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オーケストラの楽譜制作①:フルスコア(総譜)制作の前提知識を理解しよう!

こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。

今回からは、オーケストラの楽譜作りについて解説していきます。

今日はその中でも、主に指揮者が見ることになるフルスコアの前提知識についてまとめていきます。

  • フルスコアとは?
  • フルスコアの体裁
  • 楽器の並び順

打込みで完結するオーケストラ作品であれば楽譜制作の知識がなくても困ることはないでしょう。

しかし、作品を誰かに演奏してもらったり、楽曲の細部を確認したりする場合など、楽譜が作れることによる恩恵は計り知れません。

苦労して作り上げた力作、せっかくなら楽譜として残しておくのもオーケストレーションの醍醐味!

そのために必要な知識を解説していきますので、ぜひお役立ていただければ幸いです。

 

オーケストラの楽譜制作①:フルスコア(総譜)制作の前提知識を理解しよう!

フルスコアとは?

そもそもフルスコアとはどういうものでしょうか?

ひとことで言うと「楽曲を構成するすべてのパートが書かれた楽譜」です。

日本語では「総譜(そうふ)」、あるいは単に「スコア」と呼びます。

こうしてみると圧巻ですね!

フルスコアは、楽曲の構造や各パートの動きなど、楽曲全体を俯瞰して見るのに役立ちます。

したがって、作曲者や編曲者はもちろん、指揮者もこれを見ながらオーケストラ全体を指揮することになります。

フルスコアの体裁

フルスコアでは、楽曲を構成するすべてのパートが縦にズラっと並んでいます。

それぞれのパートがどのように絡み合っているのかが一目で視認できますね。

五線左側を縦線で結ばれたパートは同時に(同じ時間軸で)演奏され、楽譜左側より演奏を開始、ページの右端まで進んだら次のページに進むという読み方をします。

また、パート数が少ない場合は1ページに2段以上のスコアが書かれることもあります。

この場合は、1段目の右端まで進んだら2段目に進むという流れになります。

まれに、スペースの節約や全貌を把握しやすくするために、ページ中1音も演奏しないパートは掲載を省略することもあります。

市販のミニチュアスコアなどではこのような体裁をとっているものもよく見かけますので、惑わされないよう注意しましょう。

移調楽器の取り扱い

楽曲を構成するパートの中に移調楽器がある場合、それらは全て移調されたそのままの状態で記譜することが一般的です。

例えば、以下のような楽器たちですね。

  • イングリッシュホルン(F)
  • クラリネット(Bb、A)
  • ホルン(F)
  • トランペット(Bb)

また、ピッコロやコントラバスなど、実音より1オクターブ低く(高く)記譜される楽器についてもその通りに記譜されます。

奏者それぞれが見ているパート譜をそのまままとめて転載したものと考えればよいでしょう。

楽器の並び順(基本編)

フルスコアでは、楽器の並び順に決まりごとがあります。

ここでは、現代における一般的な並び順について解説していきます。

  • セクション単位の並び順
  • セクション内の並び順
  • 同一楽器内の並び順

セクション単位の並び順

フルスコアでは、同じセクションの楽器群は一塊にして記譜します。

その際、どのセクションから記譜されるかは以下の通りとなります。

  • 木管楽器
  • 金管楽器
  • 打楽器
  • 編入楽器(協奏曲におけるソロもこの位置)
  • 声楽(ソロ・合唱問わずこの位置。混在する場合はソロが上)
  • 弦楽器

なお、編入楽器や声楽などの特殊なセクションは、楽曲に使用されている場合のみ記譜すればOKです。

セクション内の並び順

同一セクション内部での並び順は、原則として音域が高いものから順番に並べることになります。

例えば木管楽器ならば、以下の通りとなります。

  • フルート
  • オーボエ
  • クラリネット
  • バスーン

ただし、一部例外も存在しますので後述します。

同一楽器内の並び順

1stフルートと2ndフルートなど、同じ楽器同士を並べる場合は1stから順番に記譜します。

例えば、2管編成の木管セクションならば以下のような順番になります。

  • 1stフルート
  • 2ndフルート
  • 1stオーボエ
  • 2ndオーボエ
  • 1stクラリネット
  • 2ndクラリネット
  • 1stバスーン
  • 2ndバスーン

また、同じ楽器2パートを1つの段にまとめて記譜することもあります。

例えばホルンはパート数が多いため、以下のように記譜されることが多いです。

  • 1段目:「1st&2nd」
  • 2段目:「3rd&4th」

また、「バストロンボーンチューバ」「チェロコントラバス」は1段にまとめて記譜されることもあります。

それ以外のパートでは、まとめて記譜されることもあれば分けて書くことも。

どちらも間違いではありませんので、適宜都合の良い方を選択しましょう。

楽器の並び順(例外編)

ここからは、楽器の並び順に関する特殊条件などを詳しく解説していきます。

以下の3つの観点でお伝えしていきます。

  • 金管セクションにおける並び順の例外
  • 持ち替え楽器の並び順
  • 打楽器の並び順

金管セクションにおける並び順の例外

先ほど、同じセクション内での並び順は音域の高いものから順にとお伝えしました。

しかし金管だけは例外。ホルンが最上段に記譜されます。

ホルン木管楽器との親和性が高いため、木管金管双方のセクションの中間に位置する方が都合がよいというわけですね。

つまり、以下のような並び方になります。

【金管セクションの並び順】

  • 1st&2ndホルン
  • 3rd&4thホルン
  • 1stトランペット
  • 2ndトランペット
  • 1stトロンボーン
  • 2ndトロンボーン
  • バストロンボーン
  • チューバ

持ち替え楽器の並び順

持ち替え楽器の並び順については、以下の2種類の考え方で決定します。

  1. 2nd奏者が持ち替えて演奏する場合は2ndパートに記譜
  2. 持ち替え楽器専用奏者がいる場合は下(または上)に1段追加

前者については、そのままの意味です。

例えば、2ndオーボエ奏者が楽曲の途中でイングリッシュホルンに持ち帰る場合は、2ndオーボエパートと同じ段に持ち替えの指示とともに記譜します。

後者については、主に3管編成以上の編成において用いられます。(まれに2管編成でも。)

3管編成では、ピッコロイングリッシュホルンなどの持ち替え楽器は専用の奏者が割り当てられることが多くなります。

その場合は、原則として2nd奏者の下に1段追加して記譜することになります。

ただし、ピッコロの場合はフルートよりも音域が高いこともあり、1stフルートより上に記譜されることも珍しくないので覚えておきましょう。

打楽器の並び順

音程の概念のない打楽器は、以下のような順番で並べることになります。

  • 最上段:ティンパニ
  • 2段目以降:その他の打楽器

ティンパニは打楽器の中でもとくに重要度の高いパートとなるため最上段に。

その他の打楽器については特段決まりはありませんので、アンサンブル上共通点の多いものから順番に並べていくのがよいでしょう。

まとめ

というわけで、フルスコアについての前提知識について詳しく解説しました。

慣れないうちは覚えることがたくさんで大変に感じるかもしれませんが、何度も作っているうちに少しずつ慣れていきますのでご安心ください。

市販のスコアを眺めながら今日ご紹介した知識を学んでいただくことで、その特徴やルールをより深く定着させることができると思います。

ぜひチャレンジしてみてください!

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