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金管楽器の楽器法⑤:金管楽器の演奏法とアーティキュレーションを理解しよう!

こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。

今日は、金管楽器の主な演奏法について解説していきます。

  • 金管と木管の演奏法の違い
  • 手の技術(運指にまつわる演奏技法)
  • 口の技術(出音を操る演奏技法)
  • 金管楽器の主な奏法

金管楽器は意外にもシンプルな構造。

それゆえに、運指なども比較的覚えやすいので詳しく解説していきます。

その他、金管楽器ならではの個性的な奏法も登場しますので、バッチリ学んでいきましょう!

 

金管楽器の楽器法⑤:金管楽器の演奏法とアーティキュレーションを理解しよう!

金管楽器の楽器法⑤:金管楽器の演奏法とアーティキュレーションを理解しよう!

金管と木管の演奏法の違い

まずは、金管と木管それぞれの演奏法の違いを確認しておきましょう。

同じ管楽器でも、その演奏スタイルはだいぶ違います。

発音方法

  • 木管:リードを振動させて発音
  • 金管:唇を振動させて発音

手の使い方

  • 木管→両手で運指を行い、同時に楽器を支える。
  • 金管→片手で運指(orスライドのコントロール)を行い、もう片方の手で楽器を支える。

また、木管はその発音をリードに託しているのに対し、金管は自分自身の唇を使って発音します。

金管は自分自身の体を常時動かすことになるため、木管に比べてバテやすいという特徴もあります。

オーケストレーションをする際には、金管奏者が疲弊しないよう適度にお休みを設けることも重要です。

手の技術

ここからは、例によって「手の技術」「口の技術」に分けて解説していきます。

まずは「手の技術」から。

■ 手の技術(運指)について

まずはホルントランペットチューバなど、バルブによる運指を行う楽器についてみていきましょう。

ピストンやロータリーなど、バルブの挙動はいずれの楽器も同じですので、今回はトランペットを例に解説します。

第1〜第3ピストンの挙動は以下の通りです。

  • 第1ピストン→元より1音低い管の長さになる(元がCならBbの長さに)
  • 第2ピストン→元より半音低い管の長さになる(元がCならBの長さに)
  • 第3ピストン→元より1音半低い管の長さになる(元がCならAの長さに)

さらに詳しく見てみましょう。

トランペットの「中央ド」の音を鳴らしたい場合はどのピストンも押さえない状態(開放)で演奏します。

その状態から、以下のような形で音程の変更を行います。

  • 半音下の「シ」を鳴したい場合:第2ピストン
  • 1音下の「シb」を鳴らしたい場合:第1ピストン
  • 1音半下の「ラ」を鳴らしたい場合:第3ピストン、または第1+第2同時押し

これらを組み合わせることで、様々な音程を得ることができます。

3つのバルブ全てを用いる場合は、最大で減5度下まで音を下げることができますね。(半音+1音+1音半=減5度)

以下の図は、開放状態から減5度下までの全ての運指をまとめたものです。

以前ご紹介した1つの指使いで様々な倍音を得られる仕組みと上記指使いを組み合わせることで、あらゆる音程へのアクセスを可能としているのです。

ちなみに一部の楽器には第4ピストンが付いていることがあります。多くの場合、これを押さえることで完全4度下の音程を得ることができます。音域を拡張したり、演奏の難易度を下げるために使用します。

■ トロンボーンの手の技術について

トロンボーンはスライドで音程を操る仕組みのため、一見すると他の金管楽器と全く異なる仕組みに見えます。

しかし、管の長さを変えて音程を変更するということに変わりはありません

実際、スライドを伸ばすことで得られる最大の音程差は減5度。

バルブ楽器における「第1〜第3ピストンを全て押した時」と全く同じなのです。

各種トロンボーンにおけるスライドの仕組みについて詳しく解説していきます。

テナートロンボーン

テナートロンボーンの音域とポジションをまとめた図を用意しました。

スライドが一番手前にある状態を「第1ポジション」と呼び、そこからポジションが1つ下がるのと共に半音ずつ音程が下がっていきます。

例えば、第1ポジションの第3倍音「Bb2」から1ポジションずつ下がっていくことで、以下の音程を得ることができるわけです。

  • 第2ポジション=「A2」
  • 第3ポジション=「Ab2」
  • 第4ポジション=「G2」
  • 第5ポジション=「Gb2」
  • 第6ポジション=「F2」
  • 第7ポジション=「E2」

この仕組み上、第7ポジション第2倍音「E1」と、第1ポジション第1倍音「Bb0」との間の音は発音することができないため、テナートロンボーンの最低音は「E1」までとなっています。

ちなみに、各ポジションの第1倍音は「ペダルトーン」と呼ばれ、第1ポジションで演奏できる「Bb0」以外はほとんど使われません。

(上図第1倍音の第4ポジション以下、()でくくっている音は発音が極めて困難な音です。)

テナーバストロンボーン

テナーバストロンボーンは、テナートロンボーンで演奏不可能だった「B0〜Eb1」までの空白を埋めるために開発されました。

「F管」のロータリーを用いることで管長をプラスし、物理的に発音不可能だった上記音域の発音を可能にしたわけですね。

ロータリーを押下すると、トロンボーン本来のキーである「Bb」から完全4度分の長さが加わることになります。

つまり、ロータリーを使うだけで第6ポジションまで移動したのと同じ効果を得ることができるのです。

これにより音域が拡張されるとともに、長距離のスライド移動を簡略化し演奏困難なフレーズを最小限にとどめています。

ちなみに現代では、オーケストラや吹奏楽の1番2番トロンボーンにはテナーバストロンボーンが用いられますので覚えておきましょう。

バストロンボーン

バストロンボーンの音域はテナーバストロンボーンとほぼ同じ。

スライドの取り扱いも原則同じものとなりますので割愛します。

口の技術

こちらは木管楽器同様、キモとなるのは「タンギング」の技術です。

特に金管は、木管と比べてタンギングを用いた歯切れのいいフレーズを求められる機会が多くなります。

輝かしいファンファーレや、切れ味抜群のリズム・コードバッキングなど、金管ならではの表現には欠かせないテクニックです。

木管同様「ダブルタンギング」「トリプルタンギング」も用いられます。

タンギングでの演奏では、以下のような傾向が見られます。

  • 音域の両端(最低音域・最高音域)ではそれ以外の音域に比べて高速での演奏が困難になる
  • ホルン、チューバに比べてトランペット、トロンボーンの方がよりくっきりしたサウンドを持っている

金管楽器の主な奏法

最後に、金管楽器の主な奏法について見ていきましょう。

以下の順に解説をしていきます。

  • ロングノート系
  • ショートノート系
  • トロンボーングリッサンド
  • ミュート

■ ロングノート系

木管同様、楽器に長く息を吹き込みながらその間に運指(orスライド)をコントロールして音程を変えるテクニックです。

以下のようなものがあります。

  • レガート:音をつなげて演奏する。その間タンギングはせず、一息で演奏する。
  • トリル:長2度または短2度の音程を高速で往復する。
  • ゲシュトップ:ホルン特有の奏法。右手をベル内に強く押し込み、ピリッとした金属音を得る。
  • フラッター:巻き舌しながら演奏する。

レガート

トリル

ゲシュトップ

フラッター

■ ショートノート系

ショートノート系については、木管楽器と全く同じものと考えて差し支えありません。

スタッカート

ダブルタンギング

トリプルタンギング

■ トロンボーングリッサンド

トロンボーンのグリッサンドは唯一無二の演奏効果を持っていますが、それなりに制限も多い奏法です。

ここではトロンボーングリッサンドが演奏できる範囲やルールを解説していきます。

とくに気をつけるべきポイントは以下の2つです。

  • グリッサンドで動ける音程の幅は減5度まで
  • 違う倍音列をまたぐグリッサンドは出来ない

グリッサンドで動ける音程の幅は減5度まで

前述の通り、第1ポジションから第7ポジションまでで変化する音程の幅は減5度。

当然、その長さがグリッサンド可能な最大幅となります。

違う倍音列をまたぐグリッサンドはできない

グリッサンド可能なのは、同じ倍音に属する音程のみです。

先ほどご紹介したトロンボーンのポジションと音域対応表に記載している縦列の範囲であれば自由にグリッサンドが可能です。

■ ミュート

金管楽器は「ミュート」と呼ばれる特殊な装置をベルに取り付けて演奏を行う場合があります。

それを「ミュート奏法」と呼び、クラシックはもちろんジャズやポップスでも頻繁に用いられます。

とりわけミュートを使用する機会が多いのがトランペットとトロンボーンです。

なお、ミュートの着脱に関する指示は以下のように記譜します。

  • ミュート装着を指示 =「Con Sordino(コン・ソルディーノ)」
  • ミュートを外す指示 =「Senza Sordino(センツァ・ソルディーノ)」

一口に「ミュート」といってもその種類は様々。

その名の通りいずれも音量を押さえる効果がありますが、その種類によって様々な音色が得られます。

  • ストレートミュート:比較的音色のクセが少ない正統派ミュートです。
  • カップミュート:文字通りカップ状のミュートです。フィルターをかけたようなこもった音色に。
  • ハーマンミュート:ホルンのゲシュトップに似た金属質なサウンドに。マイルス・デイヴィスによる使用が有名。

奏者さんに指示する場合は、先ほどの「Con Sordino」に加えて、ミュートの種類も書いておくとよいでしょう。

(単に「Con Sordino」とだけ記述した場合はストレートミュートを指すことが多いです。)

様々なミュートを使ったトランペットのサウンド

※動画内に登場するミュートのうち、1&2つ目はストレートミュート、3つ目はカップミュート、4つ目はハーマンミュートとなります。

まとめ

というわけで、金管楽器の主な演奏法について解説しました。

楽器の機構を活かした独自の奏法も多く、それぞれの個性が感じられますね。

このような楽器の強みを活かした演奏法を取り入れることで、多彩なオーケストレーションが可能になります。

しっかりと理解を深めていきましょう!

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