華やかでゴージャスなサウンド!ブロックコード型ストリングスアレンジのテクニックを解説
こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。
今日は、前回お伝えした「ユニゾン型」の応用編として、「ブロックコード型」の詳細なアレンジ方法を解説していきます。
- ブロックコード型とは?
- ブロックコード型アレンジのポイント
- ブロックコード型のボイシング
- トライアドのみを使ったブロックコード型アレンジ手順
- 4和音以上のブロックコード型アレンジ手順
ブロックコード型はこんなアレンジです。
【ストリングスアレンジの基本となる5つの型についての解説はコチラ】
※こちらの内容は動画でも学習することができます。
ユニゾン型の応用、ブロックコード型とは?
ブロックコード型の基本
基本は全てのパートが同じ音を演奏するユニゾン型ですが、もちろんハモりを入れてもかっこよくなります。
そのハモりを最大限に活用し、ストリングス全体でコードを形成しながら単一のメロディを演奏するパターンがブロックコード型です。
【ブロックコードとは?】もともとジャズピアノの演奏スタイルから生まれた手法で、メロディとコードを一緒に演奏するスタイルの奏法を指します。トップノートは主旋律を演奏しながら、それに追随する形でコードを演奏していく形です。
実際にどのようなサウンドになるのか、改めて聞いていただきましょう。
単純なユニゾンに比べてかなりゴージャスなアレンジになっているのがお分かりいただけるかと思います。
楽譜でみるとこんな感じです。
ブロックコード型アレンジのポイント
ブロックコード型では、メロディを演奏しながら、同時にコードも演奏することができるため、ストリングスだけでかなり厚みのあるアレンジをすることができます。(とくにジャズテイストのおしゃれなアレンジをしたい場合には効果的。)
純粋なユニゾン型とはちがい、ストリングスそのものがコードを演奏しているため、別途コード楽器を用意しなくてもアレンジは成立します。(オーケストラ作品ではよく見られる形態。)
とはいえ、一般的なバンドアレンジの場合には、ユニゾン型同様ほかのコード楽器との併用するパターンが多く見られます。
【ブロックコード型アレンジの楽器組み合わせ例(ユニゾン型と同じと考えてOK)】
- メロディ(orオブリガート) → ストリングス
- コード → ピアノ、ギターなど
- ベース → エレキベース、シンセベースなど
- リズム → ドラム、パーカッション、ギターカッティングなど
実際のサウンドは以下のような感じになります。
ストリングスのみ
ピアノ追加(コード楽器)
ベース追加(ベース楽器)
ドラム追加(リズム楽器)
ブロックコード型のボイシング
ブロックコード型の基本的なボイシングは、ジャズのボイシングをそのまま流用するのが一般的です。
全てのノートが1オクターヴ以内におさまる「クローズドボイシング」のほか、1オクターヴ以上にまたがる「オープンボイシング」として、「ドロップ2」「ドロップ3」「ドロップ2&4」の3パターンが存在します。
- クローズドボイシング → 1stとVc.がオクターヴでメロを演奏。2ndとVa.はその内側でコードトーン
- ドロップ2 → 基本形の上から2番目のノートを1オクターヴ下げ、担当パートを入れ替えたバージョン
- ドロップ3 → 基本形の上から3番目のノートを1オクターヴ下げ、担当パートを入れ替えたバージョン
- ドロップ2&4 → 基本形の上から2番目と4番目のノートを1オクターヴ下げ、担当パートを入れ替えたバージョン
ブロックコード型のアレンジ手順
ここからは、ブロックコード型のアレンジ手順を詳しく解説していきます。
まずは、基本中の基本である「トライアド(三和音)」のみのブロックコードの作り方をお話していきますね。(7th以上音を用いた4和音バージョンは後ほど解説します。)
トライアドのブロックコード型アレンジ手順は以下の通りです。
- 1st Violinでメロディを打ち込む
- 1st Violinのメロディを1オクターヴ下でチェロにコピペする
- 2ndとViolaでコードトーンを打ち込む
- 必要に応じてオープンボイシングに切り替える
1. 1st Violinでメロディを打ち込む
まずは1st Violinにメロディを打ち込んでいきましょう。
ここでも、ストリングスの広い音域を生かしたダイナミックなメロディを心がけることが美しいアレンジの秘訣ですが、一点だけ注意が必要です。
ここで打ち込んだメロディは、このあとチェロとオクターヴ関係を作っていく必要があるため、チェロの最高音+1オクターヴを超える音域の使用はNGです。
チェロの最高音はG4ですから、1st ViolinのメロディもG5までの間におさまるよう注意しましょう。
※仮に音域を飛び出したとしても、オープンボイシングを使うことで修復は可能ですが、1stをG5までに留めておくことでストリングス全体が余裕を持った音域で演奏できるため、結果的に仕上がりが良くなります。
2. 1st Violinのメロディを1オクターヴ下でチェロにコピペする
次に、1st Violinに打ち込んだメロディを、そっくりそのまま1オクターヴ下でチェロに貼り付けます。
1st Violinを打ち込む際にメロディをG5までの間におさまるよう調整しておけば、この作業は難なく完了するはずです。
3. 2ndとViolaでコードトーンを打ち込む
1st ViolinとCelloでオクターヴのユニゾンができあがったら、その間に2ndとViolaをつかってコードトーンを打ち込んでいきましょう。
このときのコツは、以下の通りです。
- 楽曲のコード進行通りのコードトーンを使用する
- 原則としてコードトーンはすべて鳴らす
- メロディが非和声音(コードトーン以外)を演奏している場合は、解決先のコードトーンを演奏しているものとみなす
すこし複雑なので解説を入れていきます。
1. 楽曲のコード進行通りのコードトーンを使用する
これはシンプルですね。
例えばコード進行が「Dm – G – C」ならば、Dmのときは「レ・ファ・ラ」を、Gのときは「ソ・シ・レ」を、Cのときは「ド・ミ・ソ」を鳴らせば良いということになります。
2. 原則としてコードトーンはすべて鳴らす
トライアドのみでブロックコードを作る場合は、原則としてコードトーンはすべて鳴らしましょう。
例えば、Cコード上でメロディがCを演奏している場合は、必然的に2ndはG、Va.はEを演奏することになります。
3. メロディが非和声音(コードトーン以外)を演奏している場合は、解決先のコードトーンを演奏しているものとみなす
メロディが非和声音(コードトーン以外)を演奏している場合もあります。
その場合は、その非和声音が解決した先のコードトーンを演奏しているものとみなして、それ以外のコードトーンをすべて鳴らしましょう。
例えば、Cコード上でメロディが「ド〜レ〜ド」という旋律を演奏している場合、「レ」は非和声音(刺繍音)となるため、その音が解決した先の「ド」を演奏しているとみなして、2ndはG、Va.はEを演奏することになります。
非和声音(ひわせいおん、英: nonchord tone, nonharmonic tone、独: Fremde Töne)または和声外音(わせいがいおん)とは、和音の構成音が隣接音度に移された音であり、和音の構成音以外のすべての音である。 -Wikipediaより-
非和声音については、Wikipediaがかなり詳しく解説してくれているのでそちらをご覧ください。
4. 必要に応じてオープンボイシングに切り替える
3までの工程でクローズドボイシングでのブロックコード型アレンジが完成。あとは、必要に応じてオープンボイシングに切り替えていきましょう。(クローズドボイシングでも十分アレンジが成立していますので、不要な場合はこのステップを端折っても構いません。)
ブロックコード型の場合は、原則「ドロップ2」をつかってボイシングするのが良いと思います。
オープンボイシングにする必要があるケースは、以下の2通りです。
- 1st Violin以外のパートの音域が、一部(または全体)高すぎる場合
- 1st Violinのメロディをはっきり聞かせたい場合
1. 1st Violin以外のパートの音域が一部(または全体)高すぎる場合
クローズドでボイシングしてみた結果、2nd以下のパートの音域が高すぎてしまう場合があります。
とくにViolaは高音域が苦手なので、余裕を持って演奏したい場合はドロップ2に切り替えてあげると良いでしょう。
フレーズ全体をドロップ2にするのも良いですが、高すぎると感じた部分だけドロップ2を用いるのもOKです。
2. 1st Violinのメロディをはっきり聞かせたい場合
ドロップ2を用いることで、1st Violinと2nd Violinの間に少しスキマができるため、その分1st Violinのメロディをはっきりと聞かせることができます。
クローズドではメロディがはっきり聞こえない場合などは、ドロップ2に切り替えることで解決します。
4和音以上のブロックコード型アレンジ手順
今度は、7thやテンションなどを含んだ4和音以上のブロックコード型アレンジ手順をご紹介します。
基本的な手順はトライアドだけをつかった場合と同じですが、オープンボイシングに切り替える前に、7th以上を組み込んだ状態に再配置する必要があります。
具体的な手順は以下のとおりです。
- まずはトライアドのブロックコード型をクローズドボイシングで作る
- 2nd以下のパートを、4和音すべて組み込みながら再配置する
- 必要に応じてオープンボイシングに切り替える
こちらも詳しく解説していきます。
1. まずはトライアドのブロックコード型をクローズドボイシングで作る
先ほどご説明したトライアドのブロックコード型を、クローズドボイシング状態で作ります。
要は、前述のアレンジ手順の1〜3までをやればいいわけですね。
オープンボイシング化は最後にやったほうがいいのでここではクローズドボイシングのままにしておいてください。
2. 2nd以下のパートを、4和音すべて組み込みながら再配置する
次に、2nd以下のパートを、4和音すべてを組み込みながら再配置していきます。
トライアドだけの場合はコードトーンが3つしかないので、1stとCelloがオクターヴ関係を保っていてもすべてのコードトーンを鳴らすことができましたが、4和音となるとそうはいきません。
以下の手順で再配置していきましょう。
- コードの構成音を確認する
- コードトーンにしたがって、2nd以下の音を繰り上げる
1. コードの構成音を確認する
まずはコードの構成音を確認しましょう。
例えばCmaj7なら「ド・ミ・ソ・シ」になりますし、G7ならば「ソ・シ・レ・ファ」になります。
もちろん、コードネームを見れば構成音がすぐわかる人は、このステップは端折って結構です。
コードトーンにしたがって、2nd以下の音を繰り上げる
次に、トライアド状態のアレンジから、4和音を組み込んだ状態へと再配置していきます。
基本は、メロディに近い順からコードトーンにしたがって2nd以下の音を繰り上げていけばOKです。
例えばコードCのトライアドの場合は上から「ド・ソ・ミ・ド」と配置されていたはずですが、それをCMaj7におきかえる場合は、上から「ド・シ・ソ・ミ」という配置になります。
文章で説明するよりDAWの画面をみていただいた方が早いと思うので貼っておきますね。
【トライアドのみの状態】
【4和音に対応すべく2nd以下を繰り上げた状態】
【参考:使用するコードの構成音が5和音以上におよぶ場合】
9th以上のテンションを組み込む場合は構成音が5和音以上になってしまうため、何かしらの音を省略しなければなりません。その場合は、ルート、または5thの音を優先してオミットしましょう。
3. 必要に応じてオープンボイシングに切り替える
こちらもトライアドのみでアレンジしていた場合と同じ考えでOKですが、4和音になったことによってオープンボイシングを採用した方がいいケースが増えます。
3. 1stと2ndが2度でぶつかっている場合
7th以上の音が入ることで、1stと2ndが2度でぶつかってしまう場合があります。これが気にならない場合はクローズドのままでも構いませんが、短2度でぶつかった場合などはメロディの邪魔になってしまうことも多いので、その場合はドロップ2でオープンにしてあげるとスッキリします。
これで、4和音以上のブロックコードの完成です。
まとめ
というわけで、ブロックコード型アレンジについて詳しく解説しました。
ユニゾン型とくらべて非常に華やかなサウンドが得られるブロックコード型。とくにジャズ要素の強いおしゃれなアレンジにはもってこいですので、今日の記事を参考にぜひご自身のものにしていってください。
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