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オーケストラ内の異なるセクション間での音の重ね方を理解しよう!

こんにちは、OTOxNOMA認定講師・作曲家の吉岡竜汰です。

今日は、オーケストラ全体を使った音の重ね方について解説していきます。

  • 異なるセクションの楽器を重ねる際のポイント
  • 2つのセクションでの重ね方
  • 3つのセクション全てを使った重ね方

前回前々回と解説してきた、楽器同士の音量バランスや相性を考慮しながら、実際に音を重ねていく場合の例をご紹介していきます。

重ね方のバリエーションは多岐に渡るためあくまで一例とはなりますが、オーケストレーションを施す際には大いに役立ってくれると思います。

ぜひご活用ください!

 

オーケストラ内の異なるセクション間での音の重ね方を理解しよう!

異なるセクションの楽器を重ねる際のポイント

異なるセクション同士の楽器を重ねるにあたり、押さえておきたいポイントは以下の3つです。

  • 「重複法+堆積法」or「重複法+交叉法」が基本
  • 重複するパートは高音域を中心に
  • 全域に渡って同じ配置で統一する必要はない

「重複法+堆積法」or「重複法+交叉法」が基本

以前、金管楽器を重ねる際には3つの重ね方を複合的に使うというお話をしたのを覚えていらっしゃいますか?

楽器数が多いため、それぞれを別個に取り扱ってしまうと各楽器の音域を逸脱してしまうなどの問題が発生するからでしたね。

金管だけでもその状態なのですから、オーケストラ全体となればなおさら。

ですから、オーケストラ全体で楽器を重ねる場合は、やはり「重複法+堆積法」or「重複法+交叉法」のいずれかを使って重ねていくことになります。

重複するパートは高音域を中心に

音を重複させるパートは高音域を中心に割り振りましょう。

低〜中音域は音が飽和しやすく、重ねすぎるとモヤモヤとした響きになってしまうからです。

おおよその目安として、中央ドよりも下の音域はむやみに重複させず、それ以上の音を重複させるようにしましょう。

(ただしベースラインは除く)

全域に渡って同じ配置で統一する必要はない

オーケストラ全体で和音を組む際には、たくさんの楽器を満遍なく配置できるよう密集配置が基本となります。

しかし、トップノートからベースまで、全ての音域を密集で統一する必要はありません。

例えばベース付近。

低音域で密集配置を使うとベースラインが動きにくくなるほか、ローインターバルリミットに引っかかって響きが濁ってしまう可能性があります。

また、トップラインもその下のノートと離して配置することも珍しくありません。

こうすることでトップラインとハーモニーパートの間にスキマが生まれ、トップラインが動きやすくなるほか、音も目立ちやすくなります。

ホーンセクションのカリキュラムで登場したドロップ2ボイシングと似た発想です。)

2つのセクションでの重ね方

ここからはいよいよ、異なるセクション間での音の重ね方の実例をご紹介していきます。

まずは、3つあるセクションのうちの2つを使った重ね方について解説します。

現実的な組み合わせとしては以下の2パターンが考えられます。

  • 弦楽器+木管楽器
  • 金管楽器+木管楽器

以前もご紹介した通り、弦楽器と金管楽器は基本的に相性が良くありません。(ただしホルンは除く)

したがって、今回は「弦+木管」「金管+木管」の2つのパターンについてみていきましょう。

弦楽器+木管楽器

この2つのセクションは非常に相性が良いため、重ね方の自由度も高くなります。

弦楽器の持つ透明感&重厚さと、木管楽器が持つ色彩感を併せ持った響きを得ることができます。

例えば、以下のようなパターンが考えられます。

  • 弦楽器:開離配置
  • 木管楽器:密集配置

開離で配置した弦楽器の間を密集の木管で補強するイメージで重ねると充実した響きを得やすくなります。

まず、弦楽器を開離配置していきましょう。

今回は以下のような割り振りにしました。

  • 1stヴァイオリン:G5
  • 2ndヴァイオリン:C5
  • ヴィオラ:E4
  • チェロ:G3
  • コントラバス:C2

1stからチェロまでの配置を見る限り、コントラバスは「C3」の音にするのが良いように感じますよね。

しかし、今回は木管とのコラボレーション。

バスーンの存在を見据えてあえてオクターブ下の「C2」を鳴らし、低音を充実させる狙いです。

次に、弦楽器の間を木管楽器を使って密集配置で埋めていきます。

例によって、交叉法を用いると馴染みの良いサウンドになるのでオススメです。

以下のように重ねてみました。

  • 1stフルート:G5
  • 2ndフルート:C5
  • 1stオーボエ:E5
  • 2ndオーボエ:G4
  • 1stクラリネット:E4
  • 2ndクラリネット:G3
  • 1stバスーン:C4
  • 2ndバスーン:C3

ほぼ密集で配置していますが、バスーンのみ「C」の音をオクターブで配置してベースラインを強調してます。

2つのセクションを合わせると以下のようなサウンドになります。

金管楽器+木管楽器

こちらも相性が良好な組み合わせですね。

管楽器が持つ温かみのあるサウンドが混ざり合い、分厚く充実感のある音色を得ることができます。

先の「木管+弦」よりも楽器数が増えるため、いずれも密集配置にすると良いでしょう。

  • 金管楽器:密集配置
  • 木管楽器:密集配置

ただし、金管楽器と木管楽器では強く演奏した場合の音量差が顕著です。

木管だけで鳴らしている音がある場合、トップノート以外は聞こえにくくなる可能性も高いので注意しておきましょう。

ここでも一例をご紹介していきます。

まずは、金管を密集配置させます。

  • 1stトランペット:G5
  • 2ndトランペット:E5
  • 1st&3rdホルン:C5
  • 2nd&4thホルン:G4
  • 1stトロンボーン:E4
  • 2ndトロンボーン:C4
  • バストロンボーン:G3
  • チューバ:C2

先ほどの「弦+木管」のケースと同様に、チューバは低音充実のためオクターブ下で鳴らしています。

次に木管を見ていきましょう。

金管楽器だけでもすでに充実した響きになっている上に音量差も考慮する必要があるため、木管を配置する場合は金管よりも高めの音域を使用するとバランスが取りやすくなります。

以下のような具合です。

  • 1stフルート:E6
  • 2ndフルート:G5
  • 1stオーボエ:C6
  • 2ndオーボエ:E5
  • 1stクラリネット:C5
  • 2ndクラリネット:E4
  • 1stバスーン:G4
  • 2ndバスーン:C4

1stフルート&1stオーボエの音は重複がなく、かつ金管では演奏していない音のため音量は控えめになります。

しかし、前者はトップノートのため音が目立ちやすく、後者はオーボエの音色がそもそも埋もれにくいため問題ありません。

アンサンブル全体でよほど強いダイナミクスを指定しない限りはしっかり聴こえてきてくれることでしょう。

2つのセクションを合わせると以下のようなサウンドになります。

3つのセクション全てを使った重ね方

ここからはさらに、3つのセクション全てを使った音の重ね方を解説していきます。

ここまでくると楽器数も膨大になるため、どのように重ねたら良いか迷う機会も多くなると思います。

そんな時は、以下の3つのポイントを抑えておきましょう。

  • 音域を広く使う
  • 木管は高音域中心、金管は中音域中心、弦楽器は全音域満遍なく
  • 低音楽器はベースと割り切る

音域を広く使う

まずはとにかく音域を広く使いましょう。

全セクションの楽器を使うということは、オーケストラ編成で活用できる全ての音域を網羅しているということ。

それを効果的に活用しながら、オーケストラらしい重厚で壮大なサウンドを作り上げていきます。

木管は高音域中心、金管は中音域中心、弦楽器は全音域満遍なく

オーケストレーションに不慣れなうちは、まずこの考え方を覚えておきましょう。

木管楽器は比較的高い音域での演奏が得意なので、その音域を中心に配置。

これにより音が聴こえやすくなり、金管との間に多少の音量差があっても埋もれなくなります。

一方金管は中音域を中心に配置することでどっしりとした安定感のあるサウンドに。

弦楽器は開離配置を主体として、音域を広く使って配置しましょう。

なお、弦楽器は重音やディヴィジを使った重ね方も可能ですが、取扱い難易度がぐっと上がります。

ですから、まずはシンプルに単音使いで練習していきましょう。

低音楽器はベースと割り切る

オーケストラ全体を使って配置する場合は、各セクションの低音楽器はベース担当と割り切ってしまいましょう。

バスーンはベースではなくハーモニーの一員を担わせることもよくありますが、慣れないうちは取り扱いが難しくなります。

思い切ってベースを任せることで扱いも格段に楽になりますし、金管の低音パート(バストロンボーンチューバ)と弦の低音パート(チェロコントラバス)との馴染みも良くなるのでオススメです。

全セクションでの重ね方の一例

ということで、3つのセクション全てを使った重ね方の一例を用意しましたのでご覧ください。

まずは弦楽器。

  • 1stヴァイオリン:G6
  • 2ndヴァイオリン:G5
  • ヴィオラ:C5
  • チェロ:E4
  • コントラバス:C2

ヴァイオリンは高音域をオクターブでしっかり聴かせつつ、ヴィオラチェロは開離配置で中音域も充実させています。

コントラバスチェロとかなり離れましたが、この隙間は金管を中心に補ってもらう算段です。

つぎに木管をみていきましょう。

  • 1stフルート:G6
  • 2ndフルート:E6
  • 1stオーボエ:C6
  • 2ndオーボエ:E5
  • 1stクラリネット:G5
  • 2ndクラリネット:C5
  • 1stバスーン:C3
  • 2ndバスーン:C2

バスーン以外の木管は高音域をしっかりと密集で鳴らす形です。

トップの2音は音域が高くオーボエでは演奏が難しいためフルートで堆積させ、その下をオーボエクラリネットの交叉法でなじませる作戦です。

バスーン2本はベースパートとして、ルートをオクターブで鳴らしています。

最後に金管です。

  • 1stトランペット:E5
  • 2ndトランペット:C5
  • 1st&3rdホルン:G4
  • 2nd&4thホルン:C4
  • 1stトロンボーン:E4
  • 2ndトロンボーン:G3
  • バストロンボーン:C3
  • チューバ:C2

金管楽器も考え方は木管と同じ。

トランペット2本を金管セクション内のトップに据え、ホルントロンボーンは交叉法でなじませています。

トランペットホルンを交叉すると、ホルンの音域としてはやや高い音になってしまうため今回は避けました。

バストロンボーンチューバはオクターブでルートを演奏しています。

3つのセクションが合わさると、以下のような配置・サウンドになります。

まとめ

というわけで、オーケストラ全体を使った音の重ね方について解説しました。

楽器の数だけ組み合わせのバリエーションも考えられるため、慣れないうちは迷ってしまうことも少なくありません。

そんな時は、今日ご紹介したポイントを実践していただくだけでもアレンジしやすくなると思います。

慣れてきたら、さまざまな組み合わせを試行錯誤して、お気に入りのサウンドを探求していってくださいね!

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