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高度なテクニック②:鮮やかなオーケストレーションを作るグラデーションとコントラストについて

こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。

今日は、色彩感溢れるオーケストレーションを目指す上で意識したいグラデーションとコントラストについて解説していきます。

  • グラデーションとコントラストとは?
  • それぞれの手法における「強み」と「弱み」

高度なテクニックと銘打っているものの、今回お伝えするお話はオーケストレーションをする上で常に意識しておきたいことでもあります。

具体的なテクニックこそこれまでの実践の過程で無意識に使っているものばかりですが、今日お伝えすることを意識して実践できるか、そうでないかではオーケストレーションのコントロール力に明確な差が生まれます。

しっかり学んでいきましょう!

 

高度なテクニック②:鮮やかなオーケストレーションを作るグラデーションとコントラストについて

グラデーションとコントラストとは?

まずは、グラデーションとコントラストという言葉の意味について解説していきます。

本来この言葉は、以下のような意味で用いられます。

【グラデーション】
図や絵の中で色が滑らかに(かつ連続的に)変化すること

【コントラスト】
並べられた2つのもの同士の特徴が著しく異なること

いずれも視覚的な表現によく用いられる言葉ですが、オーケストレーションを行う上でもグラデーションとコントラストを意識しながらアレンジに取り組むことは極めて重要なのです。

上記2つの言葉は音楽用語として一般的に用いられている言葉ではありませんが、この言葉を用いることで理解が容易になると考え採用しました。

本カリキュラムでは、グラデーションとコントラストを以下のような意味合いで使用していきます。

【オーケストレーションにおけるグラデーション】
音色、強弱、楽器数、使う音域、テンポなどの音楽的要素を滑らかに変化させていくアプローチ

【オーケストレーションにおけるコントラスト】
音色、強弱、楽器数、使う音域、テンポなどの音楽的要素を瞬間的に大きく変化させるアプローチ

それぞれ以下の通りです。

 オーケストレーションにおけるグラデーション

様々な音楽的要素を滑らかに変化させながらアレンジしていくアプローチです。

例えば以下のような手段が考えられます。

  • pp(ピアニッシモ)から時間をかけてff(フォルティッシモ)に到達する
  • ソロから始めて少しずつ楽器を増やしながら最終的にフルオーケストラに到達する
  • スケールなど順次進行を中心に演奏する音域を徐々に変えていく
  • リタルダンド(だんだん遅く)やアッチェレランド(だんだん速く)を使って徐々にテンポを変化させる

 オーケストレーションにおけるコントラスト

様々な音楽的要素を瞬間的に大きく変化させながらアレンジしていくアプローチです。

こちらは、以下のようなアプローチが考えられますね。

  • pp(ピアニッシモ)の直後にいきなりff(フォルティッシモ)で演奏する
  • ソロパートで演奏をした直後にフルオーケストラで演奏をする
  • コントラバスで低音域のフレーズを演奏した直後にピッコロで高音域のフレーズを演奏する
  • 特定のタイミングでいきなりBPMや拍子を変えてシーンを切り替える

オーケストラは、「音色」「強弱」「楽器数」「音域」「テンポ」など、あらゆる音楽的要素において幅広い表現が可能な編成。

それらの要素を、

  • グラデーション的に用いるのか?
  • しっかりコントラストをつけるのか?

いずれかを選択しながら曲を構成していくことになります。

それぞれの手法における「強み」と「弱み」

グラデーションとコントラストという2つの対照的な手法には、それぞれ強みと弱みがあります。

それらを理解した上でオーケストレーションを行うことで、ご自身が目指すサウンドを実現する上で効果的な選択ができるようになるでしょう。

グラデーション手法の強み

まずは、グラデーションの強みから見ていきましょう。

グラデーションの強みは以下の2つです。

  • 長いスパンでの演出に向いている
  • 次のシーンへの期待感を演出しやすい
■ 長いスパンでの演出に向いている

グラデーションは、音楽に少しずつ変化をもたらすアプローチ。

したがって、長いスパンでじっくりとした演出を行うのに適しています。

以前ご紹介した『ボレロ』は、スタート〜終わりまでじわじわと音量を上げていき、最後は大迫力のサウンドで幕を閉じます。

これはまさに、音量におけるグラデーション的アプローチと言えるでしょう。

ラヴェル『ボレロ』


■ 次のシーンへの期待感を演出しやすい

グラデーションは、リスナーの期待感や高揚感を煽れるのも大きな強みです。

カリキュラムの教材曲を例にするならば、イントロ後半のファンファーレに入る前に、全体の音量や音域を広げることで助走的なフレーズを設けています。

もちろん、助走なしでいきなりファンファーレに入る(=コントラスト的アプローチ)のもアリですが、助走を設けることで「いよいよ始まるぞ!」という期待感と高揚感を持たせることができます。

試しに助走なしのバージョンも用意しましたので、わずか2小節の有無が曲に与える影響を感じてみてください。

助走フレーズなし

グラデーション手法の弱み

グラデーションの弱みは以下の2点です。

  • サプライズ的なアプローチは苦手
  • 展開を読まれやすく無難になりがち
■ サプライズ的なアプローチは苦手

強みと弱みは表裏一体。

グラデーションはなめらかな変化をもたらす分、意表をついたアプローチは苦手です。

■ 展開を読まれやすく無難になりがち

なめらかな変化ゆえに次の展開が読まれやすいのも弱点。

「今までの流れ的に次はきっとこうくるだろう」というのが想像がしやすいわけですね。

そんなときは、コントラスト的な手法とうまく組み合わせて、いい意味でリスナーの期待を裏切るような演出を考えたいところです。

コントラスト手法の強み

続けてコントラストの強みと弱みを見ていきましょう。

まずは強み2点をご紹介。

  • とにかくメリハリがつく
  • 大胆な場面転換を演出できる
■ とにかくメリハリがつく

メリハリある展開を作る上でコントラスト的なアプローチは欠かせません。

例えばストラヴィンスキーの『火の鳥』という曲では、静かなシーンが続いた後に突然のフルオーケストラでリスナーの度肝を抜いてきます。

僕はコンサートで初めてこの曲を聞いたとき、静かな部分でウトウトしていたら見事にこのフルオーケストラで目が覚めました(笑)。

ストラヴィンスキー:『火の鳥』

※非常に小さい音からフルオーケストラの大音量に切り替わるので音量の設定にご注意ください。


■ 大胆な場面転換を演出できる

メリハリにも通じるところがありますが、大胆な場面転換もこの手法の強みです。

例えばリムスキー・コルサコフの『シェヘラザード』第4楽章では、1小節を2拍で捉える部分と3拍で捉える部分とに分かれたポリリズム的な場面があったり、リズムをスパッと切り替えて演奏する場面があったりと、コントラスト的手法が光る楽曲となっています。

リムスキー・コルサコフ:『シェヘラザード』第4楽章

2拍子と3拍子が切り替わりながら曲が展開していきます。

3拍子のパートでは金管が重厚なフレーズを演奏するオーケストレーションになっていて軽快な2拍子との対比になっているわけですね。

35:19〜からは2拍子のリズム伴奏に3拍子のメロディが乗るポリリズム的な構造が面白いです。



コントラスト手法の弱み

コントラストの弱みは以下の通りです。

  • 乱用するとチグハグな印象に
■ 乱用するとチグハグな印象に

刺激的なアイディアを取り入れやすいコントラスト的アプローチですが、計画性もなくアイディアを詰め込んだだけではチグハグな印象になるだけです。

全体の構成を踏まえた上で、計画的に使用することが重要です。

まとめ

というわけで、オーケストレーションにおけるグラデーションとコントラストのお話をお届けしました。

冒頭でもお伝えした通り、いずれも音楽制作において当たり前のように使う手法。

だからこそ、構成力が重要なオーケストラ曲ではことさらに意識していただきたい考え方となります。

ぜひ以後の制作の際に思い出しながら取り組んでいただければ幸いです。

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