本格派ストリングスアレンジが自由自在!ポリフォニー型アレンジ解説②:内声編
こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。
今日は、ストリングスアレンジの基本となる5つの型のうち、「ポリフォニー型」の後編!
内声(アルト&テノールパート)に関するアレンジについて解説していきます。
- 四声体からみた内声の役割
- より自然な内声のライン取り
- 旋律的な内声アレンジ
- 内声のアレンジ手順
- より高度なテクニック
などなど、ポリフォニー型アレンジのキモともいえる内声のアレンジを徹底的にお伝えしていこうと思います。
ポリフォニー型はこんなアレンジです。
【ストリングスアレンジの基本となる5つの型についての解説はコチラ】
※こちらの内容は動画でも学習することができます。
ストリングスアレンジの基本形3:ポリフォニー型の内声について
四声体からみた内声の役割
四声体という書法から考えたとき、ソプラノはメロディ、バスはベースとしての役割を担っていることは前回の記事でお伝えした通りです。
それに対して、内声の最も主たる目的は、外声だけでは賄いきれないコードトーンの補完にあるといって差し支えありません。
内声がいることで充実したコード感が得られるというわけですね。
より自然な内声のライン取り
ポリフォニーという以上、内声においても、それぞれの声部が旋律的なラインであるべきことはいうまでもありません。
和声学においては、それを実現するための手段として、最も近しい構成音へ順次進行(又は保続)させるのが望ましいとされています。
ただし、1つのコード内で目紛しく動くメロディに対応するには、そのルールを守り続けるのは若干無理があったりします。
ですから、より実用的なストリングスの書法としては、内声は「ハモリ」という解釈で書いた方が断然書きやすくなります。
ハモリを意識することで、ソプラノの動きに対応しやすい上に、旋律的にも自然な流れを形成しやすくなります。
和声学的に正しい内声(白玉中心)
ソプラノが動くとそれだけでは対応しきれないことも
ハモることでソプラノの動きにも対応できる
旋律的な内声アレンジ
内声をより旋律的なラインに仕上げるためには、ハモりをベースに考えると効果的ということは先ほどお伝えした通りです。
しかし、ハモリというのは主旋律あってのものですから、それだけでは完全に独立した旋律を取っているとはいえません。
ですから、より旋律的な内声に仕上げるためには、内声にソプラノの運動とは異なる運動を盛り込む必要があります。(=内声を独立させる。)
ソプラノとのハモリに徹した内声
ソプラノとは異なる運動を持つ内声
バスとのハモリ、内声同士のハモリ
内声をソプラノから独立させるために最も効果的なのは、すでにメロディアスな動きを持っているベース(バス)とのハモリをつくることです。
ソプラノと対を成すメロディとして仕上げたバスに内声をハモらせていくことで、内声をソプラノから切り離すことができます。
また、内声同士のハモリも効果的で、この場合はソプラノとバス双方から完全に切り離された、独立した旋律を作ることができますね!
【ポイント】バスとのハモリ、内声同士のハモリを作ることで、内声の動きをソプラノから切り離すことができる。
内声をバスにハモらせた場合
内声だけでハモらせた場合
ストリングスアレンジの基本形3:ポリフォニー型のアレンジ手順②「内声編」
というわけで、いよいよ内声のアレンジに着手していきましょう!
前回完成させた外声パートをもとに、2nd ViolinとViolaのパートを埋めていきます。
まずは一旦、前回完成させた外声パートを聞いてみましょう。
【外声パートの演奏】
ここから肉付けをして、以下のような完成形を目指していきます
【完成形はこんなかんじ】
内声をアレンジしていく手順は以下の通りです。
- ソプラノのハモリを作る要領で2nd Violinを配置
- さらにViolaを配置
- 和声的に不都合がないか確認(あれば修正)
- ソプラノ以外とのハモリを意識して内声に動きを出す
1. ソプラノのハモリを作る要領で2nd Violinを配置
まずは、1st Violinのハモリパートを作る感覚で2nd Violinを配置していきましょう!
このとき、1stの3度下付近でハモれば密集配置に、6度下付近でハモれば開離配置になっていきます。
- 1stの3度下付近 → 密集配置
- 1stの6度下付近 → 開離配置
どちらでもオッケーですが、内声に動きをいれていくことを考えると、6度下付近の開離配置にしてあげるのがベターです。(上下に動けるスキマができるので。)
2. さらにViolaを配置
続いてViolaを配置していきましょう。
2ndが入ったことでコードトーンがあらかた埋まってきたと思うので、Violaは以下の要領で配置します。
- 1st、2nd、Celloの3パートで賄いきれていないコードトーンを補完
- 1st、2nd、Celloでコードトーンが十分賄えている場合はルートを演奏
- 4和音の場合は、当然不足しているコードトーンを演奏
まずは、ブロックコード型のように1stの音符1つ1つに和音をあてがうイメージで音を配置してあげましょう。
メロディのノート1つに対してViolaの音も1つ配置してあげることで、メロディの動きに合わせてViolaもノートを変更しやすくなります。
このとき、やたら同音連打することになっても構いません。(和音の配置が完了した時点でつなげてしまえばOKです。)
以下のような形で並べてみましょう。
【ポイント】限定進行音や禁則など、和声学上の細かいルールは後ほど確認していくので、このタイミングではしっかりコードを鳴らすことだけ考えていただければオッケー!
3. 和声的に不都合がないか確認
2ndとViolaの配置が完了したタイミングで、和声的に不都合が起きていないかを確認していきます。
チェック項目は以下の通りです。
- 和音を形成しているすべての箇所でコードトーンを賄えているか?
- 三和音の場合、ルート以外の音が重複してしまっていないか?
- 上三声の各声部同士のインターバルが、1オクターヴを超えていないか?
- 限定進行音を守れているか?
- 禁則は発生していないか?
1. 和音を形成しているすべての箇所でコードトーンを賄えているか?
和声の回でお話ししたとおりです。コードトーンは原則すべて鳴らしましょう。
メロディが非和声音を演奏している場合は、ブロックコード型のときと同様に、その非和声音が解決した先のコードトーンを演奏しているとみなしてコードを当てましょう。詳しくはブロックコード型アレンジの記事をご覧ください。
使用するコードが5和音以上に及ぶ場合は、以下のルールに従って省略しましょう。
2. 3和音の場合、ルート以外の音が重複してしまっていないか?
3和音の場合は、ルート以外の音が重複してしまっていないか確認しておきましょう。
とくに3rdが重複していると非常にバランスの悪い響きになってしまいますので注意が必要です。
オンコードなど、使用するコードによってはベースが3rdを演奏していることもあるかと思います。
その場合は、オクターヴ配置を使って、上三声には3rdを含めないようにしましょう。
3. 上三声の各声部同士のインターバルが、1オクターヴを超えていないか?
1stと2nd、2ndとViolaのインターバルが1オクターヴを超えないように配置できているかチェックしましょう。
4. 限定進行音を守れているか?
限定進行すべき場所はこのタイミングで洗い出していきましょう。
ドミナントコードでは、導音は2度上行、7thや9thは2度下行するのがお約束です。
5. 禁則は発生していないか?
禁則もこのタイミングでチェックしましょう。
内声が埋まったことで、各パート間での禁則が発生している可能性が高くなります。
禁則のうち、並達5度と並達8度に関しては外声のアレンジの際にすでに解消できているはずですので、今回は連続5度と連続8度を入念にチェックしていきましょう。
ここまでのデータを見てみると??
上記を踏まえて、ここまでのデータをチェックしてみると・・・?
途中、連続5度が発生している箇所がありました。
幸いにもこのポイントは、ドミナントコード(正確にはセカンダリードミナント)でしたので、7thを演奏している2ndを限定進行させることで、自然と禁則も解消することができました。
ここまでで、内声の基本的な配置は完了です!
ソプラノ以外とのハモリを意識して内声に動きを出していく
次に内声に動きをつけていきましょう。
内声をソプラノ以外にハモらせていくと、自ずと独立した旋律が生まれていきます。
四声体において実現可能な組み合わせは下図の通りです。
このうち、上段に記載されているものはすべてソプラノとのハモリですから、内声をソプラノから独立させたい場合は下段④〜⑥のハモリを作っていけばいいわけですね。
ハモるパートと聞こえ方の関係
どのパート同士でハモるかで全体の印象が大きく変わってきます。
距離の近しい声部間でのハモリは単旋律的で一体感が強く、逆に、離れたパート同士のハモリは複旋律的、独立感が強くなる傾向があります。
- 近しい声部のハモリ → 単旋律的(一体感)
- 離れた声部のハモリ → 複旋律的(独立感)
実際にサウンドを聴いてみましょう!
①ソプラノ+アルト
②ソプラノ+テナー
③ソプラノ+バス
④アルト+テナー
⑤アルト+バス
⑥テナー+バス
近しい声部同士のハモリほど一体感がつよく、離れた声部同士のハモリほど各声部が独立して動いているように聞こえることがお分かりいただけると思います。
内声にハモリをちりばめていこう
上記の要領で、各パートにハモリを入れていきましょう。
バスとのハモリ、内声同士のハモリを満遍なくちりばめていくのがコツです。
ソプラノ以外の声部同士のハモリを積極的に入れていくだけで、内声に自然な動きが出て、各声部が独立した旋律を演奏しているような形に仕上がったのがお分かりいただけると思います。
これで、内声のアレンジは完成です!簡単でしょ?
まとめ
というわけで、ポリフォニー型アレンジのうち、内声のアレンジ方法について詳細な解説をお届けしました。
ハモリを効果的に使っていくことで、和音的な調和を維持しながらも、旋律的で動きのある内声を作ることができます。
本格的な和声の知識がなくても、簡単にそれっぽいストリングスアレンジができちゃいますので、ぜひ今日の記事を読みながら繰り返し練習をして、ポリフォニー型ストリングスアレンジをご自身のものにしていってくださいね!
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