ドラムパートを構成する各トラックの内訳、Mix前の下準備を理解しよう!
こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。
今日からいよいよ、バンドサウンドのミキシング実践編に入っていきます!
初回はドラムを構成する各トラックの内訳とMix前の下準備について解説。
- ドラムパートを構成するトラック
- ドラムMix前にやっておきたい下準備
マルチマイクで収録されるドラムパートは、それぞれのトラックがどのような役割を持っているのかを正しく認識することが重要。
生録音したドラムはもちろん、昨今ではソフトウェア音源でもマルチマイクが前提となっておりますので、今日の記事を参考にしっかり理解していきましょう!
※本企画はデータ連動企画となっています。講師イナゲが作った楽曲のパラデータをダウンロードすることができますので、ぜひそちらも合わせてご活用ください!
今回の教材曲:プロスペロー『MOB 〜この街のありふれた一人〜』
ドラムパートを構成する各トラックの内訳、Mix前の下準備を理解しよう!
ドラムパートを構成するトラック
冒頭でもお伝えした通り、ドラムパートは原則として複数のマイクで収録されます。
【オンマイク】
- キック
- スネア(トップ&ボトム)
- タム
- ハイハット
- ライド
【その他のマイク】
- オーバーヘッド
- キットマイク
- ルームマイク
まずは、各トラックがどのような内訳になっているかを見ていきましょう。
キック
キックのシェル(胴体部分)の内部に立てたオンマイクです。
キック内部から打音と胴鳴りの双方を収録しており、キックの輪郭と太さ(音圧)の両方を司っています。
(打音と胴鳴りを2本のマイクで別々に収録する場合もあります。)
キックのサウンド
スネア(トップ&ボトム)
スネアにはトップとボトム2本のマイクを使用します。
トップはスネアの打音と胴鳴りを、ボトムは主にスナッピーの音を収録します。
これら2本の音を混ぜて1つのスネアサウンドに仕上げていくわけですね。
スネアのサウンド(トップ)
スネアのサウンド(ボトム)
タム
複数のタムそれぞれに1本ずつのオンマイクが立てられます。
タムの数だけマイクが立てられるため、例えば2タム1フロアならば3本、1タム1フロアなら2本マイクで収録されるということですね。
いずれも、打音と胴鳴りがまとめて収録されています。
ハイタムのサウンド
フロアタムのサウンド
ハイハット
ハイハットにも1本のオンマイクが立てられます。
ハイハットの音は後述するオーバーヘッドマイクにも十分に含まれているため、ここではハイハットの打音や輪郭、キャラクターを収録する目的で使います。
ハイハットのサウンド
ライド
ハイハット同様、ライドの打音やキャラクターを収録したマイクになります。
ライド本体の音はオーバーヘッドにしっかり収録されているので、あえてライド専用のマイクを立てない場合も多いです。
ライドのサウンド
オーバーヘッド
ドラムの上部から全体をステレオで収録したマイクです。(別名「トップマイク」とも呼ばれます。)
その位置関係からシンバル類の音が最も大きく収録されますが、スネアやタムなどの太鼓類もしっかりと録れています。
ジャンルによっては、オーバーヘッドマイクを中心にドラムの音を組み立てることも少なくなく、ドラム全体の中でも重要なトラックとなっています。
オーバーヘッドのサウンド
キットマイク
ドラム前面から全体をモノラルで収録したマイクです。
キックからシンバルまで幅広い帯域の音をバランス良く収録しており、各オンマイク同士の音をつなぐ接着剤としての役割を果たしてくれます。
キットマイクのサウンド
ルームマイク
やや離れた位置から空気感を含む部屋鳴りの音を収録したマイクです。
ドラムのアンビエンスとして使用するほか、キットマイクの代わりにオンマイクの接着用として使用することもあります。
ルームマイクのサウンド
ドラムのマイキングについては、DPM Microphonesさんの動画が非常に有益だったのでここでご紹介しておきます。
ドラムMix前にやっておきたい下準備
ここからは、ドラムMixを始める前に事前に済ませておきたい下準備について解説していきます。
主に以下の2つになります。
- 不要なオーディオデータのカット
- ルーティング
不必要なオーディオデータのカット
まず初めにやっておきたいのが、不必要なオーディオデータのカットです。
生ドラムの場合、各マイクにカブリ(ブリーディング)が入っていることは以前エクスパンダーの解説記事でもお伝えした通りです。
カブリが入っていること自体は決して悪いことではないのですが、一方でカブリがあることでMix時にいくつか不都合が起きる場合があります。
【カブリによってもたらされるデメリット】
- トラックの音量を上げると他のパーツの音量まで大きくなってしまう
- 位相ずれの影響を受けやすくなる
これらの影響を最小限に止める意味で、あらかじめ不必要なカブリをカットしてしまうのも一つの手です。
この処理は、主にタムのトラックに対して行います。
タムは、キックやスネア、ハイハットに比べて登場回数が少なく、演奏時以外はカブリのみが収録されている状態です。
ですから、タムが休んでいる間のカブリは潔くカットして、実際にタムがなっている場所だけを取り出して使うのが良いでしょう。
もちろんタム以外のトラックでも、長時間にわたりカブリだけが再生されている場所がある場合はカットしてもかまいません。
逆に、オーバーヘッド、キットマイク、ルームマイクなど複数の楽器をまとめて収録したトラックはカットせずそのまま使いましょう。
ルーティング
次に、各トラックをルーティングしていきましょう。
ルーティングについては様々な考え方がありますが、ドラムはドラムだけでバスにまとめた方がのちのちMixがやりやすくなります。
ドラム全体にバスコンプをかけたり、全体をまとめてリバーブに送ったりといった処理が簡単にできるからです。
この時のコツとしては、キックを除くその他のトラックを一旦ひとつのバスにまとめ、さらにそのバスの出力とキックの出力をまとめたバスを作っておくと良いでしょう。
その理由は、キックを含む全ての音に一律のリバーブをかけてしまうとキックの音がぼやけてしまうためです。
ですから、キック以外をまとめたバスからリバーブへ送った上で、キックを含むドラム全体には軽めのルームリバーブを乗せる程度にしておくと良いでしょう。
リバーブについては、以後の記事でまた詳しくご説明します。
まとめ
というわけで、ドラムパートを構成するトラックの内訳と、Mixの下準備について解説しました。
とくに、各トラックの内容とその役割については、ドラムMixを行う上で欠かせない知識となります。
実際の音を聞きながら、それぞれがどのような特徴を持っているのかをしっかり理解しておいてくださいね!
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