マスタリングの下準備①:マスタリングのための制作環境を整えよう!モニター環境の改善法も!
こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。
今日は、マスタリング作業の事前準備として制作環境の整え方について解説していきます。
- マスタリングに必要な機材
- モニター環境を整えよう
- モニター環境を改善するアイディア
繊細な音作りが求められるマスタリングには適切な作業環境が不可欠。
そこで今日は、マスタリング作業を快適に行うために必要な機材、スピーカーのセッティング方法、モニター環境の改善方法についてお伝えしていきます。
マスタリングはもちろん、作編曲やミキシング作業にも役立つこと間違いなしですので、ぜひご活用いただければ幸いです!
※こちらの内容は動画でも学習することができます。
マスタリングの下準備①:マスタリングのための制作環境を整えよう!モニター環境の改善法も!
マスタリングに必要な機材
まずは、マスタリングを行う上で必須となる機材を確認していきましょう。
自宅でマスタリングを行うには、最低でも以下の機材が必要になります。
- パソコン
- DAWとプラグイン
- マスタリングソフト(任意)
- オーディオインターフェイス
- モニタースピーカー
- ヘッドフォン
マスタリングソフト以外はいずれもDTMをする上で必要なものとなりますので、すでにお持ちの方も多いかと思います。
それぞれ詳しくみていきましょう。
パソコン
DAWが動くパソコンであれば問題ありません。
マスタリングは、作編曲やミキシングと比べてそこまで負荷の高い作業ではありませんので、DAWが問題なく動くコンピュータであればストレスなく作業できるでしょう。
DAWとプラグイン
一般的なDAWがあればマスタリング作業は可能です。
また、プラグインもDAW付属のイコライザーやコンプレッサー、リミッター&マキシマイザーがあればひとまずは十分でしょう。
慣れてきたら、マスタリングに適したプラグインを追加で導入するのも良いですね。
強いていうなら、音量を正しく把握するためのメータープラグインは必ず用意しておきましょう。
RMSメーターやラウドネスメーターがあると、最終的な音圧を正確に計測できるので便利です。
各種メーターについての詳しい解説は以下の記事をご覧ください。
マスタリングソフト
CDをプレスするためのマスターデータを作る場合に必要になるものです。
曲間を調整したり、CDテキストを埋め込んだり、CDプレス用のDDPデータを書き出したりといった作業を行う場合に使用します。
楽曲単体でのマスタリングや、配信用としてWAVデータを作るだけならば必ずしも必要ではありませんのでご安心を。
マスタリングソフトの例:DSP Quattro
オーディオインターフェイス
パソコンにマイクやスピーカーなどの外部オーディオ機器を接続するための装置です。
DTMerのみなさまの中には、オーディオインターフェイスを使わずにパソコンから直接スピーカーに繋いでいる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、マスタリングやミキシングにおいてはいかに正確な音でモニターするかが勝負になりますので、必ずオーディオインターフェイスを用意してのぞみましょう。
オーディオインターフェイスの性能はサウンドの再現性に大きく影響しますので、できるかぎり良いものを選ぶと良いでしょう。
(最低でも10万円〜、できれば30万円〜のものがオススメ。)
オーディオインターフェイスについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので合わせてご活用ください。
モニタースピーカー
前述の通り、マスタリングでは正確にサウンドをモニターできる環境が重要になります。
したがって、スピーカーも良いものを選びましょう。
スピーカーには、純粋に音楽を楽しむための「リスニング用スピーカー(民生用スピーカー)」と、クリエイターやエンジニアがサウンドを正確にジャッジするための「モニタースピーカー」の2種類が存在します。
我々が使うべきものは後者となりますので、しかるべき品質のスピーカーを用意しておきましょう。
(こちらも、最低でも1本あたり7万円以上のものがオススメです。)
ヘッドフォン
自宅スタジオでの作業となると、スピーカーから満足に音を出せない場合も出てくると思います。
そんな時に役立つのがヘッドフォンです。
こちらもスピーカー同様、リスニング用とモニター用の2種類存在しますが、当然後者を選ぶことになります。
かつてはSONYの「MDR-900ST」がスタジオ用ヘッドフォンの定番モデルでしたが、現在はその後継機種である「MDR-M1ST」をはじめ、プロオーディオメーカー各社から質の高いモニターヘッドフォンが多数リリースされています。
実際にヘッドフォン売り場でサウンドを確認しながら、ご自身にあったヘッドフォンを選ぶといいですね!
SONY「MDR-M1ST」
YAMAHA「HPH-MT8」
モニター環境を整えよう
機材が準備できたら、次にモニター環境を整えていきます。
機材というのは、ただ接続して音が出るようになっただけでは十分とはいえません。
サウンドの状態を正しく把握するためには、適切なモニター環境を整える必要があります。
具体的には以下のポイントに着目してみましょう。
- リスニングポイントとスピーカーの位置関係
- スピーカーの角度と高さ
- スピーカーと壁との距離
- ディスプレイの位置
■ リスニングポイントとスピーカーの位置関係
リスニングポイント(自分の頭の位置)とスピーカーとの位置関係は、ちょうど正三角形になるよう配置すると良いでしょう。
頭の位置から60度の角度で左右のスピーカーを設置する形ですね。
また、それぞれのスピーカーは50cm〜1mほど離して設置するのが基本です。
■ スピーカーの角度と高さ
スピーカーは、内側の面が軽く見える程度の角度で内向きに設置します。
また、ツイーター(高音再生用のユニット)がちょうど耳の高さになるよう揃えるのがポイントです。
■ スピーカーと壁の距離
スピーカーを壁に近づけすぎると、低音域が膨らんでしまい正確なモニタリングができません。
したがって、スピーカーと壁の間には適度な距離を設けることが大事です。
■ ディスプレイの位置
正確なモニタリングを妨げる要因のひとつとして、ディスプレイの存在があります。
ディスプレイをスピーカーより前に設置してしまうと、スピーカーの音を遮ってしまうため正確なモニターができません。
最低でもスピーカーのフロントパネルよりも奥側に、できれば全く干渉しない位置に設置するのがオススメです。
どうしてもスピーカーよりも前面に設置する必要がある場合は、角度をつけて寝かせるなどの工夫をするとよいでしょう。
参考までに、ぼくの作業環境の写真を貼っておきます。
ディスプレイがスピーカーを全く遮っていないことがお分かりいただけると思います。
【参考】イナゲの制作環境
モニター環境を改善するアイディア
正しくスピーカーをセッティングできても、部屋の周波数特性などの要因によりさまざまな問題が発生する場合があります。
そんな時は以下のようなアイディアを試してみましょう。
- 吸音材を設置する
- DSPによる補正を行う
- スピーカースタンドを使う
吸音材を設置する
スピーカーから出た音が壁にぶつかり反射することで、正確なモニタリングができない場合があります。
そんな時は、吸音材を設置して音の拡散を防ぎましょう。
市販の吸音材を使ってもよいですし、DIYが得意な方は自作してもOKです!
吸音材:SONEX「PYR2 CHARCOAL」
DSPによる補正を行う
借家などでは、吸音材を壁に貼り付けるのが難しい場合もあります。
そんな時は、DSPによる補正を利用するのもひとつの手です。
現在は、部屋の周波数特性を分析し、問題のある帯域を自動補正してくれるソフトウェアやスピーカーが数多くリリースされています。
有名どころとしては、ソフトウェアならばIK Multimedia社の「ARC System」、スピーカーならばGenelec社のSAM搭載スピーカーが挙げられます。
これらを用いることで、モニター環境が一気に改善されることも少なくありませんので、にっちもさっちもいかない場合は導入してみるのも良いでしょう。
音場補正ソフトウェア:IK Multimedia「ARC System」
Genelec SAM搭載スピーカー「8330AP」
スピーカースタンドを使う
スピーカーを机に直置きしてしまうと、適切な高さに設置できなかったり、振動が机に伝わって正確なモニターができなかったりとさまざまな弊害が起こる場合があります。
そんな時は、スピーカースタンドを使うことで解消されることも多いので、導入してみるとよいでしょう。
良いスタンドほどスピーカーの制振機能に優れており、悪影響を最小限に止めることができます。
また、スタンドの導入が難しい場合はインシュレーターを使って制振するのもひとつの手ですし、スタンドとの併用も効果的です。
スピーカースタンド:ULTIMATE「MS90/36B」
インシュレーター:audio-technica「AT6099」
まとめ
というわけで、マスタリングを行うために必要な作業環境の作り方について開設しました。
とにもかくにも、マスタリングには正しいモニター環境が不可欠。
ちょっとした工夫で劇的にサウンドが改善することも少なくありませんので、今日お伝えしたポイントを参考に環境をブラッシュアップしてみてください!
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