躍動感あふれる演奏を再現!ストリングスのアーティキュレーションに関する考え方とテクニックを解説
こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。
今日は、リアルなストリングスサウンドを実現するモックアップテクニックのうち、アーティキュレーションの取り扱いについて詳しく解説していきます。
- アーティキュレーションの基本
- アーティキュレーションの種類
- アーティキュレーションの打ち込み方
など、より実際の演奏に近いリアルなニュアンスづけに必要な考え方・テクニックについて学んでいきましょう。
【モックアップに使用する基本的なパラメータの解説はこちら】
※こちらの内容は動画でも学習することができます。
アーティキュレーションの基礎知識
アーティキュレーションの基本
アーティキュレーションとは、演奏に多彩なニュアンスをつける行為、あるいは記号、奏法などのことをさします。
Wikipediaでは以下のように説明されています。
アーティキュレーション(articulation)とは、音楽の演奏技法において、音の形を整え、音と音のつながりに様々な強弱や表情をつけることで旋律などを区分すること。 -Wikipediaより-
アーティキュレーションのない演奏は無味乾燥とした機械的なものですが、様々なアーティキュレーションをつけることによって、より生き生きとした人間味溢れる演奏が実現できます。
アーティキュレーションのない演奏(=ベタ打ち)
アーティキュレーションを用いて表情づけした演奏
演奏がよりイキイキとしてきたことがお分かりいただけると思います。
【参考】モックアップにおけるアーティキュレーション
モックアップにおいては、さまざまな「奏法」をあらわす意味で「アーティキュレーション」という言葉が使用されることがあります。スピッカートやアクセントなど、独自の奏法を収録した専用の音色が用意されており、これらを総じて「アーティキュレーション」と呼ぶことも多いようです。
アーティキュレーションの種類
ここでは、代表的なアーティキュレーションの種類をご紹介します。
基本的には、ストリングスの記譜法の記事でご紹介した各種奏法をそのまま覚えていただければ問題ないと思います。
スラー
スラーは、2つ以上の音を切れ目なくつなげて演奏する奏法。
主にレガートの音色を用いて打ち込みます。
ポルタメント
ポルタメントは、2つ以上の音の音程を滑らかにつなげて演奏する奏法です。
ポルタメント専用音色を用いて打ち込むのが自然ですが、ピッチベンドでも再現不可能ではありません。
トレモロ
弓を小刻みに動かして、音符を細かく連打する奏法です。
トレモロ専用音色を用いて打ち込みます。
トリル
指定した音程と短2度、または長2度上の音程を交互に素早く演奏する奏法です。
トリル専用音色を用いて打ち込むのが自然ですが、レガートの音色でトリル風に打ち込むことも不可能ではありません。
ハーモニクス(フラジオ)
いわゆるハーモニクスです。弦を軽く押さえて、倍音を演奏する奏法です。
ハーモニクス専用音色を用いて打ち込みます。
スピッカート(スタッカート)
スピッカートは、弓と弦の張力を利用して、弓を弾ませるようにして演奏するスタッカートのことです。
スピッカート専用音色を用いて打ち込みます。
マルカート
マルカートは、1つ1つの音をはっきりと演奏する奏法です。
マルカートやアクセントの音色を用いて打ち込むこともありますが、エクスプレッションやレイヤーなどを駆使して打ち込んだ方が自然な仕上がりになることが多いです。
ピチカート
弓ではなく、弦を指で弾くように演奏する奏法です。
ピチカート専用音色を用いて打ち込みます。
バルトークピチカート
バルトークピチカートは、親指と人差し指で弦をつまみ上げ、その張力を利用して弦を指板に叩きつける奏法です。
バルトークピチカート専用音色を用いて打ち込みます。
コル・レーニョ
弓の毛の部分ではなく、背面の木の部分で弦を叩くようにして演奏する特殊奏法です。
コル・レーニョ専用音色を用いて打ち込みます。
ストリングスのアーティキュレーションの付け方
ここでは、様々なアーティキュレーションを多用した、アップテンポで歯切れの良い演奏を実現するための打ち込み手順をご紹介します。
- 必要なアーティキュレーションを選定する
- アーティキュレーションを専用音色に置き換える
- エクスプレッションを書く
- 微調整して仕上げる
スラーやレガートを中心とした、ゆったりと歌い上げるタイプの打ち込み方法については、エクスプレッションの記事をご参照ください
1. 必要なアーティキュレーションを選定する
まずは、フレーズの演奏に必要なアーティキュレーションを選定していきましょう。
基本はスラー(レガート)の音色を中心に打ち込んでいくことになりますが、それ以外に必要なアーティキュレーションがあれば最初の段階で選定してしまいます。
先ほどご紹介した各種アーティキュレーションのうち、比較的よく使う音色をまとめておきます。
【よく使うアーティキュレーション】
- スラー(レガート)
- トレモロ
- トリル
- スピッカート
- ピチカート
上記5つを中心に、必要なアーティキュレーションを洗い出していきましょう。
2. アーティキュレーションを専用音色に置き換える
先ほど選定したアーティキュレーションを、専用音色に置き換えていきます。
以下の図は、スピッカートで演奏すべきところをスピッカート専用音色に置き換えたものです。
【参考】よく使うアーティキュレーションはテンプレートとしてあらかじめDAWの中に組み込んでおくと便利です。
とくにスラー(レガート)以外の4つのアーティキュレーションは、キースイッチで切り替えられる状態にして1トラックにまとめておくとスッキリしますね。
キースイッチとは鍵盤上の特定のノートを入力することで、様々な音色を切り替えることができる機能のこと。1つのトラックで様々な音色を切り替えて演奏することができるため非常に便利です。
エクスプレッションを書く
アーティキュレーションの置き換えが完了したら、次にエクスプレッションを書いていきましょう。
主にロングノート系アーティキュレーションに対してエクスプレッションを付与していきます。
先ほどもご説明したとおり、アクセントやフォルテピアノに関しては、アーティキュレーション専用音色を用いるよりも、エクスプレッションで表現した方が自然な仕上がりになります。
スピッカートやマルカートも、場合によってはエクスプレッションの方が自然に聞こえることもありますので、そのような場合は下図を参考にエクスプレッションを入力してみましょう。
また、エクスプレッションの解説記事でもお伝えしたとおり、アクセントなどの減衰系エクスプレッションが続く場合は、エクスプレッションの不連続による無用なノイズが発生することがあります。
その場合は、2トラックに分割して打ち込むことで不具合を取り除くことができますので、そのように対処してみてください。
微調整して仕上げる
最後に、各所を微調整して仕上げましょう。
アーティキュレーション専用音色に切り替えたことで、つながりが不自然に聞こえるポイントがあれば、ベロシティなどで音量、音色を調整し、自然に聞こえるよう調整していきます。
とくにスピッカートはベロシティが強すぎると唐突な印象になりがちですので、前後の音色との兼ね合いをみながらキレイにつながるようエディットしましょう。
まとめ
というわけで、ストリングスのモックアップにおけるアーティキュレーションの取り扱いについて詳しく解説しました。
アーティキュレーションを適切に取り入れることで、より生き生きとした躍動感あふれる演奏を実現することができます。
エクスプレッションと上手に併用しながら、よりリアルなサウンド作りを目指していきましょう!
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