オーケストラのモックアップ実践⑤:金管楽器の打込みテクニック・ロングノート編
こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。
今日からは金管楽器のモックアップ実践テクニックについて解説していきます。
まずは、ロングノート系フレーズのモックアップについて。
- ロングノート系フレーズのモックアップ5ステップ
- モックアップ5ステップのポイント
基本的なテクニックは木管と共通しますが、一方で金管ならではのポイントも数多く存在します。
その特徴を生かした打込みを習得するためにも、ぜひご活用いただければ幸いです。
なお、金管においても「管楽器全体に共通する3つのポイント」を前提に話を進めていきます。
まだご覧になっていない方は、まずそちらからお読みいただければと幸いです。
オーケストラのモックアップ実践⑤:金管楽器の打込みテクニック・ロングノート編
ロングノート系フレーズのモックアップ5ステップ
金管のロングノート系フレーズを打込む場合にも、以下の5つのステップに沿って実践しましょう。
- フレーズをベタ打ちする
- 発音タイミングをバラつかせる
- デュレーションの調整
- ベロシティでベースとなる音色を決定
- エクスプレッションで抑揚をつける
例によって、まずはベタ打ちしただけの音源をお聞きください(ステップ1のみを行った状態)
ここから5つのステップを全て実践することで以下の音源のようになります。
ベタ打ち音源と比較して、金管らしいハリのあるフレーズに仕上がりましたね!
ここまでの過程を1つ1つご説明していこうと思います。
ステップ1:ベタ打ちでフレーズを打ち込む
まずは定番。ベタ打ちでフレーズを打込んでいきましょう。
この過程は、オーケストレーションの解説でお伝えしたスケッチづくりによく似ていますね。
細かい調整は後回しにして、まずは荒くとも全体像を固めることで以後の作業に集中できるという寸法です。
ステップ2:発音タイミングをバラつかせる
次に発音タイミングの調整をしていきましょう。
木管同様金管も1パート1人での演奏が前提となりますので、打込む場合にはある程度バラつきがあったほうが自然な仕上がりになります。
ヒューマナイズ機能などを用いて人間味のある演奏になるように発音タイミングを調整していきます。
ただし、ユニゾン音源を使って複数のパートによるユニゾンフレーズを打込む場合には、下手にタイミングにバラつきを出してしまうと不自然な仕上がりになりますので注意しましょう。こちらについては以後の記事で改めて解説します。
ステップ3:デュレーションの調整
次にデュレーションの調整をしていきます。
着目すべきポイントは木管同様以下の2点となります。
- レガート(一息)で演奏する部分はどこか?
- 吹き直す部分(タンギングをする部分)はどこか?
レガートについては、極力レガート対応音源を使うよう心がけましょう。
一方、金管の打込みで重要なポイントとなるのが「吹き直す部分(タンギングをする部分)」の打込みです。
タンギングを表現する際には、連続するノート同士の隙間を作ることが重要でしたね。
金管の場合、その隙間を広めにとって打込むとそれらしくなります。
実際の打ち込みとしては木管同様以下の形となりますが、前述のとおりタンギングの際にはノート同士のインターバルを広めにとって打込むことを心がけましょう。
- レガート:ノートの末尾を次のノートの頭にかぶせる
- タンギング:ノート同士の間にわずかな隙間(木管よりも気持ち広め)を作る
また、当然ながらブレスについても考慮する必要があります。
といっても、金管は(木管に比べて)楽器ごとの息の消費量がイメージしやすく、大きい楽器ほど息の消費が大きくなる傾向があります。
金管の発音原理はどの楽器も同じであるため、管のサイズが大きいほど息の消耗も増えると覚えておけば問題ありません。
楽器の種類 | 音域 | 強弱 | |
息の消費量大 | チューバ | 高音域 | 大音量 |
息の消費量中 | トロンボーン、ホルン | 中音域 | 中音量 |
息の消費量小 | トランペット | 低音域 | 小音量 |
ステップ4:ベロシティでベースとなる音色を決定
続いて、ベロシティでフレーズ全体のベースとなる音色を決定していきます。
金管は強弱表現の幅が広い分、音量ごとの音色の変化も大きくなります。
「mf(メゾフォルテ)」以下と「f(フォルテ)」以上とで音色の傾向が分かれる点は木管と同じですが、金管はその差が非常に顕著。
もはや別の楽器くらい音色が変わるため、その点考慮しておきましょう。
音色 | ベロシティの目安※ | |
mf(メゾフォルテ)以下 | 柔らかめの音色 | 1〜90 |
f(フォルテ)以上 | 鋭く輝かしい音色 | 91〜127 |
※ベロシティの値は音源によりけりですのであくまで目安です。
「mf(メゾフォルテ)」以下の音色
※音源の性質上2つの音源に音量差がありますので音量設定にご注意ください。
「f(フォルテ)」以上の音色
また、木管に比べて強い音量で打込んだ場合のアタック感はことさら顕著になっていきます。
ベロシティによる音色とアタック感の調整は、このあと調整するエクスプレッションと並んでサウンドの質感や表現の幅を決める大事な要素。
手間のかかる作業ではありますが、その分リアルなサウンドに近づいていきますので丁寧にエディットしていきましょう!
ステップ5:エクスプレッションで抑揚をつける
仕上げにエクスプレッション(CC#11)で抑揚をつけていきましょう!
基本的なポイントは木管楽器のモックアップで解説したことと変わりません。
まずは上の記事で解説した4つのポイントを意識しながら打込んでみましょう。
強烈な強弱表現のモックアップ
金管楽器は幅広いダイナミックレンジが魅力。
ここからは、そんな金管の特徴を最大限に活かした強烈な強弱表現する場合のポイントについて解説していきます。
- ベロシティクロスフェード対応音源を使う
- エクスプレッションは「凹型曲線」で書く
- fp(フォルテピアノ)は出だしをしっかり聴かせる
■ ベロシティクロスフェード対応対応音源を使う
何も金管だけに限った話ではありませんが、よりリアリティのある打込みをする上でベロシティクロスフェードに対応した音源は必須といえます。
ベロシティクロスフェードとは、強弱の異なる2つのサンプルをクロスフェードさせることで滑らかな音色の変化を得るための機構。
モジュレーションホイール(CC#1)にその機能が割り当てられている場合、「モジュレーションクロスフェード」と呼ばれ、管楽器など音が持続する楽器の強弱表現をするのに欠かせない機能となっています。
同様の機能は以下の記事でも解説しておりますので、ぜひ合わせてご活用ください。
昨今のハイエンドなオーケストラ音源には必ずこの機能が搭載されており、とくに金管でメリハリある強弱表現をしたい場合には必須の機能となっています。
■ エクスプレッションは「凹型曲線」で書く
エクスプレッションで自然な強弱表現をしたい場合、通常はふんわりとした山なり曲線(凸型曲線)を描くことが多いと思います。
一方、金管楽器による強烈なクレッシェンドを表現したい場合には、「ノ」の字型の曲線(凹型曲線)を用いるのがオススメです。
凹型曲線でのクレシェンドは後半にいくほど値が急激に変化するため、強烈な音量と音色の変化を得ることができます。
エクスプレッションの形状によるニュアンスの違いを聴き比べてみましょう。
凸型エクスプレッション
直線型エクスプレッション
凹型エクスプレッション
■ fp(フォルテピアノ)は出だしをしっかり聴かせる
金管楽器では、音の出だしを強く演奏したのち一気に音量を落とす「fp(フォルテピアノ)」、そしてその状態からのクレッシェンドがよく用いられます。
このような「fp」をエクスプレッションで表現する際のポイントは、出だしの「f(フォルテ)」部分を十分に聴かせてからエクスプレッションを下げること。
あまりにも早くエクスプレッションを下げてしまうと、不自然なニュアンスになってしまいます。
「fp」を用いたフレーズを打込む際には、出だしをしっかり聴かせるよう心がけましょう。
フォルテピアノの出だしが不自然な例
自然なフォルテピアノの例
まとめ
というわけで、金管のロングノート系フレーズモックアップについて詳しく解説しました。
木管と共通する部分は多いものの、金管ならではの特徴を踏まえた上で実践してみると、細かい部分での違いなどに気づくことも多いはずです。
今日ご紹介したテクニックを繰り返し練習して、金管らしいサウンドを打込めるようトレーニングしていきましょう!
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