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高度なテクニック③:楽曲の印象を左右する「体感上の音量・音高」を理解しよう!

こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。

今日は、より精度の高いオーケストレーションをするために欠かせない「体感上の音量・音高」について解説していきます。

  • 体感上の音量をコントロールする
  • 体感上の音高をコントロールする

音というのは面白いもので、物理的な音量や音高と体感上のそれとは聴こえ方が全く異なるものです。

その違いを正しく理解してオーケストレーションすることで、楽曲の印象を自在にコントロールすることができます。

少々難易度の高いお話にはなりますが、興味深い体験ができると思いますので楽しみながらお読みいただければ幸いです!

 

高度なテクニック③:楽曲の印象を左右する「体感上の音量・音高」を理解しよう!

体感上の音量をコントロールする

まずは、体感上の音量を司る「音の鋭さ」と「質量」について解説していきます。

それぞれ、以下のように定義します。

【音の鋭さ】
音色の持つ「スピード感」「緊張感」「刺激の度合い」などのこと

【音の質量】
音の持つ「重量感」「充実感」「太さ」などのこと

これら2つの要素はいずれも体感上の音量に深く関わるものです。

例えば、フルオーケストラ全員での演奏であれば音の質量はそれなりの大きさになりますが、仮に全員が弱く演奏した場合は丸みを帯びた音色となり鋭さはありません。

この場合、体感的には「弱い」という印象を持つことになるでしょう。

今度は逆の例を考えてみます。

ソロのトランペットが鋭い音色で演奏したとしたらどうなるでしょうか?

ソロ楽器ということもありフルオーケストラよりも質量は小さくなりますが、音色が鋭い分、体感的には「強い」という印象を持つことになるでしょう。

このように、絶対的な音量と体感的な音量は必ずしも一致せず、音の質感によって大きく変わるということになります。

実際に音を聞いてみましょう。

※音源の性質上、各音源ごとの音量差が大きくなっていますので音量設定にご注意ください。

フルオーケストラで弱く演奏した場合

質量は大きいが、鋭さはないため弱く聞こえる。

ソロ楽器で強く演奏した場合

質量は小さいが、鋭い音色のため強く聞こえる。

このように、音の「鋭さ」と「質量」を上手にコントロールすることができるようになれば、様々な情景を描きやすくなります。

「鋭さ」と「質量」のマトリクス

ここでは、「鋭さ」と「質量」をマトリクス化してそれぞれの組み合わせをみていきましょう。

「鋭さ・小」「質量・小」:儚い、繊細、無気力などの印象

「鋭さ・小」「質量・大」:平穏、物静か、温和などの印象

「鋭さ・大」「質量・小」:鋭利、刺激的、突き刺すような印象

「鋭さ・大」「質量・大」:壮大、強烈、パワフルなどの印象

いかがだったでしょうか?

「鋭さ」と「質量」それぞれの違いにより、ガラッと印象が変わることがお分かりいただけたと思います。

本カリキュラムの教材曲で言えば、エンディングのファンファーレやキメ部分はまさに、「鋭さ・大」「質量・大」のシーンということになりますね。

このことをしっかり理解することで、より自由度の高いオーケストレーションができるようになるはずです。

体感上の音高をコントロールする

今度は、体感上の音高(音の高さ)について解説していきます。

体感上の音量と同様に、音高にも様々な感じ方があります。

例えば、「C5」の音をトランペットで演奏する場合とホルンで演奏する場合では、物理的な音の高さ(周波数)は同じでも体感上の音高が違って聞こえるはずです。

まずは実際に音をお聴きください。

トランペット

ホルン

いかがでしょう?

同じ「C5」の音でも、ホルンの方がなんとなく高い音を演奏しているような印象を受けませんか?

もう1つ例を挙げてみます。

今度は「A4」の音を、「女声」と「男声」で聴き比べてみましょう。

女声

男声

先ほど同様に、「男声」の方が高い音を演奏しているような印象を受けたと思います。

不思議なもので、仮に同じ音程であったとしても「その楽器にとって高い音」であれば「高い音を演奏している」という印象を持つものです。(これは低い音にも同じことが言えます)

このように、人間が感じる体感上の音高を意識することで、オーケストレーションの際の音色選びや楽器選びの精度がさらに高まるでしょう。

例えば、トランペットでは余裕だが、ホルンにとっては高い音域でメロディ演奏をする場合、それが全く同じメロディであっても以下のような印象の違いが生まれます。

  • トランペット:ゆったりと朗々とした印象
  • ホルン:ちょっと張り詰めた印象

クライマックスのような盛り上げたいシーンにおいては。あえて高音域の音を用いることでその雰囲気をアップさせるということも行われます。

例えば教材曲なら、クライマックスの1stトランペットや1stヴァイオリンなどはまさにそのようなアレンジを行なっています。

クライマックスにふさわしい「全力感」「程よい緊張感」を感じさせる上で、その楽器にとって高い音域を用いることは非常に効果的なのです。(繰り返しになりますが、決して乱用はすべき音域ではありませんので注意して使いましょう。)

まとめ

というわけで、体感上の「音量」と「音高」について詳しく解説しました。

実際の「音量」や「音高」だけでなく、体感上のそれを意識することで、オーケストレーションの精度が著しく高まります。

様々な組み合わせで実験しながら、そのコントロール技術を高めていただければ幸いです。

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