キーボードのモックアップ⑥:キーボードの強弱表現前編!ベロシティ設定をマスターしよう!
こんにちは、作曲家・稲毛謙介です。
今回と次回の2回に分けて、キーボードの強弱表現について解説していきます。
まずは、キーボードのベロシティ設定から。
- 2種類の強弱表現方法
- キーボードにおけるベロシティの特徴
- キーボードのベロシティ設定実践
イキイキとしたキーボードサウンドを実現する上で、強弱表現は欠かせないもの。
そんなキーボードの強弱表現のうち、最も基本となるベロシティ設定について解説していきます。
バッチリマスターしていきましょう!
※こちらの内容は動画でも学習することができます。
キーボードのモックアップ⑥:キーボードの強弱表現前編!ベロシティ設定をマスターしよう!
2種類の強弱表現方法
キーボードの強弱表現を行うには、ベロシティまたはエクスプレッションを使用します。
といっても、常に両者を使うわけではなく、楽器ごとにどちらを使用するか明確に決まっています。
以下の通りです。
- ベロシティで表現するもの:アコピ、エレピ、クラビネット
- エクスプレッションで表現するもの:ハモンドオルガン
アコースティックピアノやエレクトリックピアノ、クラビネットでは打鍵による強弱表現が可能であるため、ベロシティを使って表現します。
一方、ハモンドオルガンは打鍵の強さが強弱に反映されず、代わりにエクスプレッションを使って表現することになります。
同じキーボードでも表現の手段が異なるという点は非常に重要なポイントなので覚えておいてください。
なお、ベロシティやエクスプレッションがそれぞれどんな挙動をするかは以下の記事にまとめてありますので、自信のない方は先にそちらをご覧くださいね。
キーボードにおけるベロシティの特徴
ここからは、キーボードにおけるベロシティの特徴についてみていきましょう。
ベロシティの最大の特徴は、「ノート1つ1つ個別に強弱をつけることができる」点にあります。
同一トラックに複数のノートがある場合でも柔軟に調整することができるので、キーボードのように複数の音を同時に演奏するパートに最も適したパラメータですね。
以前もお話したとおり、キーボードのベロシティというのは常にランダム要素を持っているもの。
ですから、明確に「こうすれば正解!」というものはありません。
とはいえ、その中にもある程度の法則性はありますのでまとめておきます。
- 強拍 > 中強拍 > 弱拍の順に弱くなる
- オモテ拍 > ウラ拍 > 16分ウラの順に弱くなる
- シンコペーションは弱拍やウラ拍であっても周囲より強く演奏する
- 外声は内声よりも強めに演奏する
強拍 > 中強拍 > 弱拍の順に弱くなる
一般的に、強拍が最も強く、次いで中強拍、弱拍の順に弱く演奏されます。
例えば4拍子ならば、1拍目が最も強く、次いで3拍目、2&4拍目の順に弱くなるということ。
同様に、3拍子ならば1拍目が最も強く、次いで2&3拍目ということになります。
これはキーボードに限った話ではなく、ドラムやベース、ギターなどあらゆる楽器に共通する特徴ですので覚えておきましょう。
オモテ拍 > ウラ拍 > 16分ウラの順に弱くなる
拍単位での強弱はもちろん、オモテ拍とウラ拍でも強弱の優劣があります。
一般的には、オモテ拍がもっとも強く、ウラ拍や、さらに細かい16分ウラは弱く演奏されるものです。
ただし、楽曲のグルーヴによっては必ずしもそうならない場合もあります。
表ノリの楽曲ならばほぼ上記の通りになりますが、裏ノリの楽曲ならば時たまウラ拍を強く演奏する場合もあるからです。
したがって、基本は上記のルールに従いつつも、楽曲のグルーヴを感じながら気持ちの良い強弱を見定めていきましょう。
グルーヴによる強弱の違いについては、以下の記事でも詳しく解説していますので合わせて参考にしてみてください。
シンコペーションはウラ拍であっても周囲より強く演奏する
シンコペーションにはアクセントが伴うもの。
ですから、たとえウラ拍であってもシンコペーション部分は強めに打込むのがポイントです。
外声は内声よりも強めに演奏する
外声は内声よりも強めに演奏すると覚えておきましょう。
外声とはコードを構成する外側の音、すなわちトップノート(orメロディ)やベースのことです。
対して内声とは、トップノートやベース音に挟まれた内側の音のことをいいます。
とくに、トップノートはメロディアスなキーボードアレンジを施す上で重要な音になりますので、明瞭に聞こえるよう少し強めに打込んでおきましょう。
キーボードのベロシティ設定実践
ここからは、実際にキーボードのベロシティを設定していきたいと思います。
先ほどご紹介した4つの特徴を反映させながら、自然な強弱表現に仕上げていきます。
本来ならばリアルタイム入力を使ってデータ入力した後に、不自然な部分を修正するのがベストですが、ここでは手順がわかりやすいよう完全にベロシティが一定の状態から始めてみようと思います。
以下のような作業を行います。
- ベタ打ちする
- 拍ごとの強弱を設定する
- アタマ拍とウラ拍の強弱を設定する
- シンコペーションを強めに設定する
- 外声を目立たせる
- ランダマイズする
1. ベタ打ちする
まずはベロシティが均一の状態(=ベタ打ち)を作ります。
ベロシティの値をやや高めの「100」程度に統一しておくと作業しやすいでしょう。
ベロシティ値100のベタ打ち状態
2. 拍ごとの強弱を設定する
次に、「強拍 > 中強拍 > 弱拍」の図式にならって強弱を設定していきます。
強拍部分はベロシティ「100」のまま変えず、中強拍をやや弱めに、弱拍をさらに弱めに設定すると良いですね。
編集前
編集後
3. アタマ拍とウラ拍の強弱を設定する
次に、アタマ拍とウラ拍の強弱を設定しましょう。
アタマ拍の設定は変えず、ウラ拍をそれよりも「20」程度弱めに設定します。
編集前
編集後
4. シンコペーションを強めに設定する
ウラ拍であっても、シンコペーションは強めに打込みます。
強拍と同等か、それよりも少し上下する程度のベロシティに設定してみましょう。
編集前
編集後
5. 外声を目立たせる
次に、外声を目立たせていきます。
トップノートをやや強めに設定するのがポイントです。
編集前
編集後
6. ランダマイズする
自然な強弱表現がついたら、最後にランダマイズをして完成です。
あまりにも強すぎるランダマイズはここまでに作ったバランスを壊してしまいますので、軽めにかけるようにしましょう。
編集前
編集後
ランダマイズの方法は以下の記事をご覧ください。
まとめ
というわけで、キーボードのベロシティ設定について解説しました。
楽曲やフレーズにマッチした強弱がつくことで、キーボードの演奏はよりイキイキと仕上がります。
今日ご紹介した各種テクニックを参考に、自然なベロシティづけができるよう訓練していきましょう!
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