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オーケストラのモックアップ実践②:木管楽器の打込みテクニック・ロングノート編

こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。

今日からは、管楽器のモックアップ実践テクニックについて詳しく解説していきます。

まずは木管楽器のロングノート系フレーズのモックアップから。

  • ロングノート系フレーズモックアップ5ステップ
  • モックアップ5ステップのポイント

ロングノート系フレーズとは、レガート奏法など長い音価をともなうフレーズのこと。

これらをリアルに打込むための流れを5つのステップにわけてご紹介して行きます。

今日のお話は、前回の記事でご説明した「管楽器全体に共通する3つのポイント」が前提となっておりますので、まだご覧になっていない方はそちらを先にお読みくださいね。

 

オーケストラのモックアップ実践②:木管楽器の打込みテクニック・ロングノート編

ロングノート系フレーズのモックアップ5ステップ

ロングノート系フレーズを打込む際の5つのステップは以下の通りです。

  1. フレーズをベタ打ちする
  2. 発音タイミングをバラつかせる
  3. デュレーションの調整
  4. ベロシティでベースとなる音色を決定
  5. エクスプレッションで抑揚をつける

まずは、ベタ打ちしただけの音源をお聞きください。(5ステップのうち1だけを行った状態。)

この状態から上記5ステップをすべて実践するとこのようになります。

とてもイキイキとしたフレーズに仕上がったのがお分かりいただけると思います。

このように、リアルなサウンドに仕上げていくためのステップを順を追って解説していきます。

ステップ1:ベタ打ちでフレーズを打ち込む

まずはシンプルに、フレーズをそのまま打込んでいきましょう。

ステップ入力でも構いませんし、マウスでポチポチ打込んでもOKです。

細かい調整は以後のステップで行いますので、ここでは機械的に打込んでしまって問題ありません。

ステップ2:発音タイミングをバラつかせる

次に、発音タイミングの調整を行います。

管楽器は原則として1パート1人での演奏ですから、グリッドジャストで打込むよりも発音タイミングにある程度バラつきがあったほうがそれらしくなります。

ヒューマナイズ機能などを用いて人間味が出るよう発音タイミングを調整してきましょう。

※ステップ1の段階でリアルタイム入力しており、自然なタイミングのバラツキが得られている場合はこの過程を省略しても構いません。

ステップ3:デュレーションの調整

次に、デュレーションの調整していきましょう。

ここで着目すべきポイントは以下の2点です。

  • レガート(一息)で演奏する部分はどこか?
  • 吹き直す部分(タンギングをする部分)はどこか?

あらかじめ明確なイメージをもって調整するのが理想ですが、最初からありありとイメージするのは難しいかもしれません。

そんなときは、打込んだフレーズを歌ってみましょう。

実際に歌ってみると、レガートさせたい部分と音を区切りたい部分が自然と湧き上がってくると思います。

その結果を、そのままデータに反映させていけばOKです。

実際の調整としては、以下のように行います。

  • レガート:ノートの末尾を次のノートの頭にかぶせる
  • タンギング:ノート同士の間にわずかな隙間を作る

■ ブレスを考慮することを忘れずに

レガートで打込む際に注意しておきたいことがあります。

それは、「ブレス(息継ぎ)」です。

打込みならばブレスを無視して無限に演奏を続けることも可能ではあります。

しかし、より人間らしいサウンドを求めるならば、ブレスポイントを作る(=適度にフレーズを区切る)ことも大事ですね。

ブレスの位置を判断する上でも、フレーズを歌ってみるのが有効ですので実践してみてください。

なお、楽器の種類や音域、強弱によって演奏に必要な息の消費量も異なります。

以下の点を念頭において決めましょう。

楽器の種類音域強弱
息の消費量大フルート高音域大音量
息の消費量中クラリネット中音域中音量
息の消費量小オーボエ・バスーン低音域小音量

※とくに注意すべき楽器はフルートで、なんと息の消費量はチューバよりも多いと言われています。リードやマウスピースによって抵抗が生じる他の楽器と違い、フルートは吹き込んだ息がそのまま楽器の外へ抜けていってしまいます。(3分の1〜半分は音にならずに抜けてしまうそうです。)

これらを踏まえて調整したものが以下のデータです。

自然な息継ぎのイメージが湧く音源になったと思います。

ステップ4:ベロシティでベースとなる音色を決定

次に、ベロシティでフレーズ全体のベースとなる音色を決定していきましょう。

アコースティック楽器は、弱く演奏した時と強く演奏した時とで音色の印象も大きく変わります。

したがって、ベロシティを調整しながらフレーズにマッチする音色をさがしていきましょう。

傾向としては、以下のようになります。

音色ベロシティの目安※
mf(メゾフォルテ)以下柔らかめの音色1〜90
f(フォルテ)以上鋭く輝かしい音色91〜127

※ベロシティの値は音源によりけりですのであくまで目安です。

「mf(メゾフォルテ)」以下の音色

※音源の性質上2つの音源に音量差がありますので音量設定にご注意ください。

「f(フォルテ)」以上の音色

 

フォルテ以上の音色では、とくにアタック(=音の立ち上がり)に変化が現れることも多く、強めのタンギングにより生じる「ポッ!」という破裂音のようなものが加わってきます。

タンギングを使って吹き直す箇所では、このアタック感が重要になってきます。

該当箇所のベロシティを調整し、タンギングによる自然なアタック感を表現していきましょう。

ベロシティを調整前

ベロシティを調整後

※音源によっては、ベロシティによる音色の変更やアタックの調整が効かないものもありますのでご注意ください。

ステップ5:エクスプレッションで抑揚をつける

最後にエクスプレッション(CC#11)を書き込んで抑揚をつけていきましょう。

音源によっては、モジュレーションホイール(CC#1)で抑揚をつけるタイプもありますので、お手持ちの音源の仕様に合わせて適宜選択してください。

詳しくは以下の記事で解説しております。

エクスプレッションを書く際のポイントは以下の4点です。

  • フレーズ末尾はしっかり減衰させる
  • タンギング直前の音も軽く減衰させる
  • ロングトーンは発音後わずかに減衰させる
  • 耳の錯覚に注意する

それぞれ詳しく解説していきます。

■ フレーズ末尾はしっかり減衰させる

フレーズの最後はしっかりと減衰させましょう。

クレッシェンドでフレーズを終わりたい場合など明確な意図がある場合は別ですが、原則としてフレーズの末尾はエクスプレッションを減衰させてフェードアウトさせるようにします。

要は、フレーズをぶつ切りで終わらせないということですね。

※この処理をしたことで音の聞こえ方が変わり、デュレーションの再調整をする場合もあります。

エクスプレッション処理前

エクスプレッション処理後

明らかに後者の方が自然な印象に仕上がっているかと思います。

■ タンギング直前の音も軽く減衰させる

フレーズの途中であっても、タンギングで吹き直す直前の音は軽く減衰させた方がリアルになります。

この場合は、フレーズ末尾ほど大袈裟に減衰させると不自然になってしまうこともあります。

加減を調整しながら、自然に聞こえる減衰具合を決めていきましょう。

エクスプレッション処理前

エクスプレッション処理後

■ ロングトーンは発音後わずかに減衰させる

管楽器におけるロングトーンでは、音の出だしよりも伸ばしている最中の音量がやや落ち着く傾向があります。

とくに、強く演奏した場合にそれが顕著です。

したがって、ロングトーンを打込む際には、ノートの発音後エクスプレッションをわずかに減衰させてこの現象を再現しましょう。

またフレーズにもよりますが、該当部分の手前のエクスプレッションをほんのり膨らませることでフレーズ全体の音量感が安定し、より自然な仕上がりになります。

一定の音量で伸ばした場合

わずかに減衰させた場合

前者が一本調子で伸ばしているのに対し、後者はより自然な仕上がりに聞こえるかと思います。

このときのコツはエクスプレッションを下げすぎないこと。

あからさまに音量を変えるというよりも、アタックの瞬間より少し落ち着いた印象に仕上げるイメージで書き込みましょう。

このテクニックを今回の打込みに反映させたものが以下のものになります。

■ 耳の錯覚に注意する

オーケストレーション実践の解説で「体感上の音量・音高」について解説したのを覚えていますか?

人間の耳というのはおもしろいもので、仮に同じ音量・音高で演奏していても、相対的に大きく(小さく)聞こえたり、高く(低く)聞こえたりするということがよくあるものです。

このような耳の錯覚は、モックアップを行う上でも注意しておきたい点。

とくに以下の2つのフレーズが登場する場合は気をつけておきましょう。

  • 駆け上がり(下がり)
  • 同音連打
■ 駆け上がり(下がり)

駆け上がり、駆け下がりなど、順次進行で上行下行するフレーズでは、音程の変化にともない音量も変化して聞こえるものです。(仮に一定の音量で演奏していたとしても。)

例えば、駆け上がりならばクレッシェンドしているように、逆に駆け下がりならばデクレッシェンドしているように聞こえます。

したがって、不用意な音量の変化をつけたくなければ、それぞれの特徴をキャンセルするようなエクスプレッションを書く必要があるでしょう。

駆け上がりによる聴感上のクレッシェンドをキャンセルした例

ただし個人的には、駆け上がり・駆け下がりいずれの場合においてもエクスプレッションでクレッシェンドをさせることをオススメしています。

これにより、駆け上がりの場合はその勢いが増し、駆け下がりの場合は聴感上のデクレッシェンドをキャンセルして聴きやすくすることができます。

駆け上がりをさらにクレッシェンドした例

駆け下がりによる聴感上のデクレッシェンドをキャンセルした例

■ 同音連打

同音連打は、同じ音を繰り返しているうちに耳が慣れてしまうからか、最初の音と比べて後続の音が小さく聞こえる傾向があります。(こちらも、仮に同じ音量であってもそう聞こえます。)

したがって、同音連打の音量をキープしたい場合は、ほんの少しエクスプレッションを上げてその効果をキャンセルしましょう。

エクスプレッション処理前

エクスプレッション処理後

まとめ

というわけで、ロングノート系フレーズのモックアップテクニックについて詳しく解説しました。

今日ご紹介した5つのステップをしっかりと実践しながら打込むことで、リアルなサウンドにグッと近くはずです。

迷ったときは基本に立ち返りつつ、生演奏を聞いたりフレーズを歌ったりすることでイメージが明確になりますので、そちらも合わせて実践してみてください。

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