リードギターアレンジ②:ドライブ系リードギターのアレンジと打込みテクニック!
こんにちは、OTOxNOMA認定講師、作曲家の青山シゲルです。
今日からは、リードギターアレンジと打込みテクニックをいくつかのスタイルに分けて解説していきます。
今回は「ドライブ系リードギター」をご紹介。
- ドライブ系リードギターの名演
- ドライブ系リードギターのアレンジ、サウンドメイク
- 各種打込みテクニック
ほどよくドライブしたサウンドで奏でるロック系のソロは、リードギターの真骨頂といえます。
ロックやブルースはもちろんですが、ポップスをはじめさまざまなジャンルに応用可能なテクニックとなっていますので、バッチリマスターしていきましょう!
※こちらの内容は動画でも学習することができます。
リードギターアレンジ②:ドライブ系リードギターのアレンジと打込みテクニック!
ドライブ系リードギターの名演
ちょっと乱暴なくくり方をすると、リードギターが登場する楽曲のソロは大半がドライブ系といえます。
ギターは減衰楽器であるため、のびやかにソロを弾くためにはほどよく歪ませてサスティンを稼ぐことが重要だからです。
このことから、ひとくちに「ドライブ系リードギター」といってもそのジャンルは多岐にわたります。
したがって、今日は「ロックのアレンジと打込みテクニック」で解説したような、ロック系楽曲で聴くことができる王道のリードソロに絞って名演を2曲ほどご紹介したいと思います。
① 『天国への階段』レッド・ツェッペリン
ロックの黎明期に”3大ギタリスト”と謳われたうちの1人、ジミー・ペイジによるこのソロは、まさにロックギターのお手本そのもの。
マイナーペンタトニックを中心に、
- チョーキング
- ハンマリング
- スライド
- ビブラート
といったロックギター必須のテクニックを駆使して、非常にドラマチックなソロを聴かせます。
ここで、ペンタトニックスケールについて少し解説しておきましょう。
メジャースケールの第4音、第7音の2つを省略したスケールを「メジャー・ペンタトニック・スケール」といいます。
例えばCメジャーの場合は以下のような音列となります。
- C
- D
- E
- G
- A
- C
また、マイナーキーの場合は、ナチュラルマイナースケールのうち第2音、第6音を省略した「マイナー・ぺンタトニック・スケール」を使います。
Cメジャーの同主短調である「Am」の場合は以下のような音列になります。
- A
- C
- D
- E
- G
- A
さらに、ブルースやロックではマイナー・ペンタトニックにブルーノート(b5)を加えたスケールもよく使われるので覚えておきましょう。
このような音階になります。
- A
- C
- D
- Eb
- E
- G
- A
『天国への階段』では「Am」のマイナーペンタトニックを中心に、通常のナチュラルマイナーもバランスよく混ぜながらメロディアスにギターを歌わせています。
後半の盛り上がりでは同じフレーズを繰り返すシーケンスの速弾き(1970年代当時としては)を奏で、クライマックスに向けて緊張感のあるソロに仕上げています。
数あるロックのギターソロの中でも「名演中の名演」と呼ぶに相応しい素晴らしいプレイですね。
② 『Hotel California』イーグルス
この曲が発表された1976年当時、イーグルスには3人のギタリストがいました。
そのうちの2人、ジョー・ウォルシュとドン・フェルダーの掛け合いによるこのギターソロ。
2分を超える長尺にも関わらずまったく飽きさせない構成で、アグレッシブな中にも芸術的な美しさを感じさせます。
そもそもイーグルスはレッド・ツェッペリンのような野性的なハードロックを聴かせるバンドではなく、アンサンブルやコーラスワーク、楽曲そのものの魅力を前面に押し出したバンドです。
ギタープレイも、ジミー・ペイジのようなロック的プレイに比べると、より洗練されたコンテンポラリーなフレーズが目立ちますね。
その音遣いは、マイナーペンタトニックを基調にメロディックマイナーやクロマチックアプローチなどを効果的に織り交ぜた非常に印象的なものとなっています。
2人で絡みつくような掛け合いを聴かせた後にはツインギターでピタッとハモりながら終わっていく、じつに無駄のない見事な構成で、これもロック史に残る名演といえるでしょう。
ドライブ系リードギターのアレンジ、サウンドメイク
ここからは、実際のリードギターアレンジとサウンドメイク、打込みテクニックを学んでいきます。
ギタープレイの花形といえるロック系のリードギターについて理解を深めていきましょう!
① 『天国への階段』風リードギター
音源
音源(リードギターのみ)
サウンドメイク
まずはサウンドメイクから見ていきましょう。
基本はMarshallアンプを程よくドライブさせたリードサウンドでOKです。
この時代にはまだ「JCM 800」は発売されていませんが、今回は幅広くロック系に使えるリードサウンドということで「JCM 800」をチョイスしました。
セッティングは「ロックのアレンジと打込みテクニック」でご紹介したものとほぼ同じで、GuitarRigで「LEAD 800」を選び、前段にSkreamerをインサートしています。
ただし、バッキングの時よりも強い歪みと伸びやかなサスティンが欲しいため、BOOSTスイッチはオンにします。
また、使用ギターもバッキング同様レスポールのリアピックアップです。
伸びやかなソロにはフロントも映えますが、今回のようなスピード感のあるソロにはリアピックアップがオススメです。
リードを浮き立たせるため、バッキングよりやや強めにローカット、さらにディレイやリバーブも強めにかけてあります。
アレンジ、打込み
出だしの2音はスタッカート気味に音を切りますが、音の切れぎわにはミュート音をあしらうとよりリアルに仕上がります。
ミュート音は音源に収録されているアーティキュレーションを使用するといいでしょう。
直後のチョーキングは、ルーズにゆっくりと音程を持ち上げるイメージでフリーハンドでピッチベンドを書きました。(ベンド幅は±4に設定。)
1〜2小節目ではマイナーペンタトニックを用いたロックギターらしい音遣いとなっています。
16分音符による細かいフレーズでは、よほど意図がない限りフルピッキングはせず、プリングやハンマリングを用いたレガート奏法で演奏しますので、それらもピッチベンドで再現していきましょう。
2小節目2拍目に登場する2つの「E」音は、1つ目が3弦でD→Eのチョーキング、2つめは2弦でストレートに弾きます。
この時同じ音を別の弦で連続して弾くことになるので、前の音の切れぎわが後の音に少しだけ重なることになります。
これを再現するために、後者の音を別トラックに分けて打込みました。
3小節目はチョーキング、チョーク・ダウン、プリングを駆使した6連符のシーケンスです。
この時代のロックギターでは、同じパッセージを繰り返すのは常套句のように使われるので覚えておくと良いでしょう。
ギタリストごとに手癖となっているシーケンスがあるので、さまざまなギタリストの演奏を聞いて研究してみてください。
シーケンスを打込む際には正確になりすぎないよう一回一回バラしてやった方がギターらしく聞こえます。
最後のフレーズはダブルチョーキングとなっていますが、1弦はG音のまま、2弦はD→Eにチョーキングしますので、こちらも別トラックに分けて打込みます。
2トラックに分けて打込む場合は、トラックをグループ(バス)にまとめてからアンプシミュレーターをかけるようにしましょう。詳しくは「リードギターの基本テクニックと打込み方法」をご覧ください。
② 『Hotel California』風リードギター
音源
音源(リードギターのみ)
サウンドメイク
先ほどご紹介したイーグルスの2人は、クリーンなセッティングのFenderアンプにペダルエフェクトを繋いでドライブサウンドを作っています。
ドン・フェルダーがGibson SG(2ハムバッカーのモデルでサウンドはレスポールに近い)のリアピックアップ、ジョー・ウォルシュがテレキャスターのハーフトーンを使用しています。
ここでは1曲目との違いをわかりやすくする意味でレスポール系音源のリアピックアップを使いました。
アンプはGuitarRigで「Twang Reverb」を選び、セッティングはクリーン、前段にStomp Compressor2台とSkreamerをインサートしてドライブサウンド作っています。
1曲目のアンプのナチュラルな歪みとは方向性の異なる、中域の盛り上がったドライブサウンドが特徴的ですね。
ドン・フェルダー本人がインタビューで答えていますが、実際に彼もMXRのDyna Compを2台繋いであの音を出していたそうです。
このようにコンプを2台用いることの目的は以下の2つです。
- ペダル側のアウトプットを高めに設定しプリアンプ入力前のゲインを稼ぐ
- サスティンの伸びをよくする
2台のペダルコンプで十分なサスティンを稼いでいるため、Skreamerはドライブ下げ目の設定にしています。
マイルドな歪みながら、粘りとサスティンの強いリードサウンドに仕上がっています。
コンプを2台使わないまでも、コンプレッサー+オーバードライブでサスティンのあるドライブサウンドを作ることはギターのサウンドメイクの定番の1つでもありますので、覚えておくと良いでしょう。
アレンジ、打ち込み
出だしのフレーズはロックンロールでも良く聴かれる大定番フレーズで、3弦D→Eのチョーキング後に、1、2弦のA、Eの和音を2回弾き合計3音によるシーケンスとなっています。
1曲目のシーケンス同様、毎回微妙にバラす方が機械っぽくならずリアルに聞こえますので調整してみましょう。
チョーキングの音と和音が混在するためトラックを分けて打込みます。(例によって、グループ化してからアンプシミュレーターをかけるのをお忘れなく。)
2小節目の休符や3小節目の3連符など音を切る部分では、ミュート音のアーティキュレーションを打込んであります。
オケに混じると目立たない音ですが、それでもやはりミュートが入っていた方がリアルに聞こえますね。
また、2小節目以降はクロマチックアプローチを含むメロディが多く出てきます。
とくに3小節目はIVmに対してメロディックマイナーが使われていて、哀愁のある特徴的なフレーズになっています。
4小節目もV7のコードトーンに対してクロマチックアプローチが使われていて、同じく哀愁を感じさせますね。
ハードロック系やブルースロック系ではこのような音遣いは珍しいため、ロック色を抑えたコンテンポラリーな雰囲気を出すには、ペンタトニック以外のスケールを使うのも効果的です。
2小節目や4小節目のロングトーンでは、ピッチベンドを使ってビブラートを、さらに音の切れぎわにグリッサンドを書いてあります。
いずれも正確な位置に打つのではなく、ある程度ランダムに仕上げましょう。
まとめ
というわけで、ドライブ系リードギターのアレンジと打込みテクニックについて解説しました。
いずれもリードギターの定番ともいえる王道フレーズをご紹介しました。
ギタリストごとにたくさんの魅力的なプレイを聴くことができますので、ぜひより深く研究してみてください!
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