ドラムサウンドの充実感が決まる!キットマイクのMixテクニックをマスターしよう!
こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。
今日は、ドラムサウンドの中核を担うキットマイクのMixテクニックについて解説していきます。
- キットマイクのMixに使うエフェクト
- 各エフェクトのセッティング
- キットマイクの音量バランス
- キットマイクがない場合の対処法
キットマイクとは、ドラム前面から全体をモノラルで収録したマイクのことでしたね。
各オンマイク同士の音をつなぐ接着剤としての役割を果たしてくれるほか、ドラムサウンド全体の密度や充実感をコントロールする上でも役立ちます。
今回は、そんなキットマイクの音作りや音量バランスについて詳しく解説。
キットマイクが存在しないドラム音源を使う場合の対処法についてもご紹介していきますので、ぜひご活用ください!
※本企画はデータ連動企画となっています。講師イナゲが作った楽曲のパラデータをダウンロードすることができますので、ぜひそちらも合わせてご活用ください!
今回の教材曲:プロスペロー『MOB 〜この街のありふれた一人〜』
ドラムサウンドの充実感が決まる!キットマイクのMixテクニックをマスターしよう!
キットマイクの音作りに必要なエフェクト
まずは、キットマイクの音作りに使うエフェクトを見ていきましょう。
1. コンプレッサー
キットマイクの音作りではコンプが非常に重要な役割を担います。
各オンマイクに施したアタック感を残したコンプレッションとは違い、キットマイクのコンプは音圧感やサウンドの充実感を作る目的で使用します。
アタック感はオンマイクで十分に実現できていますので、キットマイクではガッツリコンプをかけて音の密度をアップさせるという寸法。
これにより、ドラムサウンド全体の充実感を底上げすることができます。
2. イコライザー
不要な中低域のダブつきや、高域のピークををカットする目的で使用します。
前述の通り、サウンドのアタック感についてははオンマイクで十分に表現できていますので、主に不要な帯域を除去することにフォーカスすれば良いでしょう。
また、各オンマイクと自然に接着するために適切な周波数でローカットを入れることも重要です。
3. リミッター
こちらはキックやスネアに対するリミッティングと変わりません。
強すぎるアタックや、時折発生する突発的なピークを抑え込むために使用します。
実際のセッティング
それでは早速、実際のセッティングをみていきましょう。
例によって、コンプレッサー、イコライザーをチャンネルストリップでまとめて設定しています。
ちなみにキットマイクは複数の楽器をまとめて収録したトラックですので「カブリ」という概念は存在しません。(カブってるのが当たり前)
したがって、エクスパンダーは使わなくてOKです。
コンプレッサーのセッティング
キットマイクでは音圧感を重視すべくガッツリコンプをかけていきます。
レシオは「10:1」と深めに、スレッショルドも最大値「-20dB」に設定した上でリリースも最速にしています。
しかし!
これでもまだかかりが足りなかったので、さらにインプットゲインもあげてコンプが十分にかかるよう調整しています。
コンプレッサー適用前
コンプレッサー適用後
イコライザーのセッティング
イコライザーは全てカット方面にのみ使用しています。
200Hz付近の中低域のダブつきを抑え、さらに1kHzにあるピークをカット。
3kHz付近にも、シンバルなど金物による耳障りなピークがありましたのでカットしています。
低音はキックと程よく接着できるギリギリのライン135Hzからローカットを入れています。
EQ適用前
EQ適用後
ダイナミックEQのセッティング
ダイナミックEQでは、チャンネルストリップのEQでは処理しきれない細かい問題を解決していきます。
スネアの胴鳴りに含まれる音程感のあるピークがキットマイクにも入り込んでいますので、まずはそちらをピンポイントでカット。
「430Hz」「562Hz」「616Hz」「697Hz」の4箇所でリダクションしています。
また、シンバル類の高域成分が耳につきますので2430Hz以上をシェルフでリダクションしています。
12kHz以上はオーバーヘッドに委ねるべくハイカットを入れました。
ダイナミックEQ適用前
ダイナミックEQ適用後
リミッターのセッティング
キックやスネアのリミッター同様、突発的なピークを抑え込んでいきます。
アタック感はあまり出さなくても良いので、しっかり目にリダクションしてOKです。
リミッター適用前
リミッター適用後
キットマイクの音量バランス
音質の調整が完了したところで、今度はキック&スネアのオンマイクと混ぜていきましょう。
それぞれが「点」として聞こえていたキックやスネアのオンマイクが、キットマイクが入ることで「線」で繋がるイメージです。
あくまで主役はオンマイクでありキットマイクはそれらを接着することが目的ですので、オンマイクより背面に配置しましょう。
オンマイクのみ
キットマイクで接着
ちなみに、上記の点さえ抑えられていれば、あとは比較的自由だったりします。
キットマイクの音量に明確な決まりはなく、どの程度の音量で混ぜるかによってサウンドの印象がガラリと変わってきます。
楽曲の方向性に合わせて決めていきましょう!
キットマイクの音量:中(自然なサウンド)
キットマイクの音量:弱(ひかえ目なサウンド)
キットマイクの音量:強(ハデ目のサウンド)
キットマイクがない場合の対処法
ドラムを打込みで作る場合、使用するソフトウェア音源によってはキットマイクが存在しない場合もあります。
そんな時は、ルームマイクを使って代用することができます。
ルームマイクを使った代用方法は以下の通りです。
モノラルにする
ルームマイクは、本来空気感や部屋鳴りを収録するためのマイクですのでステレオ音像になっています。
これをキットマイクがわりに使う場合は、パナーを閉じて完全なモノラルにしてしまいましょう。
元のルームマイク
モノラルにしたルームマイク
各種エフェクト処理
ここからは通常のキットマイクと同様の考え方でOKです。
コンプをガッツリかけて音圧感を出しつつ、不要な帯域をEQでカット、最後にリミッターでピークを抑えていきます。
ルームマイクはキットマイクに比べて中低域の成分が多く含まれており、逆にハイが弱い傾向があるので、モヤモヤしたサウンドにならないようEQでしっかり調整していきましょう。
実際のEQのセッティングは以下の通りです。
エフェクト処理前
エフェクト処理後
オンマイクと混ぜる
こちらもキットマイクと全く同様の考え方でOKです。
オンマイクと混ぜたサウンド
まとめ
というわけで、キットマイクの取り扱いと各種セッティングについて詳しく解説しました。
キットマイクを上手に扱えるようになると、ドラムサウンドの密度やキャラクターを自在にコントロールすることができるようになります。
今日の記事を参考に、しっかりとマスターしていきましょう!
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