ジャンル別エレキアレンジ⑥:ポップス、AORのアレンジと打込みテクニックをマスターしよう!
こんにちは、OTOxNOMA認定講師、作曲家の青山シゲルです。
今日は「ポップス、AOR」におけるエレクトリックギターのアレンジと打込みテクニックについて解説していきます。
- ポップス、AORとは?
- ポップス、AORの特徴
- ポップス、AORのバッキングパターン
- 各種打込みテクニック
ここではAOR以降のポップス〜ロックで見られる、洗練されたお洒落なギターサウンドやプレイについてご紹介したいと思います。
「ポップス」と括ってしまうと大変広くなってしまうのですが、音楽ビジネス産業が成長する過程で誕生した、より都会的で洗練されたサウンドと捉えていただければOKです。
現代のJ-Popでも多用されるテクニックが満載ですので、しっかりとマスターしていきましょう!
※こちらの内容は動画でも学習することができます。
ジャンル別エレキアレンジ⑥:ポップス、AORのアレンジと打込みテクニックをマスターしよう!
ポップス、AORとは?
「AOR」とは「Adult Oriented Rock」の略で、簡単に表現すると「大人向けロック」のような意味合いで使われます。
この言葉が使われるようになったのは1970年代後半から。
ボズ・スキャッグスなどのAOR系アーティストは、それまでのバンドによる荒々しいロックとは対称的に、スタジオミュージシャン、セッションミュージシャンを積極的に起用し、都会的なサウンドを生み出していきます。
その後、80年代に入りロックが産業化していくと、AORライクな洗練されたサウンドやギタープレイはごく一般的なものとなります。
現在では1980年前後の日本のニューミュージックや歌謡曲など、当時の洋楽AORに影響を受けた楽曲が「シティポップ」と呼ばれ海外で再評価されるという面白い現象も起きています。
ここでは、「AOR」「80s Pop」から日本のシティポップに至るまで、洗練されたギターサウンドが特徴的な楽曲をいくつか紹介します。
『Don’t Talk』ラリー・リー
『Is This Love』ホワイト・スネイク
『Call It Love』ポコ
『Sparkle』山下達郎
ポップス、AORの特徴
ここからは、ポップス、AORの音楽的特徴について解説していきます。
ポップス、AORギターの特徴
この頃のポピュラー音楽の傾向として、煌びやかなシンセやキーボードの多用、ゲートリバーブを使った派手なドラムサウンドなど、キラキラとした派手なサウンドが好まれました。
そんな中、ギターもそれらに負けない音作りをする必要があり、高域を強調しキラキラさせた音色と、空間系エフェクトを駆使した都会的なサウンドが流行るようになります。
また、フレーズ面においてもペダルトーンや分数コードなどを多用し、キャッチーで耳あたりの良い音づかいをする点も特徴です。(楽曲自体がそういう傾向のものが多いですね。)
往年のロック的な荒々しいサウンド&プレイは影を潜め、より洗練された演奏がトレンドだったといえます。
ポップス、AORのサウンドメイク
ここでは80s特有の空間系エフェクトを駆使した、キラっとしたクリーンサウンドを作ってみましょう。
ギターはストラトのハーフトーンをチョイス、アタック感が目立ちやすいためこの手のジャンルでは多用されます。
今回は、GuitarRigのみではなくDAW側のスタジオエフェクトも駆使して作りました。
接続順は以下のような形です。
「イコライザー」→「GuitarRig」→「エキサイター」→「コーラス」→「ディレイ」
Guitar Rig、エフェクトの設定
サウンド(ストラト ハーフトーン)
イコライザーの設定
80Hz以下をローカットし重すぎないサウンドに。
さらに煌びやかさを出すため3.7kHzをブースト、モヤモヤ感を削るため280Hzをカットしました。
GuitarRigの設定
アンプはあえて真空管アンプを使わず、トランジスタアンプの名機「JC-120」を模した「JAZZ AMP」をセレクトしました。
とにかく歪みのないクリーントーンが出せることがこのアンプの強みです。
アンプ前段には強めのペダルコンプをインサートしアタックを強調。
アンプ後段にはアナログコーラスをインサートして広がりを演出しています。
エキサイターの設定
アンプを通ったあとの音にエキサイターをかけて、高域をキラキラさせます。
コーラスの設定
GuitarRig内でもアナログコーラスをかけていますが、さらに2度目のコーラスをかけて広がりを持たせます。
このようなコーラス2段がけはこの時代のスタジオミュージシャンの流行でもあります。
2種類のコーラスは傾向の違うものを選ぶことで、それぞれ異なる性質の揺れが相互作用して独特の美しいコーラス効果を作ります。
ここでは、WAVESの「Doubler」(コーラスというよりピッチシフターに近いエフェクト)を使っています。
「Doubler」にはコーラスのような音揺れがないため、アナログコーラスとの多重がけには非常にマッチします。
ディレイの設定
最後に、4分音符程度の長めのディレイをかけて完成です。
ディレイタイプは「テープディレイ」を選択しています。
実音が煌びやかなサウンドのため、ディレイ音はあえて高域が落ちて暖かい響きが得らるテープディレイを使うことでバランスをとった形です。
ポップス、AORのアレンジパターン
ここからは、ポップス、AORにおけるエレキギターのバッキングパターンを3つほどご紹介します。
パターン①
音源
音源(ギターのみ)
パターンの特徴
『Is This Love』のようなAOR寄りのロックバラードをイメージしました。
Gt.1のフレーズは比較的よく使われるものですが、「F#」と「G」による半音のぶつかりは、その音色も相まって幻想的に響きます。
コードが変わっても同じフレーズを弾きますが、このようにテンション感のあるフレーズをリフレインするのもこの時代の定番といえます。
基本的には先ほどご紹介したサウンドメイク方法と同様です。
なお、Gt.1はストラト系音源のハーフトーンを使って左右ユニゾンで2本打込んでいますが、左はフロントよりのハーフトーン、右はブリッジよりのハーフトーンと、音色を変えてあります。
Gt.2 は歪み感を出すため「JCM800」系のアンプで軽めのクランチで音作りしました。
Gt.1に比べてディレイを強めに設定、付点8分音符の長さでかけてあります。
このパートは、音程感よりもシャリーンとした煌びやかさがでればOKなので、Gt.1より極端にローカット、ハイブーストしています。
打込みのポイント
基本的には、「エレキギターのバッキング打込みテクニック」の記事にならって打込んでいただければOKです。
特筆すべき点としては、Gt1、2ともベロシティもタイミングもわりとかっちり目に打込んだ方がこの年代らしいタイトなサウンドに仕上がります。
Gt.1に関してはタイミング、ベロシティは均一気味でOKです。
Gt.2はピッキングのダウン/アップに合わせてタイミングを軽くズラしましょう。
パターン②
音源
音源(ギターのみ)
パターンの特徴
これぞ「80s Pop」といった曲調、プレイをイメージしています。
Gt.1は常にミュートしながら16分音符でシーケンスのようにフレーズを繰り返します。
Gt.2も同じフレーズをリフレインしますが、ルート、2度、5度と、どのコードともぶつかりにくい音を使っています。
この3音はリフレインに適していて、今回のようなフレーズではよく使われる音なので覚えておきましょう。
瞬間的に「G/C」「F/C」などの分数コードを奏でることになりますが、これはギターに限らず80年代のコードワークの特徴でもあります。
また、コードが転回してもずっと同じシーケンスをリフレインして、結果的にテンション感のあるフレーズに仕上がっている点も特徴といえるでしょう。
音作りに関しては、Gt.1、2ともパターン①のGt.1と同じでOKです。
Gt.1はハーフトーンを左右でユニゾン、Gt.2はフロントピックアップを使いました。
打込みのポイント
Gt.1のようなフレーズではブリッジミュートの音色を使って打込むとよいでしょう。
高音弦側は動きを強調する意図でベロシティ強め、低音弦側はスキマを埋める音ということでベロシティ弱めに設定します。
和音部分はピッキングのダウン/アップに合わせてタイミングを少しズラしてください。
Gt.2の方は比較的均一にカチッと打込んで問題ないでしょう。
パターン③
音源
音源(ギターのみ)
パターンの特徴
ここでは付点8分音符のディレイを活用したフレーズを紹介します。
複雑に聞こえますが、8分音符で弾いたブリッジミュートのフレーズにディレイ音がプラスされて16分音符のフレーズに聞こえているだけです。
この奏法は最近のJ-popでも頻繁に使われていますので、ぜひ覚えておいてください。
ディレイのセッティングは以下のような形になります。
- ディレイタイム:付点8分音符
- フィードバック:低め(ディレイ音が2〜3回返ってくる程度)
- ミックス:50%程度
今回は実音とディレイ音に差をつけるべく、ディレイ音にローカットとハイカットも入れてあります。
打込みのポイント
とくに難しいことはやっていません。
タイミングはすべてジャスト、パーカッシブさを強調するためデュレーションをやや短めに切ってあります。
ベロシティは、1つずつ交互に強弱をつけると自然な躍動感が生まれてよいでしょう。
まとめ
というわけで、ポップス、AORのアレンジ&打込みテクニックを解説しました。
今日ご紹介したテクニックは、昨今のJ-POPでも多用されるものばかり。
クリーン系のフレージング、音作りとしては幅広く使えるものとなりますので、あなたの楽曲にも積極的に取り入れていただければ幸いです。
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