マスタリングの実践テクニック③:リミッター/マキシマイザーの初期設定をマスターしよう!
こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。
今日からは、マスタリングにおける各種エフェクトの設定方法について解説していきます。
まずはリミッター/マキシマイザーの初期設定から。
- リミッター/マキシマイザーの初期設定
- 音圧アップ時に起きる問題と対処法
- 【問題①】そもそも音圧が上がらない
- 【問題②】音圧は稼げたが音質が悪くなってしまった
マスタリング初期段階では、最初にリミッターやマキシマイザーで音圧を稼いでみるのがオススメ。
これをやることで、2Mixに潜むさまざまな問題が明確になり対処法も見えやすくなります。
スムーズにマスタリングを進める上で非常に重要なステップとなっておりますので、バッチリマスターしていきましょう!
※こちらの内容は動画でも学習することができます。
マスタリングの実践テクニック③:リミッター/マキシマイザーの初期設定をマスターしよう!
リミッター/マキシマイザーの初期設定
まずは、リミッターやマキシマイザーを使って簡単に音圧をアップしていきます。
マスタリング前の2Mixは-20LUFS〜-15LUFS程度の音量になっていると思いますので、これをCDレベルの音圧までアップさせてみましょう。
CDに明確な音量基準はありませんが、おおよそ-12LUFS〜-8LUFS程度を目指して調整を行っていきます。
(音量の大きなCDだと-6LUFS以上あるものも存在します。)
各メディアごとの音量基準は以下の記事をご覧ください。
今回は-8LUFSを目指して音量アップさせてみることにします。
リミッターをかける前の2Mixデータは、楽曲全体のLong Term(Integrated)が-18LUFSのデータを使用していますので、10dBほどマキシマイズするとおおよそ-8LUFS付近の音量になるはずです。
(実際には少なからず誤差が出ますが、現時点ではそこまで気にしなくてOKです。)
というわけで、マキシマイザーの設定は以下のような形にしました。
- OUT CELING:-1.0dB
- THRESHOLD:-11.0dB
マイキシマイザー適用前(-18LUFS)
マイキシマイザー適用後(-8LUFS)
「OUT CELING(アウトシーリング)」とは、デジタルオーディオにおける最大音量値である0dBからどれくらい余裕(ヘッドマージン)を設けるか?という設定です。
DAW上では、ヘッドマージンが全くない状態(=OUT CELING 0dB)でもクリッピングすることはまずありませんが、mp3などの圧縮フォーマットやアナログ信号への変換時にまれにクリッピングしてしまう恐れがあります。
したがって、一般的には-0.3dB〜-1dB、より安パイを取るならば-2dBほどのヘッドマージンを取ることになります。
今回はOUT CELINGを-1.0dBに設定した上で10dB分楽曲をマキシマイズしたいので、両者をあわせてスレッショルドを-11dBに設定した形です。
なお、どれくらいのヘッドマージンを設けるかを検討するには、ラウドネスメーターの「True Peak」の値を参照するとよいでしょう。
True Peakとは、その名の通り楽曲における正真正銘のピークを測定してくれるもので、単位は「dBTP」となります。
これが0dBTP未満に収まっていれば、クリッピングする恐れは劇的に少なくなります。
とくに音楽配信では-1dBTP以上(Spotifyでは-2dBTP)取ることが重要とされますので覚えておきましょう。
今回はCD用の音圧を想定ということで、True Peakの値は-0.3dBTPほどとしています。
ラウドネスメーターの様子
音圧アップ時に起きる問題と対処法
ここからは、リミッターやマキシマイザーを使って音圧をあげた場合に起きる問題とその対処法について考えてみましょう。
大きくわけて、以下の2点に分類されると思います。
- 【問題①】そもそも音圧が上がらない
- 【問題②】音圧は稼げたが音質が悪くなってしまった
【問題①】そもそも音圧が上がらない
リミッターやマキシマイザーで音圧アップをはかろうとしても、ある一定の音量から全く音圧が上がらなくなることもあります。
このとき考えうる原因は主に以下の3つです。
- 周波数バランスが悪い
- 定位のバランスが悪い
- 楽器数や音数が多すぎる
1. 周波数バランスが悪い
特定の周波数帯域に音が密集していたりすると、その部分がボトルネックとなってそれ以上音圧が上がらなくなってしまいます。
例えば、下図のような状態です。
このような問題が起こる原因は、そのほとんどがマスタリング以前にあります。
すなわち、アレンジが悪いかミックスが悪いかのいずれかです。
当然のことながら、周波数のバランスというのは、楽器の重ね方やボイシングなどアレンジ段階から考慮すべきもの。
また、ミックスにおける各パートのフェーダーバランスも大きく影響するでしょう。
したがって、周波数バランスの悪さに起因する音圧の問題に直面した場合は、最低でもミックスまで遡って調整したほうが良い結果になることがほとんどです。
EQなどで無理に調整する前に、まずミックスに戻ってバランスを見直しましょう。
2. 定位のバランスが悪い
周波数同様、特定の定位に音が固まってしまっている場合も音圧アップの妨げになります。
例えば下図のような状態です。
この場合も、ミックスまで遡って調整するのがよいでしょう。
素晴らしいミックスの楽曲は、左右のスピーカー間のスペースを満遍なく使って広々とした空間を実現しています。
そのような楽曲をリファレンスにしながら、改めて定位を振り直してみるとよいでしょう。
3. 楽器数や音数が多すぎる
楽器数や音数が多く、サウンドが飽和している場合も音圧アップの妨げとなるでしょう。
楽器や音符の数が増えるほど音のエネルギーは積み上がっていきますので、その分音圧は上がりにくくなります。
ですから、アレンジ段階から不要な音は極力排除し、合理性のある音の積み方を吟味しておく必要があります。
このような問題に遭遇した場合は、一度アレンジまで遡って各トラックの音が本当に必要なものなのかを見直してみるとよいでしょう。
【問題②】音圧は稼げたが音質が悪くなってしまった
次に、音圧は稼げたが音質が悪くなってしまったという場合の原因と対処法についてみていきましょう。
このような場合、リミッターがかかりすぎていることが原因であることがほとんどです。
以下の画像では、リミッターのリダクションメーターが-3dBを超えて作動しています。
リミッターはかかればかかるほど音が潰れ、その分音質も損なわれていきますので、なるべくリミッティングされないよう調整する必要があるでしょう。
目安としては、リミッターでのリダクション量は-1dB〜-3dB以内に抑えることが基本です。
これを超える場合は、リミッターより前段階で何かしらの処理を行うことによって、リミッターでのリダクションを最小限に収める工夫をしていきます。
もっぱらコンプレッサーを使うことになりますが、前述のように周波数や定位のバランスに起因する問題が潜んでいることも多いため、EQやステレオエンハンサーなどを使った調整も行うことになります。
当然、ミックスからやり直すのもひとつの手段となりますので、原因を冷静に分析しながら適切な方法を探っていきましょう!
まとめ
というわけで、マスタリングにおけるリミッター/マキシマイザーの初期設定について解説しました。
マスタリング初期段階でリミッター/マキシマイザーのみを使って音圧アップを試みることで、マスタリングを続行して問題ないか、あるいはアレンジやミックスを見直すべきかの判断を素早く行うことができるでしょう。
今日ご紹介した知識を参考に、ぜひチャレンジしてみてください!
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