコントロール方法を理解しよう!
こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。
以前解説をしたオーケストラの編成の記事にて、各セクションの大まかな音量バランスについて軽く解説したのを覚えてらっしゃいますか?
今回はさらに踏み込んで、オーケストレーションを実践する際に気をつけておきたい楽器同士の音量バランスとそのコントロール方法について解説していきます。
- オーケストラ編成での音量バランス調整手段
- 音量ごとのアレンジの考え方
- 音域の両端に気を付ける
多様な楽器を取り扱うオーケストラにおいては、それぞれの楽器の特性を考慮した音量バランス調整が必要になります。
仮に打込みであっても、オーケストラらしいサウンドを実現する上で非常に重要な知識となりますので、しっかりと身につけていきましょう!
オーケストラにおける楽器同士の音量バランスとそのコントロール方法を理解しよう!
オーケストラ編成での音量バランス調整手段
音量バランスというと、ミキサーによるフェーダーバランスを想像される方も少なくないでしょう。
もちろん打込みの場合はフェーダーをコントロールして音量バランスを取ることも可能ですが、生演奏の場合はそうはいきません。
オーケストレーションの段階で、楽器ごとの音量バランスを考慮したアレンジを施す必要があるわけですね。
また、仮に打込みであっても、フェーダーのみでバランスを取ろうとすると本来のオーケストラのサウンドとは程遠いものとなってしまいます。
ですから、最初から生のオーケストラを想定した音量バランスを意識しながらアレンジすることは、リアルなオーケストラサウンドを作る上では不可欠なものとして覚えておいてください。
オーケストレーションの際に各パートの音量バランスをコントロールする場合は、以下の2つの手段を用いることになります。
- 強弱記号でコントロールする
- 楽器数を増減する
実際の編曲時には、この2つを同時に使って音量バランスをコントロールしていくことになります。
音量指示でコントロールする
パートごとに、p(ピアノ)やf(フォルテ)といった強弱記号を指示することでバランス調整をする手法です。
例えば、目立たせたいパートや音量の小さいパートには、他のパートよりも1段階強いダイナミクス(強弱記号)を指示をすることで、相対的なバランスを取ることができます。
強弱記号をスコアやパート譜に記譜することにより指揮者や奏者へのアテンションにもなるため、音量バランスに対する意識をより強く持ってもらうこともできます。
楽器数を増減する
シンプルに、同時に演奏している楽器の数を増減することで音量をコントロールする手法です。
同時に演奏している楽器が増減すれば、それに合わせて音量も変化することは想像に難くないでしょう。
例えば、音量の大きな金管楽器の人数を絞ることで他のパートとのバランスを取りやすくするといったことが可能です。
前述の音量指示でのコントロールと組み合わせることで、幅広い音量調整が可能となります。
音量ごとのアレンジの考え方
「オーケストラの編成」に関する記事でもお伝えしたとおり、セクションごとにダイナミックレンジが大きく異なります。
したがって、弱〜中程度の音量でアレンジする場合と強い音量でアレンジする場合では、アレンジの考え方も変わってきますので、それぞれ分けて解説していきます。
- 弱〜中程度の音量でアレンジする場合
- 強い音量でアレンジする場合
弱〜中程度の音量でアレンジする場合
まずは、弱〜中程度の音量でアレンジをする場合を見ていきましょう。
強弱記号でいうところのPP(ピアニッシモ)以下〜mf(メッゾフォルテ)くらいの音量を用いる場合と考えていただいて結構です。
この範囲のダイナミクスであれば、セクションごとの音量差はあまり気になりません。
そのため、強く演奏する場合と比べて音量バランスの調整も比較的楽に行えるでしょう。
弱〜中程度の音量では、以下のような特徴があります。
- 強く演奏する場合に比べて様々な楽器の組み合わせを検討しやすい
- 弱い音量ほど繊細で落ち着いたサウンドになる
それぞれ詳しく解説していきます。
1. 強く演奏する場合に比べて様々な楽器の組み合わせを検討しやすい
弱〜中程度の音量であれば、どの楽器(&セクション)も音量のコントロールが容易に行えます。
したがって、よほどパートごとの人数に偏りがなければどの楽器同士でもバランスよく組み合わせることができるでしょう。
大音量では音量差の大きな木管と金管であっても、弱〜中程度のダイナミクスであれば問題はほぼ発生しません。
これにより、使用できる楽器の選択肢も増えるので、様々な組み合わせを検討しやすくなります。
2)弱い音量ほど繊細で落ち着いたサウンドになる
オーケストラ楽器に限った話ではありませんが、生楽器は原則として強弱の変化にともない音色も変化するもの。
単純にフェーダーを上げ下げしたような音量の変化だけではないということですね。
例えば、弱く演奏しようと思った場合、弦楽器なら弓の動きがゆったりしたものになりますし、管楽器なら吹き込む息のスピードが緩やかになります。
これにより、繊細で落ち着いたサウンドになるわけです。
強い音量でアレンジする場合
次に、強い音量でアレンジをする場合を見ていきましょう。
強弱記号ならf(フォルテ)以上の音量を取り扱う場合です。
この音量になってくると、楽器やセクションごとの音量差が顕著になってきます。
したがって、その点を考慮したアレンジをしないとバランスが崩れてしまうことを覚えておきましょう。
強い音量でアレンジする場合は、以下の特徴踏まえて実践しましょう。
1. 金管(とくにトランペットとトロンボーン)はとにかく音が大きい
これまで何度かお伝えしてきましたが、金管楽器、とりわけトランペットとトロンボーンのフォルテ(以上)は圧倒的音量を誇ります。
したがって強い音量を扱う場合には、トランペット&トロンボーンとそれ以外の楽器との音量バランスを正しく取れるよう細心の注意を払いましょう。
本記事前半でお伝えした2つの音量バランス調整方法を駆使しながら調整していきます。
- 強弱記号でコントロールする
- 楽器数を増減する
強弱記号でコントロールする
トランペットとトロンボーンのダイナミクスを1段階下げることで、その他のパートとバランスを取る手法です。
例えば、他のパートはff(フォルテッシモ)で演奏している中、トランペットとトロンボーンは1段階下のf(フォルテ)を指示するという具合です。
楽器数を増減する
強弱記号でのコントロールは合理的かつ曲も破綻しにくいのですが、裏を返せばトランペットやトロンボーンに力をセーブさせている状態ともいえます。
これでは、トランペット&トロンボーンが秘めている凄まじいパワーを生かし切ることは難しいですよね。
そんな時は、周りのパートの人数を増強して、金管がフルパワーで演奏していても十分に対抗できるよう調整しましょう。
この時のコツは「ユニゾン主体のオーケストレーション」をするに尽きます。
例えば、木管楽器1〜2パートで凝ったフレーズをモニョモニョ演奏したところで、トランペットのロングトーン一発でかき消されてしまいます。
ですから、金管楽器がフォルテ以上で演奏している場合は、それに対抗できるだけの楽器数でユニゾンさせるのが一番の得策です。
2. 強い音量ほど鋭く勢いのあるサウンドになる
弱〜中程度での演奏とは逆に、強い音量での演奏は鋭く勢いのあるサウンドになります。
弦楽器ならば弓を速く動かし、管楽器なら息の速度を速く演奏して発音をしますので、それが出音のニュアンスにも反映されます。
とくにff(フォルテッシモ)以上での金管楽器は相当鋭いサウンドになりますので、この音量で柔らかい響きを出すことはできないことを覚えておきましょう。
音域の両端に気をつける
各楽器の解説で触れた部分ではありますが、大事なことなのでここで改めて解説いたします。
音量バランスを検討する上で忘れてはいけないのが音域の両端への配慮です。
オーケストラで使われる楽器(特に管楽器)は、その多くが音域の両端(最高音域&最低音域)において演奏が難しい傾向にあります。
特に高音域は極端に演奏難易度が高く、そもそも発音するのが精一杯で音量の制御は極めて困難ということも珍しくありません。
これは楽器の構造上避けられないもので、どんなに熟達した奏者さんであっても限界があるのです。
多くの場合、低音域は弱く、高音域は強い音量になりがちです。
楽器法の記事にて解説した各楽器オススメの音域以外では、音量の指定に問題がないかしっかりと確認しながらアレンジすることを心がけましょう!
まとめ
というわけで、オーケストレーション時の音量バランスとそのコントロール法について解説しました。
とくにDTMでオーケストラにチャレンジすると、現実ではあり得ない無茶苦茶なバランスでも鳴らすことも可能なため、結果としてチグハグなアレンジになってしまうことも少なくありません。
本格的なオーケストレーションを目指す上で、今日ご紹介した音量バランスへの理解は必須項目。
ぜひ試行錯誤しながら感覚を掴んでいってくださいね!
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