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ローパスからコムフィルターまで。シンセに搭載されるフィルターを徹底解説!

こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。

今日は、シンセサイザーを構成する4つの機能のうち、「フィルター」に関する詳しい解説をお届けします。

  • フィルターとは?
  • フィルターのパラメータ
  • さまざまなフィルターの種類
  • 各フィルターの特徴

などなど、周波数領域を自由自在にコントロールするためのテクニックを学んでいきましょう!

【シンセサイザーを構成する4つの機能の概要はこちら】

※こちらの内容は動画でも学習することができます。

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フィルターの基本

フィルターの基本

フィルターとは?

フィルターとは、ユーザーが指定した周波数を基準に、任意の周波数成分のみを通過させ、それ以外をカットすることで、周波数特性を変化させる装置のことでしたね!

オシレータが発した周波数成分のうち、必要なものだけをとりだすことができるので、より多彩な音色を作り出すことができます。

フィルターをかける前のホワイトノイズ

ローパスフィルターをかけると・・・?

高域成分がカットされてたことがお分かりいただけると思います。

フィルターのパラメータ

フィルターにはいくつかのパラメータがあります。

  1. カットオフ周波数
  2. レゾナンス(共振)
  3. スロープ
  4. キーボードトラッキング

それぞれ詳しく解説していきましょう。

カットオフ周波数(Cutoff)

ここで指定した周波数を基準にフィルターが作動します。

要は、「どこを境にカットするの?」ということですね。

カットされるといっても、カットオフ周波数を超えたらズバッと切られてしまうわけではなく、カットオフ周波数を境に緩やかに減衰していきます。

この減衰の勾配は、後述する「スロープ」の値で決定します。

レゾナンス(Resonance,Q)

カットオフ周波数付近の倍音を共振させて、強調・増幅させる機能です。

とくに、カットオフ周波数をスイープさせたとき(動かしたとき)にその効果を実感しやすいのですが、レゾナンスを用いることでフィルター独特のユニークなサウンドを得ることができます。

レゾナンスの有無によるサウンドの違いを聴き比べてみましょう。

レゾナンスなし

レゾナンスあり

レゾンナンスがあるサウンドの方が、よりフィルターの動きが強調されていることがお分かりいただけると思います。

スロープ(Slope)

カットオフ周波数から、実際に音が消えてなくなるまでの勾配を決めるパラメータです。

勾配が急になればなるほど、ガッツリとカットされます。

多くの場合、この勾配は「Pole(ポール)」と呼ばれる単位で決定され、1Poleあたり-6dB/octずつ勾配がきつくなっていきます。

【参考】-6dB/oct = カットオフ周波数から1オクターヴ離れた周波数の音量が、元と比べて-6dB下がっている状態。1Poleで-6dB/oct、2Poleで-12dB/oct、4Poleで-24dB/octと、次第に勾配が急になっていく。

キーボードトラッキング(Keybord Tracking)

キーボードトラッキングとは、シンセに搭載されているフィルター固有の機能。

演奏しているノートの音程に合わせて、カットオフ周波数を自動的に調整してくれるスグレモノ。

例えば、ローパスフィルターのカットオフ周波数を400Hzに設定した場合、400Hz以上のノートはすべてフィルターによってカットされてしまい、一部のフレーズが聞こえないといった不具合が起きます。

そんな時は、キーボードトラッキングをオンにすることで、実際に演奏しているノートに合わせた適切なカットオフ周波数を自動的に設定することができます。

 

さまざまなフィルターの種類

さまざまなフィルターの種類

ここからは、さまざまなフィルターの種類について解説していきます。

  • シンセに搭載されている代表的なフィルター
  • シンセ搭載されることはマレだがEQではよく使うフィルター
  • 面白い音作りが可能な特殊なフィルター

を順にご紹介していきます。

シンセに搭載されている代表的なフィルター

ローパスフィルター(Low Pass Filter)

指定した周波数以下の帯域を通過させ、高域成分をカットするフィルターです。

高域をカットするので、丸く柔らかい音に加工できるのが特徴。

フィルターの中でも最も代表的なもので、使用頻度はすこぶる高いですね。

ハイパスフィルター(High Pass Filter)

指定した周波数以上の帯域を通過させ、低域成分をカットするフィルターです。

低域をカットするので、軽くシャキシャキした音に加工できます。

ローパスフィルター同様、よく使うフィルターのひとつです。

バンドパスフィルター(Band Pass Filter)

指定した周波数の周囲のみを通過させ、その他の帯域をすべてカットするフィルターです。

狙った帯域成分のみを抽出したい場合に使用します。

通過させる範囲(Q)を極端に狭めることで、音程を持たないノイズに任意の音程を持たせたりすることも可能。

バンドストップフィルター(Band Stop Filter)

指定した周波数成分のみをカットするフィルターで、バンドパスフィルターの真逆の作用があります。

別名「バンドリジェクトフィルター」「ノッチフィルター」とも呼ばれたりしますね。(なぜこのフィルターだけ別称があるのかは不明・・・。)

シンセの音作りではそこまで積極的に使うことは少ないですが、うまく使えば他パートとの周波数の競合を避けることが出来るなど、応用範囲は広いフィルターです。

EQで使うフィルター&特殊なフィルター

ローシェルフフィルター(Low Shelf Filter)

指定した周波数以下の帯域を棚状にブースト&カットするフィルターです。

イコライザーではおなじみですね!

図が示す通り、低域成分をまとめてコントロールすることができるので、低音が足りないとき、或は過多な時に重宝します。

ハイシェルフフィルター(High Shelf Filter)

指定した周波数以上の帯域を棚状にブースト&カットするフィルターです。

ローシェルフ同様、イコライザーでよく使われるフィルターですね。

高域成分をまとめてコントロールできるため、高音が足りないとき、或は過多な時に使用すると良いでしょう。

ピークフィルター(Peak Filter)

指定した周波数成分の周囲のみをブースト&カットするフィルターです。

こちらもイコライザーではよく使われるフィルター。(むしろEQの主役といっても過言ではない。)

バンドパスフィルターに形が似ている上に、カット方面に使用することでバンドストップフィルターと似た動作をするのでややこしいのですが、こちらはブースト&カットの大きさを任意で調整できる点が特徴です。

コムフィルター(Comb Filter)

こちらはちょっと変わったフィルターです。

コム(comb)とは櫛のことで、その名の通り櫛形のギザギザした周波数特性を持つフィルター。

他のフィルターとは違い、特定の帯域をカットするフィルターではなく、ちょっと面白い効果が得られます。

試しにノイズに対してコムフィルターを適用してみると・・・?

あら不思議!音程がはっきりと聞き取れるようになり、ノイズから音程のある音色を作り出すことも可能。

昨今のEDMでよく聞くような攻撃的なリードが出来上がりました。

コムフィルターは、このような積極的な音作りの際に大活躍してくれるフィルターです。

 

まとめ

というわけで、シンセサイザーを構成する4つの機能のうち、フィルターについて詳しく解説しました。

オシレータが生成した波形に含まれる倍音成分を、自由にコントロールすることができる非常に便利な装置。

シンセはもちろん、イコライザーの取り扱いにも応用できる知識かと思いますので、ぜひしっかり覚えていきましょう。

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