弦楽器の楽器法③:チェロの構造、音域、特徴を理解しよう!

こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。
今日は、ストリングスの低音楽器「チェロ」について解説していきます。
- チェロの概要
- 楽器の構造と発音の仕組み
- 音域と音色
- 得意なフレーズ、苦手なフレーズ
ストリングスにおいてベースパートを担当することも多いチェロ。
一方で、中音域を中心に奏でるメロディの美しさは、他の楽器にはない独自の魅力を放っています。
今回はそんな幅広い表現力が魅力のチェロについて詳しく解説。
チェロが持つ大きな可能性を探っていきましょう!
弦楽器の楽器法③:チェロの構造、音域、特徴を理解しよう!
チェロの概要
ストリングスセクションにおいてはヴァイオリンに次いで知名度の高いチェロ。
じつは、その誕生がいつ頃なのかはよくわかっていないようです。(少なくとも16世紀初頭には存在していた模様。)
前回の記事で、ヴィオラが肩に担いで演奏する都合上音域とサイズのバランスが不釣り合いな楽器であることをご説明しましたね。
それに対して、チェロは後述する「エンドピン」という足で接地しながら楽器を支えるため、音域に対して十分な大きさを確保することができています。
それによる豊かな響きと、ベースからメロディまで幅広くこなす表現力の高さこそがこの楽器の大きな特徴といえるでしょう。
チェロの音を聴いてみよう
美しい旋律が奏でられるバッハのチェロ組曲
楽器の構造と発音の仕組み
次に、楽器の構造と発音の仕組みについて見ていきましょう。
楽器の構造
サイズの違いこそあれど、基本的な構造はヴァイオリンやヴィオラと同じ。
ボディに取り付けられたネックに弦を張り、駒を通じてボディを共鳴させる構造です。
一方、ボディのサイズが非常に大きいことから肩に担いでの演奏は不可能。
前述の通り、エンドピンと呼ばれるチェロの底から伸びる棒のようなパーツで接地し、楽器のネックを奏者左肩前に構えて演奏します。
ヴァイオリン、ヴィオラとは弦の位置関係が逆転する
チェロやコントラバスなどの大型の弦楽器は、楽器を立てて構えることになります。
その場合、ヴァイオリンやヴィオラのように楽器を肩に担いで演奏する楽器とは、(奏者から見た時の)弦の位置関係が逆転することになります。
例えば、ヴァイオリンやヴィオラは左側の弦ほど低い弦になりますが、チェロやコントラバスはその逆、左側ほど高い弦にになるのです。
- ヴァイオリン:左から「G」→「D」→「A」→「E」
- ヴィオラ:左から「C」→「G」→「D」→「A」
- チェロ:左から「A」→「D」→「G」→「C」
- コントラバス:左から「G」→「D」→「A」→「E」
アレンジや打込みを行う際には、実際に楽器を演奏している様子をイメージすることがとても重要。
その際、弦の並び方を把握していないと正確にイメージすることも難しいでしょう。
ですから、上記の特徴はぜひ頭の片隅に入れておいてくださいね。
発音の仕組み
発音の仕組みは他の擦弦楽器と全く同じ。
弓で弦をこすることで生まれる摩擦が振動を生み、それをボディで共鳴させて発音します。
チェロの弓は、ヴァイオリンやヴィオラと比較して短めである点も覚えておきましょう。
音域と音色
次に、チェロの音域とそれに伴う音色の特徴を見ていきましょう。
チェロの音域は以下の通りです。
その他の弦楽器同様上図の音域より高い音も演奏可能ですが、やはり複数人での演奏では不安定になりがち。
オーケストラでは上記の音域内にとどめておくのが無難です。
ちなみに、ヴァイオリンやヴィオラのようにポジションごとの音域ではなく、弦ごとの音域の説明にとどめているのには理由があります。
チェロは弦が非常に長く、特に低音域においては規則的な運指での演奏が難しいからです。
シフトというテクニックで演奏をするのですが、こちらはオーケストレーションを習得する上で必ずしも把握しておかなければならないわけではないため、あえて割愛します。
まずは上記実用的な音域を守ることを徹底し、余力があれば各弦の特徴を意識しながらアレンジしていきましょう。
各弦ごとの特徴
チェロもまた、それぞれの弦ごとに特徴あるサウンドを持っています。
■ 第Ⅰ線(A線)
メロディを奏でるための弦といっても差し支えないくらい、旋律の演奏に抜群の適性を持ちます。
一番外側の弦なので弓を動かしやすく、豊かな演奏表現が可能だからです。
サウンドはチェロの中でも明るくツヤのある音で、非常に魅力的なものとなっています。
■ 第Ⅱ線(D線)
A線に比べて、力強さは劣るものの美しく落ち着いたサウンドを持っており、こちらもメロディの演奏に適した弦です。
ゆったりとした穏やかなフレーズを奏でるのであればピッタリの弦といえるでしょう。
ヴィオラの第Ⅳ線「C」と音域は近いですが、サウンドは全くの別物。
この音域でフレーズを演奏する場合、美しく叙情的なフレーズが欲しいならチェロを、荒々しさのあるフレーズが欲しいならヴィオラに任せるとよい効果が得られます。
■ 第Ⅲ線(G線)
他の弦と比較するとこれといって際立った個性を持たない弦ですが、後述する「ウルフトーン」とよばれる現象が発生する点において特徴的な弦です。
詳しくは後ほどご説明します。
■ 第Ⅳ線(C線)
4つの弦の中で最も太く、重厚なサウンドを持つ弦です。
ベースパートを任せる際に用いる機会が多くなるでしょう。
チェロが持つ深みのあるサウンドに加えて、いい意味で粗さが付与されたようなサウンド。
力強いベースラインを奏でるのにうってつけです。
ウルフトーン
音響学的には非常にバランスのとれた構造をしているチェロですが、特定の音で「ウルフトーン(ウルフ音)」と呼ばれる音質面で劣る音が生じる場合があります。
ウルフトーンとは、一部の音がうわずったり震えたりする現象のこと。
周期的な唸りを伴う場合も多く、それがまるで狼のうなり声のように聞こえることからこの名がつきました。
主に第III線(G線)上において、開放の状態から完全5度上(=D)を超える4つの音、つまり「Eb」「E」「F」「F#」の4音が該当します。
中でも「F」「F#」はとくに音質が良くないとされ、ソロや少人数での演奏では無視できないほどの影響があります。
楽器数が少ないアレンジで、チェロにこの音域の音を任せる場合はとくに注意しましょう。
このウルフトーン対策として「ウルフキラー」と呼ばれるアイテムも販売されています。
※参考・ウルフトーン(とウルフキラー)についての動画
得意なフレーズ、苦手なフレーズ
最後に、チェロの得意なフレーズと苦手なフレーズについて解説していきます。
得意なフレーズ
ヴァイオリンやヴィオラ同様、様々な奏法をそつなくこなします。
中でも、長い弦を生かした低音域でのピチカートは非常に効果的です。
よく響き、とくに開放弦ではピチカートながらも長い音価での演奏が可能となっています。
ピチカート
苦手なフレーズ
こちらも他の弦楽器同様、目立った苦手分野はありません。
ただし、チェロは低音域を中心に運指がとても複雑なので、重音(特に3重音以上)を扱う時には注意が必要。
重音を用いる場合は、演奏可能かどうかを奏者さんに確認した上で用いるのが安全でしょう。
まとめ
というわけで、チェロについて詳しく解説しました。
ベースからメロディまで幅広いフレーズを弾きこなす魅力溢れる楽器。
とくに4つの弦それぞれの特徴をよく理解することで、より効果的なアレンジが可能になるでしょう。
今日の記事を参考に、ぜひあなたの楽曲に取り入れてみてください。
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