ストリングスのミキシング③:パンニングと音量バランス、バスエフェクトをマスターしよう!
こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。
今日は、ストリングスのパンニング、音量バランス、バスエフェクトについて解説していきます。
- ストリングスのパンニング
- ストリングス各パートの音量バランス
- ストリングスのバスエフェクト
- バンド楽器との音量バランス
美しく煌びやかなストリングスとバンド楽器との一体感を作り出すために必要な各種テクニックをご紹介。
生録音したストリングスはもちろんのこと、打込みサウンドにも全く同じ考え方で適用することができます。
ぜひご活用いただければ幸いです!
なお、前回&前々回の記事をまだご覧になっていない方は、先にそちらをお読みくださいね。
※本企画はデータ連動企画となっています。講師イナゲが作った楽曲のパラデータをダウンロードすることができますので、ぜひそちらも合わせてご活用ください!
今回の教材曲:プロスペロー『MOB 〜この街のありふれた一人〜』
ストリングスのミキシング③:パンニングと音量バランス、バスエフェクトをマスターしよう!
ストリングスのパンニング
ストリングスのパンニングもまた、「オフマイク→オンマイク」の順に着手していきます。
オフマイクのパンニング
オフマイクはステレオで収録されていますので、パナーを使って以下の2要素を調整していくことになります。
- ステレオ幅
- 傾き
とはいえ、ストリングスの場合はセンターを中心に左右にバランスよく広がってくれたほうが都合がよいため、ステレオ幅をせばめるだけで傾きはつけなくてもOKです。(今回もそのようにしました。)
まずはAmb1のパンを「L60、R60」に設定して音像を適度にせばめます。
Amb2のパンは、Amb1より若干広めに「L70、R70」に設定して、相対的な広がり感を演出しました。
オフマイクのパンニング
オンマイクのパンニングは、ハイハットやタムのオンマイク同様、オフマイクに含まれる各パートの音像と合致するように配置していくことで、定位を明瞭にすることができます。
今回は、以下のように配置しました。
- 1st Violin:L40
- 2nd Violin:L20
- Viola:R20
- Cello:R30
オフマイクとオンマイク、一連のセッティングをDAWのミキサー画面で見ると以下のような形になります。
オフマイクパンニング前
オフマイクパンニング後
オンマイクマイクパンニング後
オフ&オンブレンド
Amb2追加
パンニングの基本的なテクニックについては、以下の記事をご覧ください。
ストリングス各パートの音量バランス
つぎに、ストリングスを構成する各トラックの音量バランスを調整していきましょう。
ストリングス内での各パートの音量バランスは以下のような形になります。
基本的に、高音パートにいくほど音量が大きくなっていくイメージで捉えればよいでしょう。
ちなみに、ストリングスは高音パートほど人数が多く、逆に低音パートほど人数が少なくなっていきますので、生録音した音源では自ずと上図のようなバランスで収録されることになります。
ですから、生演奏の場合は原則としてオンマイクとオフマイクのバランスのみ調整すればOKです。
ストリングスのバスエフェクト
ここからは、ストリングスのバスエフェクトについて解説していきます。
今回のストリングスでは、以下の順番でバスエフェクトをインサートしました。
ダイナミックEQ → コンプレッサー → イコライザー → リミッター
さらにそこから、ルームリバーブとホールリバーブで空間や残響をプラスしていくことになります。
それぞれのセッティングを詳しく解説していきます。
ダイナミックEQのセッティング
ストリングスのサウンド全体に起きている細かな問題をダイナミックEQで調整していきます。
個々のトラックが抱える問題はすでに調整済みですので、ここでは全体を混ぜたときに生じる問題を処理していきましょう。
まずは、「619Hz」付近にある中域のふくらみを軽めにリダクションしてスッキリとしたサウンドに。
さらに、「2594Hz」「3162Hz」「4174Hz」の高域のピークをピンポイントでリダクションして耳に付く高音を除去しました。
ダイナミックEQ適用前
ダイナミックEQ適用後
コンプレッサー
他のパート同様、バスコンプを使って各トラックの音をなじませていきます。
レシオ「2:1」、スレッショルド「8.0」、アタック「3」、リリース「1.25」に設定し、軽く&ゆるやかにコンプがかかるよう設定。
サウンドに大きな影響はあたえず、バスコンプによる馴染みをプラスしていきます。
バスコンプ適用前
バスコンプ適用後
イコライザー
バスEQでは、ストリングスサウンド全体のカラーを調整していきます。
今回は、中低域のふくよかさをアップすべく「330Hz」以下をシェルフでブースト。
また、「1.09kHz」付近も軽くブーストしてほんの少し前にせり出してくるイメージに調整しました。
バスEQ適用前
バスEQ適用後
リミッター
例にもれず、突発的なピークをリミッターで抑えていきます。
大きく飛び出たところだけを軽く押さえる程度で十分です。
リミッター適用前
リミッター適用後
リバーブ
ストリングスにおいても、ルームリバーブとホールリバーブの2種類を使用します。
- ルームリバーブ = 自然な部屋鳴りをプラスしてその他の楽器と馴染ませる
- ホールリバーブ = 豊かな残響をプラス
まずは、ルームリバーブへ送ってバンド楽器との一体感を演出。
次にホールリバーブへ送って、リッチな響きを追加していくという順番となります。
リバーブ適用前
ルームリバーブ適用後
ホールリバーブ適用後
バンド楽器との音量バランス
最後に、ドラム、ベース、ピアノ、ギターなどのバンド楽器とバランスをとっていきます。
ストリングスは、以下の図でいうところの「フレーズ系」に該当します。
ピアノなどのコード楽器よりも若干前に聞こえる程度を意識してバランスをとると良いでしょう。
ストリングスの音量:中(自然なバランス)
ストリングスの音量:弱(小さすぎ)
ストリングスの音量:強(大きすぎ)
まとめ
というわけで、ストリングスのパンニングと音量バランス、各種バスエフェクトのセッティングについてご紹介しました。
ストリングスはドラム同様複数のパート&マイクで構成されるサウンドの集合体。
それゆえに、対処しなければならない問題や理想のサウンドを作るまでの行程も多くなりがちですが、前回&前々回の記事とあわせて参考にしていただくことで、徐々にコツがつかめてくるはずです。
ぜひご活用いただければ幸いです!
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