オーケストレーションの参考にしたいクラシックの名曲をご紹介!
こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。
今日は、オーケストレーションの参考にしたいクラシックの名曲をご紹介していこうと思います。
- クラシックから選曲する理由
- ド派手なオーケストレーションの参考にしたい名曲
- 繊細なオーケストレーションの参考にしたい名曲
- 上級者にオススメの名曲
今回はいわゆる「クラシック」と呼ばれるジャンルの楽曲から参考曲をチョイスしました。
その理由は後述するとして、それぞれの楽曲の簡単な解説もしておりますので、ぜひ楽しみながらお読みいただければ幸いです。
オーケストレーションの参考にしたいクラシックの名曲をご紹介!
クラシックから選曲する理由
今回ご紹介する楽曲は、全てクラシックの名曲から選んでいます。
その理由は以下の通りです。
- オーケストレーションの基本が詰まっている
- 純粋なオーケストレーションの技術を学べる
- 譜面が比較的容易に入手できる
オーケストレーションの基本が詰まっている
参考曲を探すときには「自分の好きな曲をお手本にしよう!」と言いたいところですが、ここはあえて「まずはクラシックを参考にしよう」とお伝えさせていただきます。
クラシック作品にはオーケストレーションを学ぶにあたって大切な基本がたくさん詰まっています。
現代の作曲家が生み出したオーケストラ作品だって、どこかしらでクラシックの影響を受けているものです。
古風なイメージを持たれがちなクラシック曲ですが、じつはゲームや映画の音楽で使われてそうなキャッチーなものもたくさんありますので、まずはクラシックを中心に参考曲を探しましょう!
純粋なオーケストレーションの技術を学べる
現代の作曲家が作ったオーケストラ作品は、打込みやミキシングなどDTM環境ありきで作られたものが多く存在します。
その場合、生演奏では実現しにくいバランスでも簡単に再現できてしまうため、純粋なオーケストレーションの学習には不向きです。(とくに海外の映画音楽はその傾向が顕著です。)
クラシック作品は、DTMはおろか、EQやコンプレッサーといったエフェクト類でさえ存在しないような時代に生まれた作品が大半を占めます。
つまり、純粋な曲のアレンジ(=オーケストレーション)を学ぶにはクラシックが最適ということなんですね。
楽器の重ね方や組み合わせの関係性を見る上で、クラシック作品は非常に優れた参考資料になるでしょう。
譜面が比較的容易に入手できる
クラシック作品の多くはすでに著作権が切れているものが多く、譜面(スコア)を容易に入手することができます。
中でも有名なのが「IMSLP」というサイトで、作曲家や曲名で検索することで楽譜ファイルを無料ダウンロードすることができるスグレモノ。
一方現代の楽曲は、作者がご存命だったり、仮に亡くなっていても没後50年経過していない場合も多く、譜面が出版されていても総じて高額になる傾向があります。(それ以前にそもそも譜面が出版されていないことも。)
そういった事情から見ても、クラシックを参考にするのはお手軽と言えます。
ド派手なオーケストレーションの参考にしたい名曲
ここからはいよいよ、オーケストレーションの参考にしたい名曲をご紹介していきましょう。
まずはド派手なオーケストレーションの参考にしたい名曲から。
※動画下部にご用意した楽譜は重要な要素のみを抜粋したもので、曲中の全ての音が記譜されていない場合もあります。
グリーグ:交響舞曲
冒頭から非常に華やかなオーケストレーションを聞くことができます。
木管の装飾フレーズに導かれるように、金管とストリングスのアクセントを伴ったホルンのファンファーレが登場。
物語の幕開けをイメージさせるような華々しい雰囲気を作り出しています。
このように、木管の装飾フレーズをバックに金管によるファンファーレが演奏されるスタイルは、現代の楽曲でもよく使われる手法です。
エルガー:行進曲第1番
日本では『威風堂々』の名前で知られる行進曲ですが、今回はあえて冒頭部分のオーケストレーションにフォーカスしてみましょう。
ド頭のユニゾン主体の力強いフレーズもさることながら、0:16〜からの伴奏パートの抜き差しにご注目ください。
ストリングスアンサンブルの記事で、あえて伴奏を抜くテクニックを解説したのを覚えてらっしゃいますか?
そのようなテクニックを効果的に散りばめて、適度な緩急をつけた飽きさせない工夫が施されています。
通常の2管編成にコルネット(トランペットの亜種)なども加わり少し楽器数が増えていますが、楽器の組み合わせ方自体は基本に忠実に、相性の良い組み合わせを意識して役割分担されています。
ビゼー:カルメンより『前奏曲』
カルメンと言えば、動画の9:30付近から聞くことができる『闘牛士』が有名ですが、今回はあえて『前奏曲』をピックアップしました。
イントロ終了後、スパニッシュテイストを感じる印象的な3/8拍子が始まります。(1:13〜)
フルオーケストラを用いた迫力あるオーケストレーションですが、1小節ごとにタンバリン以外の打楽器やホルンを抜くことで、メリハリが効いたオーケストレーションが施されています。
その後も、ピチカートによる伴奏の上で演奏される木管ソロや各セクションごとの掛け合いなど、シンプルながらも効果的なオーケストレーションを味わうことができます。
ショスタコーヴィッチ:交響曲第5番第4楽章
ティンパニに導かれるように演奏される、金管のド派手なファンファーレが印象的なこの4楽章。
序盤とクライマックスにかけては、ユニゾンを効果的に使った非常にパワフルな金管が際立つオーケストレーションになっています。
どのパートがどんな役割を担当しているのかわかりやすいオーケストレーションで、シンプルながら力強いアレンジをするためのヒントがたくさん詰まった名曲です。
繊細なオーケストレーションの参考にしたい名曲
次に、繊細なオーケストレーションを施す場合に参考にしたい名曲をご紹介します。
ドヴォルザーク:交響曲第9番『新世界より』第2楽章
第4楽章とともに『新世界より』を代表する楽曲として有名な第2楽章。
雄大な伴奏に美しいイングリッシュホルンのソロが映える名曲です。
メロディと伴奏の役割が明確にわかれたホモフォニーを主体として曲が展開されるため、オーケストレーション自体はシンプル。
しかしながら、伴奏における楽器の重ね方や和声の音使いなど、美しく繊細なアプローチをするためのテクニックが曲全体に散りばめられています。
チャイコフスキー:ロミオとジュリエット
曲の序盤(5:40あたりまで)は木管・ホルン・ストリングスを中心とした繊細で美しい和声が展開されます。
音量が控えめなアレンジにおける木管と弦楽器の絡ませ方などは非常に参考になるでしょう。
こちらの譜面は1:16からのもの。
ヴィオラとコントラバスのベースラインに支えられて高音域でフルートとクラリネットがハーモニーを、そしてチェロの高音域がメロディ的なフレーズを奏でます。
あえて音の間隔を開けて、ヴァイオリンではなくチェロで演奏をすることで虚ろな印象の中に一定の緊張感が感じられるオーケストレーションになっています。
また、パワフルなオーケストレーションの参考にも最適で、6:41付近から展開される管楽器のキメとその合間をストリングスが縫うようなオーケストレーションも非常にかっこいいですね。
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
こちらは、金管楽器はホルンが2本のみ、オーボエも1本だけと、2管編成と呼ぶにはやや控えめな編成の曲です。
しかし、全編を通して美しく繊細な表現に満ちた巧みなオーケストレーションを堪能することができます。
「オーケストレーションの魔術師」との呼び声も高いラヴェルの楽曲は、その技術レベルの高さから初心者にはオススメできない楽曲も多いのですが、この曲に限っては、とくに序盤において比較的シンプルなオーケストレーションでまとまっているのでご紹介しやすいものとなっています。
中盤以降はストリングスのディヴィジも多くなり、より複雑なオーケストレーションになっていくものの、木管同士の絡ませ方、ストリングスの美しいボイシングなどは十分に参考になるでしょう。
スメタナ:連作交響詩『我が祖国』より第2曲『モルダウ(ヴルタヴァ)』
湧き上がるようなフルートソロに始まり、ストリングスと木管で奏でられる叙情的なテーマが非常に印象的な楽曲。
冒頭のフルートでは2つの楽器が交互にフレーズを演奏していますが、先行するパートの最後の音と、後に演奏するパートの最初の音を被らせることでフレーズのつなぎ目を滑らかにしています。
このような複数のパートをつなげて演奏させるテクニックも、オーケストレーションにおいては定番となっておりますので、ぜひ参考にして欲しいポイントです。
その後は、美しく雄大なメロディとその後ろで演奏される16分音符の波打つような伴奏との対比が美しいですね。
このように、スケールによる伴奏は楽曲にうねりを生み、立体感をもたらしてくれます。
白玉やリズムを刻むだけの伴奏に飽きてきたらこういったアプローチを導入してみるのもいいでしょう。
ちなみにタイトルの『モルダウ(独)』とはチェコを流れる川のこと。
「ヴルタヴァ」は、それをチェコ語に言いかえた言葉です。
上級者にオススメの名曲
リムスキー・コルサコフ:シェヘラザード
これまでにご紹介した楽曲はいずれも参考ポイントを抜粋して紹介してきましたが、この曲に限っては全編通して参考になる楽曲です。
リムスキー・コルサコフは、先ほどご紹介したラヴェルの師匠にも当たる人物。
彼もまたオーケストレーションの名手と言われ、実際に管弦楽法の本を遺しています。
第1楽章は、木管、ストリングス、ホルンによる美しい絡みが随所に見られ、色彩感溢れるオーケストレーションの参考になるでしょう。
第2楽章は、バスーンのソロで提示されたテーマを使って楽曲が発展していきます。1つのメロディから様々なオーケストレーションに発展していく様を味わいながら見てみると楽しいですね。
第3楽章は、パーカッションがリズムを刻みながら軽快なモチーフが展開されるシーン(25:52〜)は、楽器数が少ない状態から徐々に賑やかになっていく変化に注目して聴いてみるといいでしょう。
第4楽章の『バグダッドの祭り』はリズミカルで派手なオーケストレーションが展開され、聞き応え抜群。
2管編成のポテンシャルを存分に発揮した名曲だと感じます。
全楽章合わせると50分近い大曲となっており鑑賞にもそれなりに時間を要しますが、宝探しをするような気持ちで様々なオーケストレーションテクニックを掘り出してみてください。
まとめ
というわけで、オーケストレーションの参考にしたいクラシックの名曲について解説しました。
クラシック作品には数え切れないほどの名曲が存在し、オーケストレーションの参考になるものも少なくありません。
今回ご紹介した楽曲を足がかりに、広大なクラシックの世界を掘り下げてみてはいかがでしょうか?
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