編入楽器の楽器法:ハープの構造、音域、特徴を理解しよう!
こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。
今日は、オーケストラにおける編入楽器の1つである「ハープ」について解説していきます。
- ハープの概要
- 楽器の構造と発音の仕組み
- 音域と音色
- ペダルの指定
- 得意なフレーズ、苦手なフレーズ
ハープは、その美しい音色と外見で数多くのオーケストラ作品を彩ってきました。
一方、その美しさとは裏腹に取り扱いが難しい楽器でもあります。
基本的な構造を理解しないまま扱うと演奏不能なフレーズを書いてしまうことも少なくありませんので、しっかりと学んでいきましょう!
編入楽器の楽器法:ハープの構造、音域、特徴を理解しよう!
ハープの概要
ハープは、ストリングスセクション同様「弦楽器」に分類されますが、その発音方法は全く異なります。
ストリングスセクションが「擦弦楽器」であるのに対し、ハープは指で弦を弾くことから「撥弦楽器」となります。
ハープの歴史は非常に古く、紀元前にはすでにハープの原型となる楽器が存在していたと言われています。
現代においてもさまざまなハープが作られており、中には和楽器の「箏(こと)」のように「爪」を装着して演奏する珍しい楽器まで存在します。
楽器のサイズもバリエーションに富んでいますが、通常オーケストラで用いられるのは「グランドハープ」「コンサートハープ」などと呼ばれる大型の楽器。
正式には「ダブルアクションペダルハープ」と呼びます。
今回は、そちらについて詳しく解説していきます。
編入楽器とは?
編入楽器とは、オーケストラ編成のレギュラーメンバーではなく必要な時だけ参加する楽器のこと。
ハープの他に、ピアノも代表的な編入楽器です。
それ以外にも、サックスやユーフォニアム、民族楽器、電子楽器なども含め、必要があればなんでも自由に取り入れることができることができます。
とりわけハープは、ピアノと並んで用いられる頻度の高い編入楽器となりますので覚えておきましょう。
ハープの音を聴いてみよう
後ほど解説するペダルの動きも映っていますので、奏者の足元を見ながら演奏を聴いてみると勉強になるでしょう。
楽器の構造と発音の仕組み
次に、楽器の構造と発音の仕組みについて見ていきましょう。
楽器の構造
柱、腕木、ボディ、3つの木製パーツで三角形を形作っています。
腕木には弦が固定されており、弦の本数は47本。(コンサートハープの場合)
これらの弦は音程順に並んでおり、識別しやすくするためにCの弦とFの弦に色を染めてあります。
- Cの弦:赤
- Fの弦:黒または青
柱の下には台座があり、ここに弦の音程を変更するための7つのペダルが付いています。
ダブルアクションペダル
コンサートハープの演奏において最も重要な機構が「ダブルアクションペダル」と呼ばれるもの。
単に「ペダル」と呼ぶことも多いです。
ペダルは、奏者から見て左側に3つ、右側に4つの合計7つついていて、両足を使って操作をします。
それにより、各ペダルに対応した弦のチューニングを変更しながら演奏するわけです。
ペダル装着部分は下図のように階段状に切り込まれており、ペダルを固定する位置によって音程が変わります。
- 上:フラット
- 中:ナチュラル
- 下:シャープ
例えば、「C」の弦のペダルを1段踏み込むことで、楽器上にある全ての「C」の弦が「C#」へと変化するという具合です。
この時、一部の弦だけ(C4の弦だけなど)を限定的に上げ下げすることはできませんので注意しましょう。
発音の仕組み
発音の原理としてはとてもシンプル。
弦を指で弾いた際に発生した音を、ボディ(サウンドボックス)で共鳴・増幅させて発音します。
演奏の際には、楽器を手前に傾けつつ右肩で支えるように抱え込んで演奏します。
撥弦は親指から薬指までの4本(左右合わせて8本)の指を使い、指の腹~第1関節近辺まで深く引っ掛けて弾きます。
音域と音色
次に、ハープの音域とそれに伴う音色の特徴を見ていきましょう。
ハープの音域は以下の通りです。
ハープは6オクターブ半にも及ぶ非常に広い音域を持っています。
そのため、ピアノと同じように2段の大譜表を用いて記譜します。
やはり中音域が最もハープらしく豊かなサウンドを持っており、透明感のある美しい音色が特徴です。
音域両端に近づくほどその特性が失われていきます。
最高音域は弦が短く、音量が乏しい上に余韻も少ないためチープな響きになりがちです。
一方最低音域は、音量こそ出せるものの撥弦時の明瞭さがなくモヤモヤした響きがします。
ペダルの指定
前述の通り、ハープではペダルを使って各弦のチューニングをコントロールします。
したがって、楽曲を演奏するために必要な調弦はあらかじめ譜面に記載しておくと丁寧でしょう。
そのためには、まずペダルの並び方を把握しておく必要があります。
ペダルの配置、並び順は以下のようになっています。
- 左側:手前から奥の順に見てB、C、D
- 右側:手前から奥の順に見てE、F、G、A
各ペダルのチューニングを指示する場合は、上記の並びを踏まえた書き方をする必要があります。
また、記譜の際には以下の2点に気をつけましょう。
- 左右のペダルをそれぞれ上段下段の2行に分けて書く
- 奏者から見て手前のペダルほど左に書く
下図左側の図が、そのように記譜したものです。
また、上図右例のようにスケール名で指定することもあります。
とはいえ、基本的には1音1音指定したほうが間違いが少なく確実です。
得意なフレーズ、苦手なフレーズ
ここからは、ハープの得意なフレーズと苦手なフレーズについて見ていきましょう。
もはや苦手を通り越して演奏不可能なフレーズもありますから、しっかりポイントを押さえていきましょうね。
得意なフレーズ
ハープの得意なフレーズは以下の2つです。
- アルペジオ
- グリッサンド
それぞれ詳しく解説していきます。
■ アルペジオ
ハープは、アルペジオ(分散和音)の演奏が非常に得意です。
そもそも、「アルペジオ」という言葉は、ハープのイタリア名である「Arpa(アルパ)」を語源としています。
もはやハープにとってお家芸ともいえる奏法です。
リズムを刻むアルペジオはもちろん、ポロロンとタイミングをずらして発音するアルペジオも非常に効果的です。
それぞれの弦の間隔が狭いため、オクターブ程度のインターバルであれば問題なく弾くことができます。
ただし、ハープは親指~薬指までの4本の指だけで演奏を行うため、片手につき4和音までにとどめておく必要があります。
また、両手それぞれの音域が離れてしまうと音量が下がってしまう特徴があるため、両手を使った演奏の際には密集した和音で演奏をするのが効果的です。
■ グリッサンド
ハープのもう1つの代名詞といっても過言ではないのがグリッサンド。
他のオーケストラ楽器では実現不可能な、唯一無二の特性を持つグリッサンドが演奏できます。
そのカギを握るのは、先ほども解説したペダルです。
ペダルを用いることで、スケールでのグリッサンドだけでなくコードのグリッサンドを演奏することもできます。
その仕組みを解説していきます。
まずは以下の図をご覧ください。
ハープのペダルは、音程ごとにフラット・ナチュラル・シャープのいずれかに設定できますが、それを活用すると2つの弦を全く同じ音程にチューニングすることも可能です。
例えば、Bの弦をB#に、Cの弦をCナチュラルにすることで、事実上2本とも「C」にチューニングすることができます。
このように、隣接する弦を同じ音程になるよう調整した音のことを「ホモフォン」と呼びます。
「ホモフォン」を上手に活用することで、コードの構成音だけを選択的にグリッサンドすることができるようになるわけです。
例えばCdim7(ド、ミb、ソb、ラ)なら、ペダルを以下のように調整します。
- Cの弦:Cナチュラル
- Dの弦:D#(Ebの異名同音)
- Eの弦:Eb
- Fの弦:F#(Gbの異名同音)
- Gの弦:Gb
- Aの弦:Aナチュラル
- Bの弦:B#(Cの異名同音)
ちなみに、上記のようなディミニッシュセブンスコードならば、どんなルートであっても演奏可能です。
一方で、その他のコードによっては必ずしもコードの構成音だけを設定できるわけではないことも覚えておきましょう。
ディミニッシュセブンス以外のコードならば、以下の3つは比較的実現しやすいでしょう。(絶対ではありません。)
- ドミナント7th
- マイナー7th
- マイナー7thフラット5th
和音のグリッサンドをする場合のペダル設定のポイントは以下の通りです。
- コードトーンにマッチするよう対象の弦をチューニング
- Dナチュラル、Gナチュラル、Aナチュラルは「ホモフォン」が作れないので要注意
- コードトーンに割当て不可能な弦は、そのコードで演奏可能なコードスケール上の音を割り当てる(ただしアヴォイドは極力避ける)
苦手なフレーズ
ハープでは、ペダルを使って音程を切り替えながら演奏する都合上、半音階の演奏が苦手です。
というより、1オクターヴ丸々半音階で演奏しきるのは不可能です。
以下の図をご覧ください。
例えば、「C→C#→D→D#→E→F・・・」といった半音階をしようとした場合、ハープでは以下のように設定する必要があります。
- Bの弦:B#(=C)
- Cの弦:C#
- Dの弦:D
- Eの弦:Eb(=D#)
- Fの弦:Fb(=E)
- Gの弦:???
いかがでしょうか?
Bの弦〜Fの弦までは順調に半音階を設定できましたが、Gの弦は「F」の音に設定することができないため、この時点で半音階の実現は不可能となっていることがお分かりいただけるかと思います。
即座にペダルを切り替えながら演奏することで全く対応不可能ではありませんが、奏者に大きな負担がかかりぎこちない演奏になってしまうので、やめた方が無難でしょう。
どうしても半音階が欲しい場合など、通常のハープでは演奏が困難なフレーズを求める場合は、ハープを2台使ったアレンジをすることもあります。
ラヴェル作曲の「ダフニスとクロエ」
冒頭11秒付近では1stハープと2ndハープがそれぞれ異なるコードを交代で演奏しています。
このように、ハープにおける演奏上の制限はペダルによるものが大きいのです。
したがって、オーケストレーションの際にはペダルのセッティングに十分留意しながらフレーズを考えていく必要があります。
また、ペダルの踏みかえにそこまで時間はかかりませんが、左右の足それぞれ1つのペダルしか同時に操作できないことも覚えておきましょう。(つまり、片足で複数のペダルを操ることはできないということ。)
隣り合うペダル同士を同じ段に設定する場合なら全く不可能ではありませんが、避けたほうが無難です。
まとめ
というわけで、ハープについて詳しく解説しました。
その美しい音色やアルペジオやグリッサンドによる輝くような表現など、非常に魅力の多いこの楽器。
一方で、その仕組みをしっかり理解しておかないと最悪演奏不能なフレーズを書いてしまう危険性もはらんでいます。
打込みで再現する際もペダルの動きが考慮されてないアレンジは途端に嘘くさくなってしまうので、今日の記事を参考にしながらしっかりと理解を深めていってくださいね!
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