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弦楽器の楽器法⑤:弦楽器の演奏法とアーティキュレーションを理解しよう!前編

こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。

今日からは、弦楽器の演奏法について解説していきます。

弦楽器の演奏法は多岐にわたるため、前編後編の2回に分けてお届けしていきますね。

今回は前編として「左手(運指)の技術」についてお話していきます。

  • 左手を使った運指の技術
  • 左手の技術が主体となる各種演奏法

弦楽器はどれも楽器の構造が似ているため、演奏法についてはいずれも共通と考えていただいて問題ありません。

1つ覚えてしまえば他の弦楽器にも応用が効きますので、着実に理解していきましょう!

 

弦楽器の楽器法⑤:弦楽器の演奏法とアーティキュレーションを理解しよう!前編

弦楽器の楽器法⑤:弦楽器の演奏法とアーティキュレーションを理解しよう!前編

左手を使った運指の技術

擦弦楽器は、左手による運指と右手による擦弦(弦で弓を擦ること)によって発音を行います。

今回は、そのうち「左手の技術」、すなわち運指に関する技術について解説していきます。

■ 弦楽器の指番号について

弦楽器では、運指に使用する指それぞれに番号が割り当てられています。

  • 親指:0
  • 人差し指:1
  • 中指:2
  • 薬指:3
  • 小指:4

ピアノでは親指から小指に向かって1~5の番号が割り振られますが、弦楽器の場合は人差し指から小指に向かって1~4の番号が割り当てられています。

親指が0番となっているのは、原則として運指には使用しないからです。(チェロコントラバスの高音域では例外的に使用することもあります。)

1〜4の指をそれぞれどのように使用するかを詳しく解説していきます。

■ ヴァイオリン、ヴィオラの運指(全音階)

まずはヴァイオリンヴィオラで全音階を演奏する際の運指表を見てみましょう。

全音階の演奏では、1つの音に1本ずつ指が割り当てられているのがわかりますね。

基本的な運指はどのポジションでも一定で、必要に応じて左手の位置(ポジション)を変えて演奏をします。

■ ヴァイオリン、ヴィオラの運指(半音階)

次に半音階の運指についてみてみましょう。

半音階の場合、半音関係にある音程(増1度関係の音程)は指をすべらせて演奏します。

例えば、ド→ド#のような動きをする際には、使う指は変えずに指を滑らせることで演奏を行うわけですね。

ですから、これをレガートで演奏しようとした場合、わずかなポルタメントが発生します。

弦楽器の半音階がぼやけがち(特に下りの半音階)な印象になってしまうのは、この運指の影響なのです。

■ チェロの運指

つぎに、チェロの運指をみてみましょう。

まず全音階についてですが、チェロの低音域では押さえる指の幅を広くとる必要があり、ヴァイオリンやヴィオラと同じ運指での演奏はできません。

したがって、「シフト」というテクニックでポジションを変えながら演奏することになるわけですが、これ自体はさして気にする必要はありません。

そういうテクニックがあるということだけ覚えておきましょう。

一方半音階の場合は、隣接する半音に1つずつ指を割り当てて演奏します。

(ヴァイオリン&ヴィオラにおける全音階の演奏と同じシステムと考えればよいでしょう。)

■ コントラバスの運指

コントラバスについては、チェロ同様、全音階の運指には明快な法則がないので説明は省略します。

半音階については、チェロよりもさらに弦が長いためその分指の間隔も広くなります。

1と2の指(人差し指と中指)ならばかろうじて半音を押さえることができますが、2と3の指(中指と薬指)および、3と4の指(薬指と小指)では、半音を抑えるのに十分な間隔を取れないのです。

したがって、コントラバスで半音階を演奏する場合は、開放弦の間を2と4の指を往復させて演奏します。

左手の技術が主体となる各種演奏法

ここからは「左手の技術が主体となる各種演奏法」について解説していきます。

以下のとおりです。

  • 重音
  • 指のトレモロ(トリル)
  • グリッサンド
  • ハーモニクス

■ 重音について

弦楽器では、複数の弦を同時に弾くことで「和音」を演奏することができます。

これが「重音」と呼ばれるテクニックです。

弦楽器の重音には以下の3種類あります。

  • ダブルストップ(2重音)
  • トリプルストップ(3重音)
  • クォドルストップ(4重音)

それぞれ詳しく解説していきます。

■ ダブルストップ(2重音)

隣り合う2つの弦を同時に演奏し、2和音を演奏するテクニックです。

ダブルストップを演奏する場合、開放弦を用いることで比較的自由に重音を鳴らすことが可能になります。

演奏する2つの弦のうち片方ないし両方を開放にすることで、演奏の難度もぐっと下がり容易にダブルストップを演奏することができます。

一方、2つの弦を両方とも押弦する場合は注意が必要です。

2本の弦双方を押弦する必要がある場合は、同じポジション内の音であることが大前提となります。

ポジションの異なる運指を同時に行うことは不可能だからです。

先ほど掲載したポジション表をもとに、演奏可能な音程を探ってみるとよいでしょう。

なお、ヴァイオリンとヴィオラでは、完全5度の重音が他の音程に比べて苦手という特徴があります。

不可能ではないものの、開放弦を用いる場合を除いては完全5度の重音は避けた方が無難でしょう。

逆にチェロでは、完全5度の重音が非常に得意です。

また、同じポジション内であっても、ハイポジションでの重音は難しくなります。

そもそも単音の発音も難しい音域ですから、重音ではなおさらというわけですね。

これは演奏者の技量によっても変わるところですから、不安な場合は事前に確認するのが良いでしょう。

ダブルストップの演奏動画

英語の動画ですが、鳴らしている音を楽譜で表示しながら演奏してくれていますのでわかりやすいです。

■ トリプルストップ

トリプルストップは、3和音を演奏するテクニックです。

3和音といっても、厳密な意味で3つの音全てを同時演奏できるわけではありません

その理由は、擦弦楽器の構造にあります。

擦弦楽器では4本の弦が山なりに配置されているため、3本以上の弦を同時に演奏する(=弓で擦る)ことは物理的に不可能なのです。

したがって、同時に擦ることのできる弦は最大で2本まで。

それ以上は、アルペジオ風の演奏になることを覚えておきましょう。

トリプルストップの場合、2本+2本で分けて演奏をしていきます。

使用する3本の弦のうち、真ん中の弦は先発の2和音と後発の2和音両方で演奏しますので覚えておきましょう。

トリプルストップの考え方

使用する3つの弦のうち1つか2つが開放弦の場合は、ダブルストップでお伝えした点に気をつけていただければ問題ありません。

やはり問題になるのは3つの弦それぞれを押弦する場合です。

以下の2点に気をつけましょう。

  • 3つの音が同じポジション内にあり、かつ同時に押さえられる指使いであること。
  • 同じポジション内の音でも、その和音の間に使わない弦があるのはNG。

トリプルストップの演奏動画

D+A→A+F#のDメジャーのコードを演奏するトリプルストップの演奏の様子です。

■ クォドルストップ(4重音)

4つの弦全て使って4和音を演奏するテクニックです

前述の通り、厳密に同時発音可能なのは2音までですから、クォドルストップの場合も2本+2本で分けて演奏をします。

トリプルストップと違って、4本の弦全て用いるため弦の重複はありません。

クォドルストップの考え方

こちらも、開放弦が含まれる場合はこれまでにお伝えしたポイントに注意していれば問題ありません。

開放弦を使わない場合の条件は以下の通りとなります。

  • 4つの音が同じポジション内にあり、かつ同時に押さえられる指使いであること。

トリプルストップやクォドルストップは、弦楽器の演奏経験がないとイメージするのが難しいかと思います。

演奏可能か判別が難しい場合は、奏者さんに訊ねるのがいいでしょう。

なお、コントラバスで重音をすることは稀です。

音域が低いので和音も濁ってしまうことが多く、効果的でない場合が多いからです。

■ 重音とディヴィジの違いについて

ストリングスセクションで和音を演奏する際、前述の「重音」のほかに、和音の構成音を複数人で分担して演奏する「ディヴィジ」とよばれるスタイルもあります。

それぞれの違いは、以下の通りです。

重音の場合は奏者一人一人が和音を演奏することになるため、音量を落とさずパワフルな演奏をすることができます。

しかし、単音の演奏よりも難しいテクニックが求められることから、複雑なフレーズを演奏するのには不向きです。

一方ディビジは和音の構成音ごとに奏者が分散して演奏するため、演奏の精度を保持したまま複雑なフレーズでも美しく演奏することができます。

その分どうしてもパワーダウンしてしまう点は否めません。

それぞれのメリットデメリットを踏まえ、適宜選択していきましょう。

■ 指のトレモロ(トリル)奏法

管楽器の演奏法にも登場した、特定の2音間を高速で往復する奏法です。

長短2度の音程の往復であれば「トリル」と呼ばれることが多いのですが、今回は3度以上の往復も含めて「トレモロ」と表現しています。

弓を高速で往復させてガサガサしたサウンドを生み出す「(弓の)トレモロ奏法」とは異なるものです。

ややこしいのですが、指の動作が主体の奏法なのか、弓の動きが主体の奏法なのかでお考えください。

指のトレモロ(トリル)奏法

弓でのトレモロ奏法

指のトレモロ、トリル奏法を行う場合のポイントは以下の3点です。

  • 同じポジション内で演奏可能な音同士なら演奏可能
  • 開放弦を絡めると演奏効果が悪くなるため、他の弦楽器に任せるなど対策が必要
  • 複数人でこの奏法を行うと2音同時に鳴っているような響き方になる

■ グリッサンド(ポルタメント)

指定された2音間で指を滑らせて演奏するテクニックです。

トロンボーンのスライドと同じように、滑らかな音程変化を得ることができます。

ヴァイオリンのグリッサンド参考動画(1:00あたりから~)

■ ハーモニクス

左手で弦に軽く触れることで、触れた位置に応じた倍音を演奏するテクニックです。

ギターなどのハーモニクスと全く同じ原理です。

透明感のある美しいサウンドが特徴で、繊細な表現にマッチします。

ハーモニクスの参考音源

ハーモニクスには、開放弦の上で行う「自然ハーモニクス」と、通常の押弦をした上で別の指でハーモニクス音を作る「人工ハーモニクス」の2種があります。

それぞれ、以下の通りです。

自然ハーモニクス

自然ハーモニクスは、開放弦を用いたハーモニクスです。

例えば、ヴァイオリンのG線を例に考えてみましょう。

この弦の半分の長さの位置に軽く指を触れて演奏をすると、弦本来がもつ「G3」のオクターブ上の「G4」の音が得られます。

弦長の半分の地点に触れることでちょうど1/2の長さの節を作り出し、元の2倍の振動数(=1オクターブ上)の音が得られるというわけですね。

同様の考え方で、弦を3、4、5、6等分していき、できた節から倍音を得るのが自然ハーモニクスとなります。

自然ハーモニクスの記譜

記譜する場合は以下のいずれかのように書きます。

  • 基音を通常の音符で記譜し、触れる節に相当する音符をひし型の符頭で書く
  • ハーモニクスとして鳴らしたい音を実音で記譜し、その上に「◯」を書く

自然ハーモニクスの場合は後者の「◯」を書くスタイルがわかりやすくオススメです。

■ 人工ハーモニクス

開放弦を基音とした倍音列以外の音を演奏したい場合は、人工ハーモニクスという技法を用います。

通常の押弦で作った音程に、別の指を添えてハーモニクスを作るテクニックです。

目的の倍音が含まれる基音を押弦し、そこからさらに指を添えることでハーモニクスのサウンドを手に入れるわけですね。

自然ハーモニクスとは違い遠い位置にある節には指が届かないので、4等分した一番手前の節(1/4地点)に指を添えて演奏するのが一般的。

これにより、第4倍音(=2オクターブ上)が得られるというわけです。

人工ハーモニクスの記譜

1/4地点の節は元の音の完全4度上となりますので、以下のように記譜します。

  • 基音を通常の音符で記譜し、完全4度上の音符をひし型の符頭で書く

なお、3等分、5等分のハーモニクスも可能ですが演奏困難かつ音量が弱いのでオーケストラではあまり用いられません。

また、コントラバスで人工ハーモニクスが用いられることはほぼないことも覚えておきましょう。

まとめ

というわけで、弦楽器の演奏法前編「左手の技術」についてお伝えしました。

左手だけでも相当なボリュームとなりましたが、ここにさらに右手の弓のテクニックが加わってきます。

弦楽器がいかに表現力に優れた楽器であるかが感じられますね。

次回は、「右手の奏法=ボウイング」による様々な奏法をご紹介しますのでそちらもお楽しみに!

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