リードギターアレンジ④:シュレッド系リードギターのアレンジと打込みテクニック!
こんにちは、OTOxNOMA認定講師、作曲家の青山シゲルです。
今日は「シュレッド系リードギター」のアレンジと打込み、サウンドメイクについて解説していきます。
- シュレッド系リードギターの名演
- シュレッド系リードギターのアレンジ、サウンドメイク
- 各種打込みテクニック
縦横無尽なテクニックを駆使したシュレッド系リードギターは、最もヒロイックなギタースタイルです。
今回はそんなシュレッド系リードギターの各種テクニックをご紹介していきますので、バッチリ学んでいきましょう!
※こちらの内容は動画でも学習することができます。
リードギターアレンジ④:シュレッド系リードギターのアレンジと打込みテクニック!
シュレッド系リードギターの名演
「ヘヴィメタルのアレンジ」の記事でも解説しましたが、ロックの発展とともにギターサウンドやそのプレイスタイルは、ハイゲインでテクニカルなものへと進化していきます。
そのような「ハイゲイン」で「テクニカル」に弾きまくるスタイルを「シュレッド・ギター」と呼び、多くのギターヒーローが登場しました。
今回も独断と偏見で、その代表的な名演をいくつかご紹介していきます!
①『Jump』ヴァン・ヘイレン
ギターの演奏に革命をもたらしたといっても過言ではない、故エドワード・ヴァン・ヘイレン。
彼が率いるハードロックバンド「ヴァン・ヘイレン」の1984年の大ヒットナンバーです。
この曲よりもテクニカルな演奏は山ほどありますが、ライトハンド(タッピング)奏法を編み出した独創性、パイオニアとして後進に与えた影響、ソロとしての完成度や音楽性の高さから選ばせていただきました。
出だしはロックギターらしいマイナー・ペンタトニック+ブルー・ノートを使いつつ、ピッキングハーモニクスを交えた速弾きでトリッキーに聞かせます。
中盤からはライトハンドを印象的に使い、流れるようなレガートによる速弾き。
そこから半音下の調へ転調してシンセソロに繋げる流れは見事ですね。
短い尺の中に様々なフレーズやテクニックを詰め込みながらもハイセンスで嫌味のないこのソロは、シュレッド系リードギターの代表的な名演といえるでしょう。
②『Jet To Jet』アルカトラス
シュレッド系ギターの王者として君臨するイングヴェイ・マルムスティーン。
彼が世に出るきっかけとなったバンド「アルカトラス」の1983年のデビューアルバムからのナンバーです。
バンド脱退後のソロ作品でも非常に高い評価を得ていますが、登場時の世界に与えた衝撃の高さからこのデビュー作を選ばせていただきました。
当時このレコードを聞いた多くのギタリストは「テープの速回しだ!」「こんなのライブで弾けるわけがない!」と、その実力に半信半疑でした。
というのも、これまで培われてきたペンタトニック系のロックギターフレーズとあまりにも違う音遣い、かつあまりにも常識離れしたスピードだったからです。
しかし、実際のライブプレイではレコーディング以上の速さで縦横無尽にプレイするさまに、彼の名前は瞬く間に世界中に知れ渡ることとなりました。
そのクラシカルな音遣いや正確無比なピッキング、エコノミーピッキングやスウィープといった速さの限界を越えるためのテクニックは、それまでのロックギターの常識を覆し、シュレッドギターの土台を築きました。
そんなイングヴェイのスーパーテクニックが「これでもか!」というぐらい詰め込まれたこのソロもやはりシュレッド系の歴史的な名演と言えます。
③『Fives』ガスリー・ゴーヴァン
前2曲がレジェンド的な古典に偏ったので、もう少し現代的なギタリストも紹介しておきましょう。
次に紹介するガスリー・ゴーヴァンはそれまでのギターレジェンドたちとは違い、ロックやヘヴィーメタルに留まらず、ジャズやフュージョンからカントリーに至るまで、様々なジャンルを吸収、昇華していて、非常に洗練された音遣いをします。
彼の人気が高まった2000年代半ば以降は、ロックバンドやロックというジャンルそのものの人気の衰退に反比例するように、職人的なソロギタリストが増えていきます。
ガスリーはその草分け的な存在で、全てにおいて超人的な完成度と素晴らしいトーンで弾きこなす彼のスタイルは、新時代のギターヒーローとして高く評価されました。
ここでは彼の代表作『Fives』をお聞きください。
縦横無尽に複雑なスケールを弾きこなすそのプレイは、新時代のシュレッド系リードギターの代表といえるでしょう。
シュレッド系リードギターのアレンジ、サウンドメイク
ここからは、シュレッド系リードギターのアレンジ&打込み例を2パターン解説していきます。
① 「ヴァン・ヘイレン」風リードギター
音源
音源(リードギターのみ)
サウンドメイク
80年代頃のエディ・ヴァン・ヘイレンは改造マーシャルを使っていたことで有名ですが、ここではそれを再現するというよりも汎用性の高いシュレッドサウンドを作ってみましょう。
ギターはレスポール系音源のリアピックアップを使用、アンプは GuitarRigの「GRATIFIER」(Mesa/Boogieのシミュレート)、アンプ前段にブースターとしてSkreamerをインサートしました。
「ヘヴィメタルのアレンジ&サウンドメイク」の記事でもGRATIFIERを使いましたが、やはりシュレッド系にバッチリハマりますね。
ここでもモードは「MODERN」を選択、GAINを上げすぎず、ブースターのVOLUMEを高めにしてゲインアップさせます。
アンプのチョイスや歪み量はギタリストによって千差万別で、Marshallや5150を好むギタリストもいますが、Mesa/Boogieの方がサスティン豊かで芯のあるサウンドを出しやすいので、リードにはオススメです。
DAW側でGuitarRigの前段にEQをインサートして80Hz以下をローカット、後段にディレイをインサートし付点8分音符のディレイをかけました。
空間系の設定はお好みになりますが、シュレッド系のリードではやや深めにディレイをかけると良いでしょう。
アレンジの特徴
このソロには以下のような特徴があります。
- ペンタトニック+ブルーノートがベース
- ライトハンドの多用
- ピッキングハーモニクス、アーミング等の使用
ペンタトニック中心のオーソドックスな音遣いながら、ライトハンドや現代的なテクニックを絡め、華やかでスピード感のあるソロになっていますね。
出だしこそロックの定番フレーズとなっていますが、その後シュレッド系らしい速弾きへと変化していきます。
3小節目からのライトハンドは、譜面上は1拍6連で書かれていますが、フレーズとしては4音1セットになっていて、2拍の間に3セット弾くイメージです。
それぞれの頭がライトハンドなので、ギタリストとしては2拍3連のタイミングでタッピングする感覚で演奏します。
このようなシンコペーション的フレーズはさまざまなソロで聞くことができますので覚えておくと良いでしょう。
音使いは、「ナチュラルマイナー」「ドリアンスケール」「ペンタトニック」と変化していきますが、この速さになってくるとスケールを考えながら演奏しているというより手癖で弾いている印象で、エディが良く使うフレーズだったりします。
一番最後のフレーズはアームダウン後にチョーキングする形で、これもエディのお得意でした。
ピッキングする代わりに瞬間的にアームダウンして次の音程を出すので、独特のトリッキーなフレーズに聞こえます。
打込みのポイント
打ち込み方は普通のハンマリング/プリングと同様ピッチベンドを多用しながら打込みます。
ベロシティは適度にバラしてありますが、タイミングはほとんどジャストです。
実際の演奏では正確なジャストになることはありませんが、このスピードではバラした所でさして違いが分からないので、ピッチベンドや他の部分に労力をかけた方が良いと思います。
ちなみに、ライトハンドを使うと大きな跳躍が可能になりその分音域が広くなるので、ここではベンド幅を±12と最大まで広げました。
出だしのロック定番フレーズは、チョーキングと固定音が被るので、例によってチョーキングする側は別トラックに分けて打込みましょう。
1〜2小節目ではピッキングハーモニクスが出てきますが、シュレッド系の強く歪んだリードギターでは良く使われるテクニックです。
ピッキングハーモニクスは音源に収録されているアーティキュレーションを使っていますが、そのままでは綺麗すぎてリアルさが足りません。
例によって、実音とハーモニクスが混ざったようなニュアンスを再現すべく、1小節目は実音と2オクターブ上のハーモニクス、2小節目は実音と1オクターブ上のハーモニクスが鳴るように打込み、それぞれ実音がわずかに聞こえるくらいの音量バランスでブレンドしました。
ピッキングハーモニクスは指の当て方次第でさまざまな倍音を出すことができますが、1オクターブ上や2オクターブ上は比較的鳴らしやすいので、これらをランダムに選択するとよいでしょう。
加えて、1オクターブと5度上のハーモニクスも鳴らしやすいポイントなので覚えておくと良いですね。
最後のアームダウンもピッチベンドで入力しますが、音程を下げる場合にはアームを手で押し込む必要があるため気持ちゆっくり目に、逆に音程を戻す際はバネの反動を利用できるため速めに入力するとそれらしくなります。
② 「近代テクニカル」系リードギター
音源
音源(リードギターのみ)
サウンドメイク
こちらは1曲目と同じセッティングで問題ありません。
1曲目のフレーズ自体は80年代風のものですが、サウンドは汎用的なものにしていますので幅広く使えます。
ここからさらに現代的な尖った音を出したい場合は、アンプに5150をシミュレートした「VAN51」を選ぶことで、トレブリーで尖った音が出せます。
お好みでチョイスすると良いでしょう。
アレンジの特徴
こちらはガスリー・ゴーヴァン以降のテクニカル系ギタリストが弾くような現代的なフレーズをイメージしています。
ペンタトニックも使いつつ、ドリアンスケールを多用していたり、テンション感のある高速タッピングをしていたりと、ロック〜メタル系とは一味違うプレイになっています。
1小節目2拍目ウラから3拍目アタマにかけて見られる
D → C → C#
という音の動きは、コードが「A7」に変わるタイミングで「C#」の音を弾くために、半音上の「D」と半音下の「C」の2音を使って挟み込みながらアプローチしています。
これもアプローチノートの一種でジャズでは良く用いられるテクニックなのですが、近年のテクニカル系ギターではジャズに影響を受けた音遣いなんかもよく使われます。
2小節目はフルピッキングでの下降フレーズの速弾きで、6連符中心のフレーズの中に7連符を混ぜてある点がミソです。
6連符がずっと続くとやや機械的に聞こえるため、適度に連符の数を変えてやると打込みでも人間味が出やすくなります。
3小節はハンマリング、プリングを駆使した速弾きフレーズですが、2小節目同様ところどころ7連符を混ぜてあります。
4小節目からはいかにも現代的な大股開き+ライトハンドを駆使した音域の広いフレーズです。
この部分では「Em7」のコード上で以下のような音が使われています。
- E(ルート)
- G(3rd)
- A(11th)
- B(5th)
- D(7th)
- F#(9th)
- A(11th)
「Em7」の構成音と、「9th」「11th」のテンションが使われていて、順次進行を用いず分散和音のような音遣いになっているのが特徴的。
メタル系の速弾きでは速すぎて何を弾いてるか分からない物も多い中、このフレーズはたとえ1音1音聞き取れなくとも「Em9」や「Em11」の響きが感じ取れるフレーズになっていて、垢抜けた印象に仕上がります。
元来ギターでは、(ペンタトニックを除いて)このように音が跳躍する進行は苦手なこともあり使われませんでしたが、ライトハンドなどのテクニックが成熟していく中で、幅広い跳躍+広い音域のフレーズを弾くギタリストも増えました。
このようなフレーズをサラッと弾きこなすことも、現代のテクニカルギタリストの特徴といえるでしょう。
打込みのポイント
基本的な打込みテクニックはこれまでと変わりません。
出だしのアーミングを使ったフレーズ、ピッキングハーモニクスやライトハンドなどの各種テクニックは、1曲目と同じニュアンスで打込めばOKです。(こちらもベンド幅は±12となります。)
2小節目のフルピッキングによる下降フレーズは、ピッキングのニュアンスを強めに出すため、ミュートやブラッシングのアーティキュレーションを重ねて強調してあります。
本来のミュートやブラッシングの趣旨とは違う使い方になりますが、ゴリッとしたピッキングの雰囲気が出せるため、後半のレガート部分とのコントラストを付けることができます。
まとめ
というわけで、シュレッド系リードギターのアレンジと打込みテクニックについて解説しました。
このような速弾きはメタル系の音楽だけではなく様々なジャンルで聴くことが出来ます。
この記事を参考に、是非いろんなジャンルで活用していただければ幸いです!
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