オーケストラアレンジの土台となる「スケッチ」を作ろう!
こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。
今日からはいよいよ、オーケストレーションの実践に入っていきましょう!
まずはファーストステップ、スケッチ作りについて解説していきます。
- スケッチの目的
- スケッチにピアノがオススメの理由
- スケッチを作る上でのポイント
これまで様々なカリキュラムでも解説してきましたが、楽曲びスケッチを予め用意しておくことは非常に重要です。
とくに、たくさんの楽器を取り扱うオーケストレーションにおいては必須の作業といっても過言ではありません。
その重要性やポイントを解説していきますので、しっかり理解していきましょう!
オーケストラアレンジの土台となる「スケッチ」を作ろう!
スケッチの目的
冒頭でもお伝えした通り、オーケストレーションをする前には必ずスケッチを用意することから始めましょう。
その理由は以下の2つです。
- オーケストレーションに集中するため
- 全体の構成を俯瞰できるようにしておくため
オーケストレーションに集中するため
楽曲制作の行程は、大きく2つに分かれます。
- メロディやコードなど楽曲の根幹部分を決定する「作曲」のフェイズ
- それらを肉付けしていく「編曲」のフェイズ
そのうち、作曲だけを先に済ませてしまうのがスケッチとなります。
とくにオーケストラの場合は扱う楽器も多く、アレンジにかかる手間や試行錯誤も多くなります。
ですから、楽曲の根幹部分は先に決めてしまい「あとはオーケストレーションに集中するだけ!」という状態を作ることを強くオススメします。
それにより、1つ1つのステップに集中することができるため、作業効率も格段にアップします。
ピアノによるスケッチ例
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スケッチを元に組み上げたオーケストラ
フルスコアのダウンロードはこちら
全体の構成を俯瞰できるようにしておくため
前項に共通する部分もありますが、スケッチを行うことで楽曲の全体像やその流れを俯瞰的に把握することができます。
とくにオーケストラがもつ圧倒的なダイナミクスレンジと、音色・音域の幅広さを活かしきるためには、楽曲全体をどのように演出するのかをしっかりと吟味しながらアレンジする必要があるでしょう。
先にスケッチを作っておくことで、メリハリあるドラマティックなオーケストレーションを施すための良い指針となります。
絵を描く際にも先にデッサンから始めるように、曲の骨子となる部分を先に作っておくことでスムーズにオーケストレーションを進めることができるわけですね。
スケッチについては、以下の記事でも詳しく解説しておりますのでぜひ合わせてご活用ください。
スケッチにピアノがオススメな理由
オーケストラアレンジのスケッチはピアノで作ることをオススメしています。
理由は以下の通りです。
- オーケストラの全音域をカバーできる唯一の独奏楽器
- 演奏表現が多彩で大きな制限がない
オーケストラの全音域をカバーできる唯一の独奏楽器
ピアノは、オーケストラが持つ幅広い音域をたった1台で賄うことができる唯一の独奏楽器。
この特徴は、シンセサイザーなどの電子楽器を除いてはピアノしか持ち合わせていない大きな利点です。
作曲過程でよく用いられる楽器としてギターが挙げられますが、ギターではオーケストラの全音域をカバーすることはできず、それを補えるだけの知識やイメージの具体性が必要になります。
あらゆる音域に渡って不自由なくイメージを具現化できるピアノは、オーケストラのスケッチに最適な楽器です。
演奏表現が多彩で大きな制限がない
ピアノはどんな音域においても多彩な演奏表現が可能で、大きな制限がない点も特徴です。
音域による演奏表現や音質に大きなムラがない点は、スケッチにおいて重要な長所だといえます。
大抵のアコースティック楽器は音域の両端での演奏が難しいことを考えると、ピアノがいかに優れた楽器なのかがわかりますね。
また、コードのヴォイシングが限定的なギターに比べて、和音の自由度が高いことも大きな強みとなっています。
スケッチを作る上でのポイント
ここからは、実際にスケッチを作る上で意識しておきたい3つのポイントについて解説していきます。
- メロディ&コード+αで考える
- オーケストラ楽器のイメージを持ちながらフレーズを考える
- ピアノで演奏可能である必要はない
順に解説していきます。
メロディ&コード+αで考える
スケッチにはどの程度の情報を盛り込むべきか?
結論からいうとメロディとコードさえ完成していれば最低限の体裁は整います。
さらに、可能であれば楽曲の基本リズムまで盛り込んでおくとアレンジしやすいでしょう。
また、スケッチ段階で思いついた各種アイディア、伴奏フレーズ、オブリガートは積極的に盛り込んでおくとベターです。
オーケストラには、メロディとコード以外の役割を持った音も多数登場しますので、そのネタとなるアイディアを事前に盛り込んでおくことで、オーケストレーション時に大いに助けになります。
気に入らなければボツにすればいいだけなので、スケッチには思いついたものを一通り組み込んでおくといいですね。
メロディ&コード+αで構成したスケッチ
オーケストラ楽器のイメージを持ちながらフレーズを考える
ピアノによるスケッチの段階でも、できる限りオーケストレーション時のイメージを持ちながらフレーズを考えていきましょう。
例えば、メロディを考案する段階で
「このメロディはストリングスっぽいな〜」
「これはフルートに吹かせたい!」
「ここは低音楽器中心で…」
といった具合に、ぼんやりとでもそのフレーズを演奏させたい楽器をイメージしておくのは大事です。
とくに、ピアノの演奏が得意な人ほどこのポイントを強く意識しておきましょう。
普段ピアノ曲をバリバリ弾きこなしている方ほど、思いつくメロディがピアノ曲らしいフレーズになってしまいがち。
あくまで、オーケストラ楽器での演奏をイメージしながらその楽器らしいフレーズを考えることが大事です。
ピアノ曲っぽくなってしまったメロディ
オーケストラらしいメロディ
ピアノで演奏可能である必要はない
もう1つ重要なポイントは、ピアノでの実現性(=演奏可能かどうか)は意識しなくても良いということです。
スケッチはあくまでメモ的なものかつピアノのための作品ではないので、必ずしも2本の腕(=10本の指)で演奏できるものである必要がありません。
例えば、オーケストラ全体で和音を鳴らそうと思ったら10個以上の構成音を積み上げることだって少なくありません。
当然ピアノ単体での演奏は不可能ですが、オーケストラならば十分実現可能。
ピアノでの実現性は無視しても全く問題ないわけです。
ピアノでは演奏不能だがスケッチとしてはOKな例
ちなみに、オーケストラ編成の楽譜には、すべてのパートが個別に書かれた「フルスコア」の他に、おおよそ3段程度の譜表にまとめられた「コンデンススコア」というものがあります。
ピアノスケッチはこのコンデンススコアを作るイメージで行うとよいでしょう。
上の資料がまさにコンデンススコアの一例となっています。
まとめ
というわけで、楽曲のスケッチについて詳しく解説しました。
たかがスケッチと侮ることなかれ!ここをしっかり取り組めるか否かでその後の作業のスムーズさが段違いになります。
オーケストレーション学習段階においては、自分で曲を用意してもいいですし、好きな曲のフレーズをもとに練習するのもOKです。
必ずスケッチを用意して次に臨みましょう!
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