ストリングスアンサンブル:クラシカルなストリングスアレンジの手順と実践テクニック!
こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。
今日は、ストリングスセクションのアンサンブル作りについて解説していきます。
オーケストレーションカリキュラムらしく、「クラシカルなストリングスアレンジ」の手順と実践テクニックについてレクチャーしていきます。
- クラシカルなストリングスアレンジの手順
- 各手順の実践例
- コントラバスの取り扱い
- 単調なアレンジを防ぐ小技
ストリングスを制するものはオーケストラを制するといっても過言ではないほど重要なセクション。
様々なアレンジスタイルが考えられますが、初心者の方でも簡単に取り組めるよう、今回は1つの型に絞ってステップ化しました。
その他のストリングスアレンジについては「ストリングスアレンジ&モックアップカリキュラム」の方でも詳しく解説しておりますので、合わせてご活用ください。
クラシカルなストリングスアレンジの手順と実践テクニック!
クラシカルなストリングスアレンジの手順
ストリングスアレンジ&モックアップカリキュラムでご紹介している「ストリングスアレンジ5つの型」。
その中でも、最も古典的で王道ともいえるのが「ホモフォニー型」です。
旋律と伴奏がくっきりと分かれたこの型。
今回はそちらをよりシンプルに、オーケストレーション初心者の方でも習得しやすいよう解説していきます。
まずは、アレンジ手順をご覧ください。
- メロディとコードを用意する
- メロディを割り当てるパートを決めて打ち込む
- ベースを割り当てるパートを決めて打ち込む
- 残りのパートでハーモニーを打ち込む
ひとつずつ解説していきます。
1.メロディとコードを用意する
まずは、オーケストレーションの材料となるメロディとコードを準備しましょう。
今回はこのような楽曲を用意してみました。
これを元にアレンジを進めていきましょう!
2.メロディに割り当てるパートを決めて打ち込む
メロとコードが決まったら、メロディを割り当てるパートを決めていきます。
今回はシンプルに1st Violinに割り当てることにしましょう。
もちろん2nd Violin以下すべてのパートでメロディの割り当てが可能ですが、中低域でのメロディ演奏はアレンジがやや難しくなります。
不慣れなうちは1st Violinがメロディ、それ以外は伴奏というスタイルで練習していくとよいでしょう。
3.ベースに割り当てるパートを決めて打ち込む
次に、ベースを割り当てるパートを決めます。
こちらもシンプルにチェロに決め打ちで割り当ててしまいましょう。
この時、なるべく1st Violinとの間に禁則が出来ないように作っていくことが重要です。
和声学におけるの禁則については以下の記事をご覧ください。
ちなみに、ベース担当といえばコントラバスですが、そちらの用法については後ほど改めて解説していきます。
4.残りのパートでハーモニーを打ち込む
メロディとベースの割り当てが完了したら、2nd ViolinとViolaを使ってハーモニーを打ち込んでいきましょう。
各楽器の音域に気をつけながら、密集配置または開離配置のいずれかでコードトーンを配置していきます。
ハーモニーを割り当てる際に、気をつけたいポイントは以下の4点です。
- ハーモニー上声部とメロディの間隔は1オクターブ以内に収める
- ハーモニー下声部とベースの間隔は1オクターブと5度以内に収める
- ハーモニー2声部とベースのみでコードトーンが完結するよう心がける
- 全声部間に禁則(連続)が発生しないよう心がける
1と2は、音の分離を防ぎまとまりの良いアンサンブルを作るために有効です。
あえてメロディと伴奏の音域を極端に離すアレンジ方法もありますが、不慣れなうちは上記インターバルを守ったほうが無難ですね。
3は、メロディの動きに左右されることなく安定したコードの演奏を実現するために有効となります。
4は、メロディとハーモニーが同時に発音されているタイミングで禁則が発生していないかを参照すると良いでしょう。
ここまでの過程出来上がったアレンジが以下の譜例です。
コントラバスの取り扱い
コントラバスはオーケストラの最低音域を担う重要なパート。
チェロとオクターブユニゾンを施すことで、サウンドの重厚感をプラスすることができます。
この時注意すべきポイントとしては、コントラバスの音域はチェロの完全にオクターブ下ではないということです。
単にチェロをオクターブ下げただけでは、コントラバスの最低音「E」を超過してしまう場合がありますので注意しましょう。
コントラバスをピンポイントで使用する
コントラバスは楽曲の重厚感をもたらしてくれますが、常時このパートが鳴っていると重苦しく感じることも。
とくに、今回の曲のように軽快な印象を持たせたい楽曲ではその影響が顕著です。
したがって、コントラバスの出番を調整することで曲の重さをコントロールしていくことも立派なオーケストレーションの1つです。
コードチェンジのタイミングやその直前など、リズム的にもハーモニー的にも目立つ部分でのみコントラバスを配置していきます。
この時、チェロはロングノート、コントラバスはスピッカートやピチカートなどのショートノート系といった具合に演奏法を変えてみるのも良い方法ですね。
単調なアレンジを防ぐ小技
ここからは、単調なアレンジを防ぐために有効なオーケストレーションの小技をご紹介していきます。
- メロディのリズムに寄り添う
- 途中で伴奏を抜く
それぞれ詳しく解説していきます。
メロディのリズムに寄り添う
メロディと伴奏がはっきり分かれた「ホモフォニー型」アレンジでも、部分的にメロディと伴奏のリズムを揃えることでアレンジにメリハリをつけることができます。
以下のような形になります。
ここにさらにコントラバスを追加して重厚感を持たせることで、その対比を強調することができます。
楽曲冒頭ではコントラバスは完全にお休み。
終盤の全パートがメロディのリズムに寄り添うタイミングでコントラバスを参加させることで、そのメリハリが際立ちます。
途中で伴奏を抜く
あえて伴奏を抜くことでメロディを強く引き立たせるテクニックです。
先ほど解説した「メロディのリズムに寄り添う」手法とは逆のアプローチですが、狙いは同じ。
ギャップ・対比をつけることでアレンジに立体感やメリハリを出すことができます。
まとめ
というわけで、クラシカルな王道ストリングスアレンジについて詳しく解説しました。
後半でご紹介したテクニックは、ストリングスアンサンブルだけではなく、管楽器やオーケストラ全体のアレンジでも使えますのでぜひ覚えておいてください。
また、今日ご紹介したテクニックは極めて初歩的なアレンジとなります。
さらにストリングスアレンジを突き詰めたい!という方は、ぜひストリングスアレンジ&モックアップカリキュラムもチェックしてみてくださいね!
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